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TOBE第一弾デビューIMP.の「ビルボード8位」で明らかになった「トラジャと同じ課題」

TOBE第一弾デビューIMP.の「ビルボード8位」で明らかになった「トラジャと同じ課題」の画像
TOBE公式サイトより

 滝沢秀明氏が今年3月に興した「TOBE」に所属する7人組「IMP.(アイエムピー)」が8月18日にデビュー曲「CRUISIN’」を発表した。

 全員が元ジャニーズJr.で、ジャニーズ事務所在籍期は滝沢氏命名の「IMPACTors」と名乗って活動していた7人が、今年5月に退所。7月にTOBE所属を発表し、新たにIMP.としてスタートを切ったばかりで、8月11日にティザー動画を公開するとともにデビューが明かされ、1週間後に楽曲の配信とミュージックビデオの公開が行われるという電撃的な展開を見せた。

IMP.は「Snow Man超え」なのか

 18日0時の配信からわずか14分後には「#CRUISIN」がX(旧Twitter)の国内トレンド1位になるなどの反響を見せ、ミュージックビデオもYouTube公開からおよそ14時間後に100万回再生を突破。およそ42時間後(1日と18時間後)に200万、およそ90時間後(3日と18時間後)に300万を超え、公開から11日とおよそ8時間後となる30日朝には400万再生を突破している。

 こうした動きから、一部では〈Snow Man超え?〉と煽る見出しを付けた報道まで出ていた。Snow Manのデビュー曲「D.D.」のミュージックビデオは100万再生に到達するまで21時間ほど、200万再生まで4日とおよそ21時間ほどかかっている。その意味では確かにデビュー当時のSnow Manを超える勢いと言えなくもない。なお、なにわ男子「初心LOVE」のミュージックビデオも100万再生までおよそ15時間ほどだが、200万再生突破まではおよそ41時間ほど、400万再生突破は8日とおよそ13時間だった。

 IMP.は音楽番組への出演がまだなく、ラジオとSNSでのプロモーションがメインとなっているだけに、この再生回数の勢いは大健闘といえる。ただ、これをそのままイコールで「IMP.の人気」と考えるのは現状難しい。というのも、彼らはTOBEが送り出す第一弾アーティストであり、グループ以上に滝沢氏の動向に注目が集まっている面がある。筆者も、普段はジャニーズのミュージックビデオを公開直後に観ることなどまずないが、IMP.「CRUISIN’」については滝沢氏がどう打って出るのかという興味からすぐにチェックした。彼らの第2弾シングルが「CRUISIN’」と同様、あるいはそれ以上の勢いを見せるかどうかによって、IMP.というグループ自体の注目度が初めて測れるのではないだろうか。

Travis Japanと同じ「ストリーミングの課題」を抱えている

 また、今回のデビューについては多くの国内アイドルグループと同様の課題も浮き彫りになった。それはSpotifyやApple Musicなどに代表されるサブスクリプション型音楽配信サービスにおけるストリーミングでの弱さだ。

 IMP.「CRUISIN’」は、8月30日公開のビルボードジャパン総合ソング・チャート「JAPAN Hot 100」で8位に。初登場ではなく、前週53位からのジャンプアップとなったのは、ビルボードジャパンは月曜から日曜までを集計するため、18日金曜0時の配信スタートだった「CRUISIN’」は前週・23日公開の「JAPAN Hot 100」(8月14日~20日が対象期間)で初登場となったためだ。指標別に見てみると、ダウンロードで1位、ラジオで2位、動画再生で5位となっているが、ストリーミングは圏外に終わっている。前週もダウンロード6位、ラジオ4位、動画再生4位で、やはりストリーミングは圏外だ。

 これは「ジャニーズ初全世界デビュー」となったTravis Japanのデビュー曲「JUST DANCE!」によく似ている。ジャニーズ事務所初の配信でのデビュー曲リリースであり、CDシングルが発売されなかった「JUST DANCE!」は、ストリーミング指標で100位以内に入ることは一度もなく、ダウンロード1位、動画再生36位、ラジオ38位などで2022年11月2日公開の「JAPAN Hot 100」4位に初登場。この時はまだTwitterのツイート数による指標がある時期で(※2022年12月7日以降発表のチャートから廃止)、ツイート1位となったことも大きかった。そして翌週は動画再生5位、ラジオ14位まで上昇したが、ダウンロードが13位に後退した影響が大きく、「JAPAN Hot 100」では29位までダウンしている。つまり、せっかく解禁されたストリーミングは無風状態に近いまま、CDセールスがダウンロードセールスに取って代わっただけのような結果だったのだ。なお「JUST DANCE!」も金曜リリースで、奇しくも(?)Travis Japanの配信デビューもジャニーズ事務所副社長時代の滝沢氏が関わったとされている。

 Travis Japan「JUST DANCE!」については、ダウンロード購入者に特典を用意していたのに対し、ストリーミングに関しては無策といえる状況だったため、ストリーミング指標が圏外になったのもうなずける。一方のIMP.「CRUISIN’」はというと、ダウンロードだけでなく、Apple Music、Spotify、LINE MUSICのIMP.アーティストページを「フォロー(あるいは「お気に入り登録」)」すると、応募者全員にデジタル特典がプレゼントされるという試みを行っている。直接的に再生数を増やすための施策ではないが、ファンにストリーミングを意識させる試みではあった。だが、それでも圏外ということは、もっと本腰を入れる必要があるということだろう。

 ちなみに10月28日配信のTravis Japan「JUST DANCE!」のダウンロードセールスは1週目の3日間(2022年10月28日~30日)でおよそ66000DLあった。一方、IMP.「CRUISIN’」のダウンロードセールスは、1週目の3日間(18日~20日)がおよそ6000DL、7日フルの2週目(21日~27日)がおよそ21800DLで、合計3万にも満たない。IMP.のダウンロードセールスが2週目に伸びているのは、特典が手に入るダウンロードキャンペーンが、ビルボードジャパンを意識してか、配信日の金曜ではなく、翌月曜始まりだったためだろう。いずれにせよ、「セールス」の規模感でいえば、一部報道の「Snow Man超え」どころか、どのジャニーズグループにも大きく差を付けられているのがIMP.の現状だ。無論、繰り返しにはなるが、IMP.は現状(デビューのニュースは伝えられても)地上波の番組に出演してはおらず、ファンの目の前でデビュー曲を披露する機会もまだない状況で、恵まれた環境で華々しくデビューを飾るジャニーズと比べること自体が的外れなのだが。

IMP.のデビューはまだ「実験段階」?

 しかし、滝沢氏は7月末のTikTokライブにて「Apple MusicやSpotifyなどは世界配信なので、ランキング上位になれば海外の人たちが聴くきっかけになる」とTOBEでの音楽リリースに関してストリーミングに力を入れる旨を語っていたことを考えると、今回の「ストリーミング指標、圏外」という結果が大きな課題を残したことは間違いない。TOBEは3月に始動したばかりだが、まだデジタル音楽マーケティング領域のスタッフが周囲に乏しい可能性も考えられる。

 もっとも、滝沢氏にとって今回の電撃デビューはある種の実験だった可能性もある。「CRUISIN’」の配信レーベルはTOBE MUSICとなっており、アグリゲーター(配信代行サービス)はNTTドコモ・タワーレコード・レコチョクによって設立されたEggs(エッグス)だ。一部報道ではTOBE所属タレントが大手レコード会社からデビューするとあったため、メジャーレーベルとの直接契約ではないにしても、たとえばソニー・ミュージック系列のディストリビューターで、YOASOBIの世界進出に関して強力なサポート役を務めていることでも知られるオーチャード(・ジャパン)あたりが関わっている……すなわちメジャー系列の(営業・プロモーション・マーケティングサポート機能なども備えた)配信会社の関与の可能性を考えていたが、Eggsは「インディーズバンド音楽配信サイト」と銘打たれているようにDIY型の配信代行サービスであり、今回のIMP.は実質、自主リリースと見られるのだ。スピード感を重視した結果、「配信リリース」の可能性や座組についてまだいろいろと手探りの時期なのかもしれない。

 Travis Japanは2ndシングル以降、LINE MUSICにおける再生数キャンペーン(777回以上再生することでオリジナル動画の視聴が可能になったりデジタルブックレットがもらえる)などの施策を始めたが、キャンペーン期間中しか再生数が増えないという問題があり、実際にストリーミング指標は100位内に一度は入っても、翌週には圏外となってしまっている。こうした問題は多くの国内アイドルグループが抱えているものでもあるが、TOBEがこの「ストリーミングの課題」を克服した時こそ、社是にある「新しい風」が業界に吹き荒れる時となるだろう。

加賀美ジョン(音楽ライター)

洋邦問わず、音楽にまつわる編集・ライティングで十数年。クレジットを眺めるのが趣味。

かがみじょん

最終更新:2023/09/01 11:00
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