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『最高の教師』死の運命は避けられない? それとも3人目の「2周目」の犯行か

『最高の教師』死の運命は避けられない? それとも3人目の「2周目」の犯行かの画像
ドラマ公式サイトより

 花を持つ生徒と、その後ろに立つ教師。ここにきて作品のメインビジュアルの意味が鮮明に見えてきた。8月19日に放送された日本テレビ系土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』の第6話は、2度目の生を受けた意味を模索する少女・鵜久森叶(芦田愛菜)が自分の生きる世界を変えようとする覚悟に心揺さぶられた。

 鳳来高校3年D組の担任教師・九条里奈(松岡茉優)が卒業式にD組の何者かに突き落とされ、「死にたくない」と願った瞬間、1年前の始業式に時間が巻き戻り「2周目」の人生をスタートさせるというところから始まる本作。第6話では、前回示唆されたとおり、鵜久森もまた「2周目」の人生を生きていることが明かされた。D組の苛烈ないじめに耐えかね、2023年5月23日から不登校になった鵜久森は、10月4日に自ら命を絶った。すると、九条と同様に始業式まで時間が戻り、2周目の人生が始まったのだ。

 そして鵜久森はすぐに異変に気付く。九条だけが1周目とはまったく違う動きを見せたからだ。鵜久森は九条もまた、2周目を生きていると察する。それでも、D組の生徒とちゃんと向き合おうと覚悟を決めた九条の「独りじゃない」という言葉がなければ、鵜久森は1周目と同じ道筋を辿ったのかもしれない。九条の言葉に背中を押された鵜久森はD組で魂の叫びを聞かせたが、あれは1周目の人生で遺書代わりに残そうとしていた言葉だった。その鵜久森の叫びをきっかけに、D組は変化していった。九条にとっても鵜久森にとっても、2人がともに2周目を歩んだことは大きな意味があった。

 九条もまた、文化祭での鵜久森の言葉から、遅ればせながら鵜久森が2周目であることに気づき、「私は今、2周目の人生を生きています。そしてそれは、鵜久森さんも同じですよね?」と問いかける。化学準備室で2人が秘密を共有するシーンには、仲間を見つけた喜びはなく、この人生をどう生きるべきかという使命感が感じられた。10月に命を絶った鵜久森が知らない、九条が卒業式の日に殺されるという未来。それを聞いても動揺しない鵜久森からは、この半年近く、自分を変えようと必死に生きてきたからこそ身についた強さを感じた。

 第6話のテーマは、「自分の思いを伝える強さ」だろうか。31歳の誕生日を夫と友人に祝ってもらった九条は、「『好き』っていう言葉は自分や自分の心の中を世界にさらけ出すものだから(中略)『好き』って表に出すことは勇気だと思う」と話していた。そしてそのテーマで揺れていたのが、D組の東風谷葵(當真あみ)だ。文化祭の後、鵜久森への好意を思わず伝えてしまったものの、“鵜久森いじめ”に加担していた自分を「言う資格もない」と恥じ、鵜久森の反応を恐れ、鵜久森が言おうとした言葉を聞かずに逃げ去ってしまった。そのまま休学しようとする東風谷のもとを九条は訪れ、理科準備室で鵜久森と2人きりで話をさせる。そこでさらに驚きの事実が明らかになる。鵜久森の1周目の人生でも、東風谷は鵜久森に想いを伝えていたのだ。不登校になっていた自分のことを好きだと言ってくれた東風谷に「ありがとう」の言葉を返せなかったことを、鵜久森は悔やんでいた。鵜久森は気づく。東風谷に「ありがとう」と伝えるために、自分の2周目の人生はあったのだと。

 そして、衝撃の展開はラスト10分に起こった。鵜久森は「3回目は絶対にない」「人生のやり直しなんてものは、もうあり得ない」という確信を抱いていた。それと同時に、1周目で自分の人生を終えた10月4日より先の「明日が来る実感」がないことを九条に伝える。不安に駆られた九条が校内を探し回ると、地面に横たわる鵜久森の遺体があった。死の運命は変えられないのか。それとも、「2周目の人生の意味」を達成してしまったからなのか。

 筆者は、その日に鵜久森が命を絶つことを知っている人物、すなわち“3人目のタイムリーパー”の犯行によるものではないかと予想する。九条、鵜久森のほかに2周目を生きている者がいてもおかしくない。卒業式の日に九条の命を奪った者がなんらかの理由で亡くなり、「1周目と同じ運命」を鵜久森や九条に辿らせようとしているのかもしれない。

 ポイントとなるのは、鵜久森の死の原因だ。10月4日の朝、鵜久森は自分のロッカーに「放課後に新校舎の吹き抜け廊下へ来ること」などと書かれた紙を見つける。第1話で九条が転落したのも新校舎の吹き抜け廊下ではなかっただろうか。そして呼び出された鵜久森は、誰かともみ合っていた様子だったが、相手が握る「何か」を鵜久森が奪い返そうとしていたように見えた。これは今後の重要なアイテムとなるかもしれない。この相手の最有力候補は、やはり鵜久森に“形だけの和解”をきっぱり拒絶されてしまった相楽琉偉(加藤清史郎)だろうが、鵜久森が対面した際に意外そうなリアクションをとっていたことから相楽ではなさそうだ。となると、相楽の指示に従って波乱を巻き起こしている浜岡修吾(青木柚)だろうか。

 今回の第6話では「3周目はない」という重要な事実が明かされるとともに、死の運命からは逃れられないという可能性も浮上した。そして星崎透(奥平大兼)らが九条が「2周目」であることに気づいているに加え、東風谷は鵜久森から直接「2周目」の話を聞かされていた。その鵜久森の死に、東風谷はどう出るのか。相楽たちの“支配”からD組の多くの生徒は解放されつつあったが、鵜久森の死は大きな波紋を巻き起こしそうだ。気になる第7話は、1週空いて9月2日放送。終盤に差し掛かる『最高の教師』がどのような展開を見せるのか、今から気になって仕方がない。

■番組情報
土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された
日本テレビ系毎週土曜22時~
出演:松岡茉優、芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅島みずき、山時聡真、本田仁美(AKB48)、窪塚愛流、福崎那由他、田牧そら、山下幸輝、寺本莉緒、萩原護、詩羽、田中美久(HKT48)、浅野竣哉、丈太郎、柿原りんか、橘優輝、莉子、田鍋梨々花、夏生大湖、藤嶋花音、岩瀬洋志、阪本颯希、岡井みおん、藤﨑ゆみあ、のせりん、細田善彦、長井短、サーヤ(ラランド)、犬飼貴丈、荒川良々、松下洸平
脚本:ツバキマサタカ
音楽:松本晃彦
主題歌:菅田将暉「ユアーズ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
演出:鈴木勇馬、二宮崇
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:福井雄太、鈴木努、秋元孝之
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
公式サイト:ntv.co.jp/saikyo

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/08/26 12:00
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