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NHKが貫く「究極の殿様商売」、BS放送2局→1局でも下がらない受信料の理由

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NHK

 近年、影響力の低下が指摘されるテレビ業界でこの冬、大きな事件があった。地上波、BS、CSと、確実に勢力範囲を広げてきた各テレビ局だが、NHKが11月いっぱいでNHK BSプレミアムの放送を終了。NHKのBS放送は、従来の「BS1」「BSプレミアム」「BS4K」の3局から、「NHK BS」「NHK BS プレミアム4K」の2局に再編された。

「今回のBS再編は、今年10月に行われた受信料値下げによる受信料収入の減少を見込んだ経営合理化策の1つ。同時に4Kの普及を促す狙いもあります。BS1とBSプレミアムを統合して新たに『NHK BS』が誕生し、視聴できる番組は減りますが、NHKは『チャンネル数は減るが、再放送番組を整理するので、再編を機に終わる定時放送の番組はない』と説明しています」(テレビ情報誌編集者)

 3局から2局体制に移行する11月から12月にかけ、NHKはアナウンスを繰り返し、周知を徹底したが、ネットには、

「BSプレミアム見れなくなってる!」
「知らぬ間にBSのチャンネルが減ってた。BSプレミアムって終わったのか」
「毎週録画していたBSプレミアムの録画見てびっくり 12/1から変わるの知らなかった」

と、驚きの声が次々と上がっており、

「4K放送見れない環境の人は 実質値上げなのでは」
「BSプレミアムなくなるのにパワーアップとかNHKふざけてるのかな」
「101chにお引越しったって全部じゃないし 単に選択肢が減っただけじゃん」

といった不満の声も少なくない。さらに驚かされるのは、視聴できるテレビ局が2局から1局になったのに、受信料はちっとも変わらないことだ。

「現在NHKの受信料は、地上波+BSで月1950円。確かに受信料は今年10月から1割値下げされましたが、それとBS再編を繋げるのは、ちょっと話が違います。もとよりNHKは、放送センター建て替えのため、莫大な剰余金を貯め込んでおり、各方面から批判されていた。これを受けてNHKは、何度は受信料値下げを検討したが、経営委員会によって却下されたり、値下げ幅が微々たる額だったことで、さらなる批判を浴びた。10月の値下げは、菅義偉首相(当時)が国民の歓心を買うため、政治主導で値下げを命令したため、渋々実施されたものです。NHKは『再放送番組を減らすので、見られる番組は減らない』と説明しましたが、つまりそれは、視聴者がこれまで再放送のために高い受信料を払わされていたということ。1割程度の値下げではとても足りません」(週刊誌記者)

 また、“他にも削るところがある”と指摘するのは、ライバル局の幹部社員だ。

「かつてNHKは、民放と比べれば年収はかなりの差がありましたが、民放の給与はここ10年ほどで一気に下がっており、局によってはピーク時から半減したところさえある。ところがNHKは約1万人の職員を抱えながら、平均年収は1000万円以上ともいわれ、その額は民放と同等かそれ以上。経営スリム化を図るなら、まずは人件費を削るのが筋でしょう。そもそもNHKの経営は、“テレビは1台売れれば、毎月黙っていても収入が入ってくる”というビジネス。しかも受信料は、動画配信サービス並みかそれ以上です。それなのに“受信料値下げで実入りが減るから放送局を1つ減らします”とは、殿様商売もここに極まれリといった感じです」(キー局関係者)

 一方では、こんな思惑もあるという。

「現在4K放送の普及率は、ざっと2割ぐらい。それでもNHKがこのタイミングでBS再編に踏み切ったのは、4Kテレビ購入の起爆剤にしたいからです。テレビ業界にとって大きな事件だったのは2011年の“地デジ化”。これによってブラウン管テレビはお役御免となり、莫大な買い替え需要が発生したことで、テレビ関連企業は大いに潤いました。あれから10年以上が経過し、多くの家庭はそろそろテレビの買い替えのタイミングに差し掛かっている。いわば“あの夢をもう1度”ということです」(ビジネス誌記者)

 こういった小賢しいやり方が、テレビ離れを加速させていることに気付いているのだろうか……。

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2023/12/23 08:00
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