日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 今期「深夜ジャニーズドラマ」は9作

『ウソ婚』『初恋、ざらり』『紅するライフ』ほか今期「深夜ジャニーズドラマ」の充実度

『ウソ婚』『初恋、ざらり』『紅するライフ』ほか今期「深夜ジャニーズドラマ」の充実度の画像
『ウソ婚』ドラマ公式サイトより

 テレビドラマの数がますます増えている。

 フジテレビは昨年4月に水曜22時枠を6年ぶりに復活させ、昨年10月に火曜24時台の「火曜ACTION!」、この4月からカンテレ制作による火曜23時「火ドラ☆イレブン」と枠を増やしたばかりだが、この10月からさらに金曜21時枠を新設する。

 この4月には、テレビ朝日もABC制作の日曜22時枠を、日本テレビは金曜24:30の「金曜ドラマDEEP」枠を増やしているが、やはり目立つのが深夜帯(23時~)の作品の増加だろう。昨年4月にはMBSがBL作品を扱う「ドラマシャワー」枠を1年の期間限定で設立し、好評により継続されている。また、「金曜ドラマDEEP」第一弾となった『夫婦が壊れるとき』(日本テレビ系)はTVer見逃し配信の累計再生回数が2000万回を突破し、深夜ドラマ歴代1位となるなどの反響を得ており、“攻めた”内容の深夜ドラマと配信の相性の良さも、作品数数増加を後押ししている。早くから深夜ドラマに注力していたテレビ東京は、4月の編成説明会にて「IP、コンテンツを持つ上でドラマは大きい」と説明していたが、各局がドラマに注力しているのも、配信で長く見られ続けたり、海外への販売、映画化などの展開を見据えることができるのが大きいだろう。

ジャニーズ主演の深夜ドラマが今期は9作

 こうした作品数の増加にともない、ジャニーズ俳優の深夜ドラマ主演もすっかり珍しいことではなくなった。この夏クールでは、ゴールデン・プライム帯の主演作は、Snow Man・目黒蓮の『トリリオンゲーム』(TBS系)のみだけなのに対し、深夜帯となると9作も存在する(した)状況だ。そして特筆すべきは、多くが(今のところ)充実した内容であるところだ。

 フジテレビ系「火ドラ☆イレブン」で放送中の『ウソ婚』は中でも勢いがある。Sexy Zoneの菊池風磨が主演し、元欅坂46の長濱ねる、Snow Manの渡辺翔太らが共演する同作は、累計450万部している同名マンガの実写化作品で、ドSの一級建築士・匠(菊池風磨)が自分には妻がいると偽らざるをえなくなり、幼なじみの八重(長濱ねる)に妻のフリをお願いするという偽装結婚モノのラブコメディだ。TVerのお気に入り登録者数は90万を超えており(※15日時点)、TBSの『18/40~ふたりなら夢も恋も~』や日本テレビの『こっち向いてよ向井くん』といったGP帯ドラマの数々も上回り、今期7位に位置している。深夜ドラマとしてはダントツの1位だ。

 菊池風磨、長濱ねる、渡辺翔太の共演というキャストの強さもあるだろうが、作品としても気軽に見られるラブコメで、30分枠という短さも配信ウケしやすい要因だろう。匠は実は八重のことが昔から好きで、“仕方なく”という態度を装いながらも裏では八重と同棲できることに舞い上がっている……という二面性があり、クールぶったかと思うとニヤけるという菊池の“いいとこ取り”といえそうな役柄も印象的だが、それぞれに本当の想いを秘めているという設定が第4話・第5話で開花。原作ではあまり出番のない進藤(渡辺翔太)にフォーカスし、進藤の秘めた想いを丁寧に描くというドラマオリジナル展開は大きな反響を呼び、ただのラブコメに終わらない魅力を感じさせた。正直、『ウソ婚』で心を揺さぶられるとは思わなかった視聴者も少なくなかったのではないだろうか。

 『ウソ婚』のように意外性があったのは、なにわ男子・大西流星主演の『紅さすライフ』。ジェイ・ストームが製作に関わる日本テレビ系の「深夜ジャニーズドラマ枠」である「シンドラ」の新作だが、大西のコスメ愛を生かしたオリジナル脚本がうまくハマっている。メイク好きの北條雅人(大西流星)と、メイクをまったくしないポストドクターの皆本頼子(井桁弘恵)をメインとする物語だが、てっきりメイクを“サボる”女性を、メイク男子が“説教”するというような内容かと思いきや、「メイクをするのもしないのも個人の自由」という価値観に支えられた作品だった。脚本の松島瑠璃子といえば、昭和後期・平成初期のマンガ『悪女』を再実写化するにあたり、ちゃんと令和の価値観にアップデートさせていた昨年4月期の今田美桜版『悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』にも関わっていたことを思い出した。

 2人はこれまで「男なのにメイクをする」「女なのにメイクをしない」と言われてきたという背景があり、この対象的な2人が友情を築いていく要因として、お互いにそのことをわざわざ指摘しないという部分がある。「男なのにメイクするって言わないんだね」「女なのにメイクしないって言わないんだね」という部分で心の距離を縮めるシーンは、いかに2人がそうした周囲の言葉に傷ついてきたかを想起させる、いい場面だった。「メンズメイクの需要はあっても、何から手を出したらいいかわからない男は多い」という指摘を、普段メイクをしない頼子がするというのも説得力のある展開で、30分枠ながら過不足なくストーリーが進んでいるのも好印象。

 好評を得ている深夜ドラマでは、小野花梨と風間俊介のW主演となるテレビ東京系ドラマ24『初恋、ざらり』もよく名前が挙がる作品だ。こちらも人気マンガの実写化で、軽度の知的障がいと自閉症を持つ女性と、アルバイト先の心優しい先輩男性との恋愛模様を描く。求められると体の関係に応じてしまい、「自分はコレでしか役に立てない」と苦しみ、しかし「私にももっと役に立てることがあるはず」と願うヒロイン・有紗を小野花梨が、その有紗との距離を縮めながら同じ職場内での交際や年の差があることに葛藤してしまう男性を風間俊介が演じている。“普通”を求める有紗が置かれている状況は観ていて非常に辛く、観続けるのが苦しいという人もいそうだが、実力派俳優たちが繊細に内面を表現し、惹きつけられる良作だ。

 6月28日スタートで早くも終盤に差し掛かっているのが、ジャニーズJr.・井上瑞稀(HiHi Jets)主演のテレビ東京系「ドラマチューズ!」枠の『なれの果ての僕ら』。同窓会のために集まった四ノ塚小学校元6年2組の27人が、同じクラスだった夢崎みきおにより監禁されてしまうというデスゲーム的な内容で、『アルプススタンドのはしの方』『ビリーバーズ』『夜、鳥たちが啼く』といった映画の監督で知られる城定秀夫が演出・脚本で関わっていることも話題だ。みきおを演じる犬飼貴丈の怪演もさることながら、みきおに翻弄される生徒たちには、大河ドラマを始め演技経験の豊富な井上だけでなく、“学園ドラマ”らしく大原櫻子、吉田伶香、工藤遥、大原優乃、ゆうたろう、菅生新樹、新原泰佑、西村拓哉(Lil かんさい/ジャニーズJr.)などフレッシュなキャストを取り揃えているのもいい。残酷で辛い描写が多いため、やはり観る人を選ぶタイプの作品だが、テンポのよさと続きが気になる展開でハマる人はハマるだろう。

 また、全4回ということで7月中に放送を終了したが、元Hey! Say! JUMPの岡本圭人ドラマ初主演となった『リズム』(フジテレビ系)もあった。こちらは妻とのすれ違いに悩む主人公が偶然ダンスの魅力に気づき、ダンススクールに通う中で成長を遂げていくというもので、日常生活でも思わず踊ってしまう場面など『Shall we ダンス?』を下敷きにしたような印象もあった作品だった。一方、8月3日にスタートしたばかりなのは、大原櫻子とTravis Japan・松田元太のW主演作『結婚予定日』(毎日放送)で、『白夜行』『神様のカルテ』といった映画や今年1月期のドラマ『星降る夜に』などの深川栄洋監督が演出を務めることでも話題。アラサー女性がイケメン後輩から、1年以内に交際相手ができなかったら自分と結婚してほしいと提案され、“社内婚約状態”になって距離を縮めたりすれ違ったりするという王道の“むずキュン”ラブコメディだ。

ジャニーズ主演の刑事・探偵モノは3作も

 そして刑事・探偵モノのジャニーズ主演作は今期3作も存在する。いち早くスタートしたのは生田斗真主演の『警部補ダイマジン』(テレビ朝日系)で、三池崇史監督との『土竜の唄』タッグによる連ドラということでも話題。作品は、長瀬智也主演でドラマ化されたことでも知られる『クロコーチ』と同じ原作・作画の同名マンガの実写化で、法では裁けない悪人を自らの手で裁く捜査一課のエース・台場陣(生田斗真)が、元警視監ということで逮捕に追い込めない悪人を殺害してしまい、そのことを特命捜査対策班の室長・平安才門(向井理)に知られ、才門に「動く暴力装置」としてコキ使われるという物語。ドSの向井理に振り回される生田斗真という構図のバディが魅力的だ。

 SixTONES・松村北斗となにわ男子・西畑大吾のW主演となる『ノッキンオン・ロックドドア』(テレビ朝日系)は、青崎有吾による同名小説シリーズの実写化となる探偵ミステリ。「不可能」犯罪のトリックの解明を得意とする御殿場倒理(松村北斗)と「不可解」な動機や理由を解明する片無氷雨(西畑大吾)の異色のW探偵バディもので、2人の同級生となる刑事役に石橋静河、同じく同級生の犯罪コンサルタント役に早乙女太一といったキャスティングも魅力的。ただ、初回は1時間だったものの、通常の30分回では解決編と2話にまたがる構成になるようで、まだ第3話までの放送ではあるが、1話完結とならないテンポの遅さが惜しいと感じられる面も。倒理と氷雨の関係性をどこまでおもしろく描けるかがカギとなるだろう。

 8月12日には、NEWS・増田貴久主演の東海テレビとWOWOWの共同制作ドラマ『ギフテッド』のシーズン1がスタート。『金田一少年の事件簿』などで知られる天樹征丸の原作マンガの実写化で、並外れた推理力を持つ天才刑事の天草那月(増田貴久)が、“殺人者”を識別できる特殊な目を持つ高校生・四鬼夕也(浮所飛貴/美 少年、ジャニーズJr.)と知り合い、バディを組むことになるというファンタジー色の強いミステリだ。同じく東海×WOWOWでジャニーズ主演の『准教授・高槻彰良の推察』シリーズ(伊野尾慧主演、神宮寺勇太共演)を思わせる設定で、実際にチーフプロデューサーも共通している。前述のように今期は『警部補ダイマジン』『ノッキンオン・ロックドドア』もあるため、それぞれに個性は異なるとはいえ、『ギフテッド』の初回はやや地味に感じられたが、四鬼家の面々が登場し、夕也の過去が描かれてからが本番だろう。シーズン2がWOWOWで10月14日から放送・配信予定ということがすでに決まっていることもあり、観る人を選びそうではあるが、シーズン2も観たくなるような盛り上がりを期待したい。

新城優征(ライター)

ドラマ・映画好きの男性ライター。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

しんじょうゆうせい

最終更新:2023/08/15 20:00
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『光る君へ』疫病の流行と宮中での火事

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NH...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真