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『不適切にもほどがある!』最終話 回せよ、松永

最終回 アップデートしなきゃダメですか? | TVer

 29日放送の『不適切にもほどがある!』(TBS系)は最終回。いろいろ話題を振りまいて、華やかに終わりました。

 見誤っていたなぁ、と感じています。6話と7話で提示された、オガワ(阿部サダヲ)と純子(河合優実)が神戸の震災で死んじゃうというくだりがあまりにいい感じだったので、最終的にはそっちに重きを置いて「家族と運命とタイムスリップ」みたいなところに向かっていくのかと思ってたけど、全然違った。いや、前回には、もう違うなと思ってはいたけど、改めて、皆目見当違いだったなぁと。前回も書いたけど、だったら震災で人なんか死なすなよと思う。

 振り返りましょう。

■回せ、松永。

 令和の時代で半年間を過ごし、すっかりアップデートされたオガワにとって昭和のガサツさは耐え難いものでした。それでも「寛容が肝要だよね」と歌い上げて、ドラマは終わりました。

 このレビューでは『ふてほど』について、社会的なテーマを扱うのはいいけどキーワードだけ出して取り扱いが雑だよね残念だよねということをずっと言い続けてきたわけですが、そのへんは雑なまま、結局のところタイムスリップについても雑な取り扱いになっちゃったという印象でした。つまりは、何も真剣に取り扱ってない。メディアとしての問題提起も、フィクションとしてのストーリーテリングも、何もかもが真面目じゃない。そういう作品になったと思います。

 エモいかエモくないか、バズるかバズらないか、叩かれるか叩かれないか、SNSとネットニュースの顔色ばかりをチラチラと伺って、いかにもそういう視聴者の声を上から見下ろしているような、「おまえらの好きなものを提供してあげてますよ」「これで踊りなさいよ」というスタンスしか残らない、ダセぇ作品だったと思います。

 象徴的だった、最終回のシーンがあります。

 Creepy Nutsがカメオ出演して、主題歌の「二度寝」を披露する場面です。カメオ出演はいいです。楽しいし贅沢だと思います。ターンテーブルとゴッパーがあって、DJ松永とR-指定がいるわけです。

 ここで松永がスマホから「二度寝」をタップしてカラオケを流すんです。で、ターンテーブルの前で当てぶりをしてる。即席ライブかと思ったら、R-指定の本人カラオケショーだった。

 このやり方がドラマからのオファーなのか、松永が希望したものなのかはわかりません。でも、こういうことだったな、と思ったんです。

 ターンテーブルだけ見せておけば、客は踊ると思ってる。そこに回すべき人間がいて、本気出せば、そこにいる子役たちの頭に一生忘れられないようなパフォーマンスを焼き付けることだってできるのに、そういうものこそが視聴者にだって届くはずなのに、松永はただ呆けた顔でちょっとレコードを触ってる。回せよ、松永。

 このドラマで扱われたさまざまな令和の問題。ハラスメントやジェンダー差別、同性婚、インティマシーコーディネイター、それらはつまり、最終回におけるこのターンテーブルなんです。本来、どんなレコードを乗せてどう回すかが大事なはずなのに、ご立派な見ためで登場しただけで、すぐに単なる背景と化す。呆けた顔で、ちょっとその問題を触ってるだけ。現代っぽいお題目だけ見せておけば、中身はなくても視聴者は踊ると思ってる。実際、けっこうみんな踊ってる。ネットニュースの見出しには、週を追うごとに『ふてほど』の文字が踊ってる。

 ターンテーブルがあって松永がいたら、回せよ、本気出せよって思うんです。

 それと同様に、クドカンがいて震災というモチーフを取り扱うなら、語れよ、本気出せよって思うんだよ。

 1995年に取り残されてるのは私のほうですかね。バズることが目的のドラマに、震災死ってこんなに軽々しく使っていいものになったんですかね。もうそこまで風化したんですかね。それがアップデートなんですかね。

 そんな感じです。ありがとうございました。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/03/30 13:00
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