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今週の『金曜ロードショー』を楽しむための基礎知識76

『名探偵コナン』100億円映画への道は『純黒の悪夢』の路線変更から始まった!

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金曜ロードショー『名探偵コナン 純黒の悪夢』日本テレビ 公式サイトより

 映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』興行収入100億突破を記念して送る日本テレビ系『金曜ロードショー』の2週連続名探偵コナン祭り、今週は劇場版シリーズ20作目『名探偵コナン 純黒の悪夢』を放送。

 劇場版で初めて黒づくめの組織とFBIが対峙し、CIA、日本の公安警察もストーリーに絡んでくるという20作目にふさわしいオールスターキャスト映画。さらにシリーズ初、4DX/MX4D版も公開された異例づくめの超大作!

『名探偵コナン 純黒の悪夢』こんなストーリー!

 真夜中の警視庁内に何者かが侵入し、機密データを盗み出していた。この侵入を察知していた公安警察は犯人を捕らえようとするが、脱出を許してしまう。

 首都高を車で逃走する犯人を追って、公安警察官にして黒づくめの組織に潜入している安室透、FBIの赤井秀一が犯人を追い、熾烈なカーチェイスを展開する。逃走中、犯人は何者かにメールを送信。赤井は犯人の逃走ルートを先読みし、ライフルでタイヤを撃ちぬき、クラッシュさせるが犯人の逃走を許す。逃げた犯人は東都水族館のライトを目にして苦しみだし、気を失う。

 翌日、コナンと少年探偵団たちは首都高での事件を伝える報道を横目に、リニューアルオープンを迎えた東都水族館に遊びに行く。コナンらは東都水族館で記憶を失った女と遭遇。女の目は両方の色が違うオッドアイだった。女からガソリンの匂いや車のフロントグラスの破片がついているのを見たため、首都高での事件の関係を疑うが、女は頑なに警察には通報しないでほしいと乞うのだった。

 コナンがこっそりと警察に女の情報を伝え、正体について探っていると元太が観覧車の入場を待つ列から落下、女はすぐさま元太を救うために常人ではありえない身のこなしで元太を救い出す。それを見た灰原は、女の正体は黒づくめの組織のNo.2、ラムではないかと疑う。

 女は元太たちと観覧車に乗り、突然頭を押さえて苦しみだし、「ノックはバーボン、キール、スタウト、アクアビット、リースリング」と謎の言葉をつぶやく。それは首都高でカーチェイスの途中に女が送信したメールの内容で、それらが酒の名前であることから、女は組織の関係者だと確信。

 一方、黒づくめの組織のメンバーたちは世界中で、メールに記された酒の名前を持つ者たちを組織に潜入したスパイとして処刑していた。彼らが捜しているのは裏切り者「ノック」の所在であった。そして女の正体がラムの右腕と呼ばれた‟キュラソー”であることが判明する。

ミステリーよりもアクション要素にシフトチェンジした理由

 劇場版『名探偵コナン』シリーズはミステリーである。故に初期のシリーズはきちんとミステリーしており、起きた事件をコナンらが解決し、犯人を捕まえて終わる、というのが基本の流れだ。

 だが、『純黒の悪夢』では「黒づくめの組織が起こそうとしている犯行を阻止する」という形になり、「犯人を解明し、捕える」ことが目的ではない。黒づくめの組織は最大の敵なので、彼らを捕まえたら話自体が終わってしまう! だから本作はミステリーという部分は縮小させて、純粋なアクション映画にシフトチェンジした。

 冒頭のド迫力なカーチェイスをはじめ、人気キャラである安室と赤井が対決するアクションパート、クライマックスの二輪式観覧車を舞台にした大アクション、航空機オスプレイによる襲撃場面など、シリーズ初にして最大級のアクションが展開し、初の4DX/MX4D版が公開されたのも頷ける。

 ハリウッド顔負けのパニック・アクション巨編となった本作『純黒の悪夢』は、コナンのマンガやキャラを知らずにいきなり見ても、充分に楽しめる内容(もちろん、原作のファンなら各キャラの関係性や、組織の核心に触れるような展開も目が離せない)になっている。

 熱心なファン向けのサービスといった感があったこれまでの劇場版を、それ以外の一般観客を意識して最高のアクション映画を見せようとし、公開当時歴代最高の興行収入を記録、以降は右肩上がりの興行を重ねていった。コナン映画100億円への道は『純黒の悪夢』が切り開いたと言っても過言ではない。

 劇場版コナンがミステリーであることにこだわり続けていたら、100億円は達成しなかったかもしれない。

 かといってまったくミステリー色が失われたわけでもなく、酒の名前を巡るメールの解析や、キュラソーというコードネームを巡っての謎解きといった要素もきちんと残されている。

 そして毎回こんな突っ込みをするのも野暮なのだが、あんなに恐れられている黒づくめの組織が、メンバーの名前を統一するため一生懸命酒の名前に当てはめているのがなんというか……マヌケだなあ。

 ラムの右腕、キュラソーは瞬間記憶能力の持ち主で、5種類の色違いの半透明シートを使ってデータを閲覧するとすべて記憶することができる。なぜ5色かというと、キュラソー(酒)にはホワイト(無色)、レッド、オレンジ、ブルー、グリーンの5色があるから。

 そういう能力を含めて、「よし、お前はキュラソーな!」ってボス(誰だよ)が指名しているところを想像すると……笑いが漏れてしまう。名前つける時に揉めないのか。西洋の酒の名前だからいいけど、日本酒の名前だったら微妙だ。スパイ「芋焼酎」とか嫌だなあ。

 スパイ映画『007』シリーズの悪役組織スペクターなんかもそうだけど、悪の組織をリアルに恐ろしく表現しようとすると、どうしてもマヌケになってしまうのはしょうがないのか。

 こんなこと言ってる筆者が、黒づくめの組織に消されたらどうしよう。

しばりやトーマス(映画ライター)

関西を中心に活動するフリーの映画面白コメンテイター。どうでもいい時事ネタを収集する企画「地下ニュースグランプリ」主催。

Twitter:@sivariyathomas

しばりやとーます

最終更新:2023/09/22 21:00
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