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「窪塚イズム」も炸裂した『最高の教師』、「地獄の2学期」と「人生2周目バレ」の関係は?

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ドラマ公式サイトより

 鳳来高校3年D組の担任教師・九条里奈(松岡茉優)が卒業式にD組の何者かに突き落とされ、「死にたくない」と願った瞬間、1年前の始業式に時間が巻き戻るというところから始まる日本テレビ系土曜『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』。8月5日に放送された第4話、孤独感に支配された生徒を救うストーリーで存在感を示したのは、スターアクターのイズムを継承する若手俳優だった。

 第4話の中心生徒は、反九条派のグループに属する江波美里(本田仁美/AKB48)。リーダー格の西野美月(茅島みずき)のご機嫌をうかがいながら九条や九条派の生徒に悪態をついているが、彼女らとの友情はもとより、家族からの愛情も感じられず、「自分の居場所」を探して孤独感に苛まれている生徒だ。九条(松岡茉優)はそんな江波に、夏休みの最終日に交際相手の浜岡修吾(青木柚)に騙されたことを知ってカッターナイフで刺すことになるという“未来”を伝える。九条は1周目の人生で、事件を起こした江波からのSOSを見て見ぬフリをして距離を置いてしまったため、「彼女にだけは突き落とされたとしても仕方ないのかも」との思いがあり、“最重要容疑者”といえる存在だったのだ。

 浜岡が幼なじみの江波に“告白”したのは、自身が管理するパパ活サイトで利用するためで、何の愛情もなかった。九条の言葉に耳を貸さない江波だったが、内心では浜岡に自分への気持ちがないことに気づいていた。そして九条は、浜岡が自分の“計画”を意気揚々と語る盗聴音声を江波に見せる。現実から目を背けることで「居場所」を確保できると信じていた江波は、向き合いたくなかった事実を突きつけられ、学校を飛び出してしまう。

 そんな江波を救ったのは、江波に想いを寄せていたクラスメイトの栖原竜太郎(窪塚愛流)だった。栖原もまた、江波に傷害事件を起こさせた浜岡に恨みを抱き、退院直後の浜岡を襲うという“未来”を九条から伝えられ、バカにするものの、九条から本当は浜岡が何をしようとしているのか気づいているが、見て見ぬふりをしているだけではと痛いところを突かれてしまう。そして、愛情を求めている江波を救えるのは教師である自分ではなく、「本当に想いのある人だけ」という九条の言葉を受けて、栖原は行動を起こすことを決意したのだった。

 栖原が江波に自分の想いを伝え、傷ついた江波に寄り添おうとする姿は素晴らしかった。特に、栖原演じる窪塚愛流の飄々としながらも内なる情熱がにじみ出るさまは、父・窪塚洋介を彷彿とさせた。「ねえよ! 居場所なんて。どっかの誰かに安住の場所を求めても、嫌われたら終わり」「でもさぁ、別になくたってよくない? 生きて立ってるだけで十分じゃん。ってか、立ってるだけの自分を誇れよ。だってその場所に誰かが来るかもしんねぇし」「なんでそんな、お揃いでいることばっか求めんの? 誰かと同じであることを必要以上に求めなくたっていいんだよ」など、“窪塚語録”と紹介されても納得してしまうようなセリフを、“窪塚調”と呼びたくなる言い回しで語っており、配役の妙が感じられた場面だった。

 生徒を救うのは教師だけではない。クライマックスで映し出された栖原と江波の絆から、3年D組の再興は、九条がどれだけ生徒の考え方を変えられるかにかかっていることを認識させられる放送回となった。今回のキーワードは「見て見ぬフリ」の罪深さだが、ずっとクラス内いじめを「見て見ぬフリ」されてきた鵜久森叶(芦田愛菜)が九条を避けようとする江波に声をかけ、「本当は江波さんも感じてるんじゃないかな。“先生に呼ばれた意味”みたいなもの。見ないフリしてる何かがあるんじゃないかなって」「今この選択だけは逃げないほうがいいと思う」と伝えたことが、江波の運命をよい方向へと変えたきっかけになっていたことも、今回のポイントだ。江波と栖原の行動は九条が直接働きかけたことが大きいが、鵜久森については九条のあずかり知らぬところでのアシストだった。九条派が増えることで、こうした好循環も増えていくかもしれない。

 江波という“最重要容疑者”との雪解けを果たし、今夜放送の第5話は“2章”とも言える2学期を迎える。気になるのは、エンディングナレーションで九条が「そして始まる。私にとって地獄となる、あの2学期が」と語っていたことだ。これは、1周目の人生でのことを振り返って言っているのか、それとも2周目の人生についての回想なのか。素直に受け止めるのであれば後者だろうが、となると、九条は卒業式で殺される運命を回避できたのか、それとも――。

 いずれにせよ、2学期はさらなる波乱に満ちた展開が予想される。最大の危険因子はD組のリーダー格・相楽琉偉(加藤清史郎)で変わりないだろう。第4話では静観していたように見えたが、その実、浜岡に江波を口説かせたのが相楽であったことが最後に明らかに。ただ教室を支配しているというだけではない一面が明らかになり、ますます得体の知れない存在となってきた。第5話の予告でも怪しげな動きを見せているが、平気で他人を利用するこの利己主義者が九条と和解することはあるのだろうか。

 そして、九条派にも不安要素が。星崎透(奥平大兼)によって九条がタイプリープしていることに気づきそうで、「未来を知っている」九条を利用しようとする者がでてきても不思議ではない。特に、クラスの優等生・東風谷葵(當真あみ)の公式プロフィールには「彼女の中には誰にも言えない『悩み』を抱えていて……」という気になる文言があり、波乱の2学期を呼び込む火種になるとの見方もできる。

 また、気になるのは九条の夫・蓮(松下洸平)だ。妻が「2周目の人生」であることを告白すると、思いのほかあっさり受け入れた。書斎の奥に九条が貼ったD組の生徒一覧に未来の日付があったのを見ていたため、「合点がいった」という理屈だったが、それにしてもあまりに理解が早すぎる。思えば、1周目の人生ではすれ違ったまま離婚に至ったのに、2周目では九条の変化があったとはいえわりとすんなり和解に至り、ここまで思いやりのある夫に変貌したことも不自然といえば不自然だ。蓮もタイムリープしており、妻もそうであることに気づいて態度を変えた……という可能性はゼロではないだろう。第3話で九条の高校の同級生である夏穂(サーヤ)と会ったときも妙に親しげだったこともあり、蓮には秘められた“何か”が存在するのではと疑ってしまう。

 さらに、鵜久森の母親役として女優・吉田羊が登場したことはサプライズだった。吉田ほどのビッグネームが起用されるとなれば、鵜久森と母との関係が今後しっかりと描かれるということ。充実した学校生活を送る鵜久森に何が起きるのか。九条顔負けの視野の広さで登場人物を追いかけなければ作品に置いていかれそうだ。

■番組情報
土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された
日本テレビ系毎週土曜22時~
出演:松岡茉優、芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅島みずき、山時聡真、本田仁美(AKB48)、窪塚愛流、福崎那由他、田牧そら、山下幸輝、寺本莉緒、萩原護、詩羽、田中美久(HKT48)、浅野竣哉、丈太郎、柿原りんか、橘優輝、莉子、田鍋梨々花、夏生大湖、藤嶋花音、岩瀬洋志、阪本颯希、岡井みおん、藤﨑ゆみあ、のせりん、細田善彦、長井短、サーヤ(ラランド)、犬飼貴丈、荒川良々、松下洸平
脚本:ツバキマサタカ
音楽:松本晃彦
主題歌:菅田将暉「ユアーズ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
演出:鈴木勇馬、二宮崇
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:福井雄太、鈴木努、秋元孝之
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
公式サイト:ntv.co.jp/saikyo

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/08/12 12:00
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