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『VIVANT』『ハヤブサ消防団』『最高の教師』…伏線ドラマが連発される裏事情

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ドラマ公式サイトより

 今年の夏ドラマは多くが佳境を迎えはじめ、それぞれで盛り上がりを見せている。さまざまなジャンルの作品を放送しているが、その中でももっとも注目を浴びているのが日曜劇場『VIVANT』だ。俳優の堺雅人が主演を務めるドラマで、8月20日に放送された第6話は平均世帯視聴率が14・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となり2週連続で番組最高を更新した。

 「ドラマは国際テロ組織のテントをめぐり、日本の警視庁公安部と『別班』と呼ばれる自衛隊の非公然諜報組織の争いが描かれている。ストーリーの作り込みがていねいで、複雑な伏線がドラマに練り込まれている。謎解き要素が強く、X(旧・Twitter)を中心に考察が盛んに行われ、ついにスポーツ新聞がネット版で独自の考察記事を出すなど異例の事態になっている。ドラマの公式アカウントも舞台裏やセット、設定などを定期的に配信して考察を盛り上げている。そういった動きもあり若い世代の視聴者も増えはじめ、若年層が多いTVerのお気に入り登録は160万人をこえる高い数値となっている」(テレビ情報誌記者)

 『VIVANT』だけでなく、ドラマファンの間ではいま「考察ブーム」が巻き起こっている。『あなたの番です』(日本テレビ系)、『最愛』(TBS系)、『真犯人フラグ』(日本テレビ系)などからその兆しは見えはじめ、最近ではドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)がタイムリープ作品として考察ファンから人気に。伏線を張り巡らせる作品は、いまやテレビドラマの主流になりつつある。

 「夏ドラマでは、日本テレビが放送する『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』がタイムリープ作品となる。世帯平均視聴率は厳しい数字だが、TVerではお気に入り登録が120万人を超え若い世代を中心に人気。ドラマは主演の松岡茉優演じる女教師・九条里奈が、卒業式の日に受け持つクラスの生徒に殺害され、タイムリープすることで犯人を探し未来を変えようと奮闘するもの。途中、芦田愛菜が演じる生徒も2度目の人生を送っていることがわかるのですが、非常に考察が盛り上がっているドラマだ」(民放関係者)

 『VIVANT』や『最高の教師』だけでなく、考察したくなるようなドラマがこの夏は目白押しになっている。その一つが、テレビ朝日系の木曜ドラマ『ハヤブサ消防団』だ。

 主演は中村倫也が務め、原作をヒットメーカーの池井戸潤が担当。中村演じる主人公のミステリー作家が、引越し先の田舎で放火や殺人事件に巻き込まれる複雑怪奇なミステリードラマとして幅広い世代から注目されている。

 「『ハヤブサ消防団』では、当初は集落に潜んでいると言われる放火犯を探すストーリーだった。しかし、話が進むと、川口春奈が演じるヒロインの立木彩が、過去にカルト的な新興宗教にハマっていたことがわかった。さらに、ソーラーパネルの建設で住民に近づく怪しい業者などきな臭い展開になってきた。原作本があるので考察は『VIVANT』などより少ないですが、新興宗教や怪しい太陽光発電の業者など、ネットファンが好むキーワードを含んでいる。SNSでは、放送直後にかなりの盛り上がりを見せています」(スポーツ紙記者)

 さらに、日本テレビでは、恋愛ドラマで珍しい考察系作品が放送中だ。

 「『こっち向いてよ向井くん』は、ドラマそのものが恋愛について男女が考察し合うストーリーになっている。漫画が原作のドラマで、赤楚衛二演じる主人公・向井悟が恋愛における数々の失敗をして成長していくストーリー。途中、向井の勘違いが女性の心の本音として描かれ、ドラマの中でさまざまな伏線を回収してくれる。原作があるのでストーリーはある程度はわかっていますが、それでもSNSでは考察や共感する声が多数上がっている。視聴率はイマイチですが、新感覚のドラマとして中毒者を増やしています」(民放関係者)

 ここ最近、「考察」がテーマになる作品が多くなっているのは、各テレビ局がドラマの作り方を変え伏線を生み出す脚本を増やしているからだという。

 「世帯平均視聴率に反映されるような、リアルタイムにテレビでドラマを見る人は極端に減っている。そんな中で、自社の見逃し配信サービスやTVerで見てもらえる努力が必要になった。そうなると、SNSなどネットでバズらせるのが一番の宣伝になるんです。最近では、テレビ誌などで取り上げられるよりも、一般の人にXなどでつぶやいてもらったほうが宣伝効果も高い。ドラマの考察を専門にするYouTuberや、SNSで人気のアカウントもあり、そういった一般視聴者に取り上げられるのが、いまや最優先になっている。なので、ネットで議論できるようなストーリー展開にするよう、テレビドラマの脚本や演出も変わってきているんです」(同上)

 これまでは、豪華なキャストを組んでいれば視聴率は取れた。しかし、木村拓哉の人気が低迷しているように、出演者だけで人気ドラマを作れる時代は終わっている。これからは、視聴者がついSNSで考察したくなるようなストーリーのドラマが人気を集めていきそうだ。

小林真一(フリーライター)

テレビ局勤務を経て、フリーライターに。過去の仕事から、ジャニーズやアイドルの裏側に精通している。

こばやししんいち

最終更新:2023/08/23 13:00
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