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新條まゆ氏「漫画家が出版社に搾取される」と訴え…「小学館の圧力」告白で波紋

X「新條まゆ@『虹色の龍は女神を抱く』連載中!(@shinjomayu)」

 アニメ化もされた『快感フレーズ』などのヒットで知られる漫画家の新條まゆ氏が、現在の出版社は「中間搾取企業」になっていると訴え、漫画業界の闇に切り込んだ。過去に電子書籍の配信元と直接契約しようとした時、小学館が配信会社に「作家と直接取り引きするなら うちからいっさい漫画を配信させないぞ」と圧力をかけたとも明かしており、衝撃的な告白に波紋が広がっている。

 新條氏は14日、自身のnoteに「漫画家が出版社に搾取される時代が始まっている」と題した文章を投稿。「『搾取』この言葉を使うことに抵抗がなくはないですが やはりそうとしか考えられない現状です」と切り出し、紙の漫画の印税率は基本的に10%だが、作品が世に出るまでにかかわる人や出版社の作業が大幅に少ない電子書籍においても、作家の印税率は15%~20%で大きく変わらないと現状を説明した。

 デジタル配信においては「編集部と出版社の役割を分けるとすれば配信会社に配信を許諾して、漫画家から貰ったデータを配信会社に横流しするだけ」とし、「こんだけ関わる人減ってるのに漫画家のパーセンテージ、低くない?そう疑問に思ったのは小学館から出ていく決意を固めた時。時は電子書籍の黎明期でした」と印税率に疑問を持った経緯をつづった。

 実際、かつて新條氏はデビュー以来の付き合いだった小学館を離れると発表し、内情を記したブログ(現在は削除)で「小学館の仕事を辞めるなら、これまでの出版物を絶版にする」などと告げられたと明かして騒動になったことがあった。

 この当時について、新條氏は「すべての権利を引き上げるという段階でも揉めたのですが電子書籍の権利だけは残してほしいと言われました。ですが、お断りをして、当時出版社を通して取引していた電子書籍の配信元にこれからは出版社を通さず、直接取り引きして代わりに配信料を上げてほしいと交渉しました。このことを知った小学館が配信元の会社に圧力をかけました。『そうやって作家と直接取り引きするならうちからいっさい漫画を配信させないぞ』と…」とつづり、小学館による「圧力」があったことを明言した。

 漫画も配信が主流となった現在、印税率を変えようと出版社に掛け合ったこともあったようだが、新條氏は「どんなに交渉しても『他の作家もこの率だから。この契約がひな形だから』と印税率を変えません。出版社が莫大に印税率を搾取してるという構図です」と告白。出版社について「こうなってくるともはや中間搾取企業です」と断じ、「それだけ搾取してるなら、せめてスタッフのお給料はこれから出版社が支払いますとか必要経費は出版社が持ちますと持ちかけてしかるべきだと思います」と訴えた。

 その後、新條氏は原稿データの受け渡しや管理、宣伝などを代行してくれる配信取次会社にも「編集部」があると知り、そこと直接契約を結べばいいのではと気付いたとのこと。「原稿料を貰う代わりに、配信料の率を下げてもらったり、逆に原稿料はいらないから、配信料の率をあげてほしいというのも交渉次第です」とし、古い体質のままの大手出版社とは違って契約の自由度も高いと明かした。

 新條氏は「漫画家に出版社はいらないと言ってしまうと暴力的ですが、実際に出版社が金銭面での足かせになってるのが現状です」「大企業の変わらない体制を変えようとしても無理なことがこの10年でわかりました」などとして、これからは個人の時代になると指摘。さらに「わたしは仲良くさせて貰ってる出版社も多いですが、こういうこと書くともう出版社ではお仕事できませんね。でも『そういう時代』です。漫画家という職業を守るためにはこういうことも発信しなきゃと思ってます」と思いを打ち明けた。

 印税率の問題も重要だが、それ以上に衝撃的なのは「小学館が配信会社に圧力をかけて作家の独立を妨害しようした」ともとれる告白。旧ジャニーズ問題とも共通するような、業界の闇をうかがわせる。

 小学館から離れた後に新條氏は集英社などで執筆しているが、自身のXで「集英社でちょっとでも嫌な思いをしたこと、一度もないです」と記しており、印税率以外の問題は大手出版社だからというよりも「小学館の企業体質」に原因があるのではとも感じられる。

 事実、新條氏は別の投稿で「いい編集者って小学館にもたくさんいる」としつつ、「私が小学館から出るっていうブログを書いて大問題になった時、小学館は朝イチの会議で『作家にあんな偉そうな発言をさせないように管理した方がいい』ってなった。かたや集英社の会議では『こんな事態になる前に作家さんが不満を抱えてないか、聞き取ろう』ってなった」と明かしている。

 また、過去には小学館が大ヒット作『金色のガッシュ!!』で知られる雷句誠氏のカラー原稿を紛失して裁判沙汰になった騒動があったが、この件について人気漫画『しろくまカフェ』のヒガアロハ氏は、自身のXで「雷句誠先生が原稿紛失でトラブルになった時、『漫画家に屈してはならない!』という社内FAXが回ったと、元社員さんから聞いたことがありますが…」と証言している。これらが事実だとすれば、以前から小学館は企業体質として「作家を下に見ている」という部分があった可能性があり、それが新條氏の訴えにもつながっているのではと思えなくもない。

 『セクシー田中さん』問題によって小学館の対応や出版社とテレビ局の関係性などが物議を醸しているが、それだけでなく漫画界全体の「悪しき慣習」を見直す時期が訪れたのかもしれない。

SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。

さとうゆうま

最終更新:2024/02/15 15:00
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