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ジャニーズ問題から透ける「ジャーナリズム」「公益性」という言葉の空虚さ

SNSなどで、ジャニーズ問題をめぐるマスメディアの姿勢や世論とされる異常な空気への違和感を投稿する作家の沖田臥竜氏。当サイトに掲載されたコラムに対しても、これまでにさまざまな反響が寄せられている。賛否が当然あるだろうが、今、ジャニーズ問題に対して必要なのは、自身が感じていることを自分の言葉で周囲に伝えていく、こうした姿勢ではないだろうか。いまだ収束することがないジャニーズバッシングに対して、静かなる大衆はどう思うのか。こうしたコラムを読みつつ、立ち止まって、考えてみてもいいのではないだろうか――。

すべては外圧に屈したNHKから始まった

 所詮、メディアとはヒットアンドウェイだ。対象物と近しい距離を保っていたと思ったら、突如攻撃し、時が経てば節操もなくまた近づく。親しき仲よりも、公益性とやらが優先される。それを今回、まざまざと世間に見せつけたのがジャニーズ問題である。

 その報道姿勢は、長きにわたってマスメディア側とジャニーズ事務所が築き上げてきた関係性を一瞬にして崩壊させた。遺恨を残すなといわれても無理だろう。

 ただ私は、ここまでに行き着いた構図を、私なりにすべて理解している。性加害問題をずっと黙殺していたマスメディアが、ジャニー喜多川氏の死後4年もの歳月が流れてから、なぜ突如この問題を弾き、ジャニーズを追い詰めたのか。

 その端は、NHKにあるといっていいだろう。

 それにしても、どうだろうか。NHKも、紅白歌合戦にジャニーズのタレントの出演を見合わせる云々とか言っているのではなく、いっそのこと社名を変えて、再出発をしたらどうなのだ。NHKの報道いわく、故・ジャニー喜多川氏の性被害問題について、まったく知らなかったわけではないというのだから。さらに、NHK局内が性加害の現場になっていたという証言も自ら伝え、「重く受け止める」としているのだ。だったら、NHKもその責任をジャニーズ事務所と同じように取って見せたらどうだろうか。「ジャニーズ性加害問題当事者の会」を一緒に救済したらどうだろうか。

 できないだろうし、やる気もないだろう。自らが微塵もできないことを、NHKを筆頭としたマスメディアはジャニーズ事務所にだけ押し付けている。半世紀以上にわたり、歩調を合わせて、ジャニーズという巨大なムーブメントを共に築き上げてきたマスメディアが、表向きは反省の弁を口にしつつも、責任はジャニーズにのみ押し付ける。掌返しとはこのことで、私には、段々とジャニーズ事務所のほうが被害者に見えてきたくらいだ。

 そもそもは、「週刊文春」はどれだけジャニー喜多川氏の性被害問題を報じ続けても、他のマスメディアが報じないので、今年4月、日本外国特派員協会という場を借りて、被害者の実名顔出しの記者会見を行ったのが端緒だった。それを誰が仕掛けたかは、ここでは特段言及しない。ただその目的は、NHKと共同通信を巻き込むことにあった。どちらかが報じれば、他メディアも追随する。そう考えて、狙い撃ったのだ。

 結果、会見翌日になってこれを報じたのがNHKで、そこから堰を切ったように各社が追随することになった。文春の狙い通りの結果となったのだ。

 では、少なくとも制作部門はジャニーズと蜜月だったNHKが、なぜ報道することを決断したのか。それは、国外の反応を無視できなくなったからだろう。日本外国特派員協会の会見は、その門戸が広く開放され、国内メディアやフリーの記者も参加可能だが、主だって海外のメディアが参加する。結果的として国外から「日本で性被害問題が黙殺されている」との声が上がることに、「それはまずい」と恐れ慄いたのがNHKということだ。それ以前に英国公共放送のBBCがこれを報道し、そもそも外圧が強くなっている中、これ以上、この問題を無視できないと判断したともいえる。そしてこれが、NHKとジャニーズ事務所の決別を意味することになった。

 結果は見ての通りだ。ジャニーズ事務所は各メディアから一斉に批判され、社名の変更まで追い込まれ、当事者の会からは、いまやさすがに首をひねざるをえないような要望まで突きつけられようになった。喜多川氏のよる性加害問題についてはその存在を否定することはできないが、ひとつひとつのケースで事実認定が不可能なことを今さら報じることにどれだけの意味があるのだろう。前述した、NHK局内での性加害についてもそうだ。

マスメディアが取るべき責任と補償

 当事者の会は、いつ発足されたのだ。今年5月である。そこで証言する人々の話はさらに何年も前のことで、喜多川氏への確認もしようもないことばかりだ。これは当事者の会の人々に限ったことではなく、人間というのは、意図的か否かにかかわらず、自身にとって都合のいいように話をしてしまうものだ。だからこそ、事実が歪曲していないかどうかを第三者的に検証するのが報道の役割なのではないか。それを放棄し、実際には当事者の会の声を利用して、ジャニーズを袋叩きにしているのが現状ではないか。繰り返すが、これまでジャニーズの恩恵を受けてきたマスメディア企業は、ともに責任を取り、補償に加わってもおかしくない立場なのだ。

 それなのに、どの口が言っているのだろうか。社名まで変え、解体的出直しをはかっているジャニーズのタレントですら、紅白歌合戦の出場を見合わせるとは。タレントに罪はない。そのタレントを愛するファンたちには、もっと罪はない。そんな人たちを傷つけることが、現在、メディア企業が取るべき対応ではないことは明らかだ。

 マスメディアが担う公益性とは、人々を困惑させて疲弊させ、激しい論争を繰り広げるためのものなのか。違うだろう。だが、結果どうだ。ジャニーズへのバッシング報道が大衆を焚き付け、ファンたちを傷つけるという結果を招いているではないか。

 組織という隠れ蓑の中で動いているので、マスメディアにかかわる個々人は罪悪感を感じないだろう。しかしこれが個人だったらどうだろうか。一方の言い分をもとに、これだけ社会に大きな影響力を与え、混乱を生じさせれば、精神面で押し潰されるはずだ。そして、そうならないために慎重を期した報道を行うはずだ。だが、マスメディアという組織は、その姿勢が希薄なのだ。

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