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宝塚歌劇団パワハラ事件、揃って劇団を“断罪”する大手メディアの“手のひら返し”

宝塚歌劇団パワハラ事件、揃って劇団を断罪する大手メディアの手のひら返しの画像1
阪急宝塚駅から宝塚大劇場を結ぶ「花の道」。(写真/Getty Images)

 宝塚歌劇団の劇団員の女性が亡くなった問題で、劇団はこれまでの姿勢を一変させ、パワハラを認定。3月28日に女性の遺族に謝罪した。上級生によるパワハラ、過密な公演日程、長時間労働など、さまざまな問題が浮かび上がった今回の事件。舞台上の夢のような世界とは裏腹のドロドロとした闇にスポットライトが当てられる事態に、宝塚ファン以外からもため息が漏れた。また、宝塚歌劇団は3月31日、宙組娘役の彩妃花(あやひ・はな)と葉咲(はさき)うららが同日付で退団したと発表した。

「今回、特に際立ったのは親会社の阪急電鉄の対応のまずさでした。いつまでもパワハラの存在を認めず、幹部は“逆ギレ”のような発言をする始末。今回ようやく謝罪に至りましたが、責任の所在は不明瞭なまま幕引きさせたいようです。再発防止策は提示されましたが、閉鎖的な環境に変わりはなく、“何も変わらない”と危惧する声は絶えません。

 本質的に宝塚は“やりがい搾取”の側面が強い。入団には高い倍率の試験を突破する必要があり、“憧れの舞台に立てるのだから”“より良い舞台を作るため”という建前のもと、労働環境や雇用状況への配慮がまるで行き届いていなかった。先月末に発表された宝塚音楽学校の倍率が大きく下がったのも納得です」(ビジネス誌記者)

 劇団がどんな言い訳をしようとも、1人の命が失われた事実はあまりにも大きい。今回の謝罪を受けて、大手紙は一斉に宝塚問題を社説でピックアップし、

「伝統を重んじる閉鎖的な組織の中で起きた理不尽な行い」(朝日)
「公演に伴う準備作業を団員任せにしていた」(読売)
「『芸事』を名目に人権を軽んじるような、あしき体質」(日経)
「芸や舞台を絶対視して、個人の人権をないがしろにする体質」(毎日)
「旧態依然とした歌劇団の体質」(産経)

といった厳しい言葉で劇団の問題点を指摘したが、宝塚に詳しいエンタメ誌のライターは、大手メディアの“手のひら返し”にも憤りを覚えるという。

「今回の問題に関する大手メディアの報道姿勢を見ると、あたかも“我々はこれまでも再三再四、問題点を指摘してきた”みたいな雰囲気ですが、実際には間近で稽古を見たり、タカラジェンヌにインタビューしても何も感じていなかったのが真実です。例えば宝塚には、入団7年目までの劇団員が出演する『新人公演』がありますが、その稽古は本公演と並行して進めるので、スケジュールはめちゃくちゃハード。新公の主演やヒロインは文字通り寝る暇もありませんが、インタビューで語る“深夜まで練習した話”や“先輩に厳しく指導された話”は、そっくりそのまま“美徳”や“努力の結晶”として、ポジティブな意味で取り上げられるのが常でした。また、公演直前に娘役がカツラやアクセサリーの準備で徹夜をするのは宝塚ファンなら誰でも知っている話ですが、そういったエピソードも舞台にかける熱意の現れとして、しばしば好意的な文脈で描かれてきました。それなのに、ひとたび問題が起きると、これまでの態度を180度改め、過重労働だの厳しい上下関係だのと責め立てることには強い違和感を覚えます」(エンタメ誌ライター)

 ことが起きてしまった後に問題点を指摘するのは誰にでもできること。無反省に攻撃に回るメディアの面の皮の厚さには恐れ入る。また、今回の件はテレビでも大きく報じられているが、テレビも同罪だ。

「今回の件では厳しい上下関係が厳しく指弾されていますが、宝塚OGがバラエティ番組に出た際、音楽学校の厳しいルールは鉄板ネタ。“異常に厳しい掃除”“予科生(音楽学校の1年生)は廊下を直角に曲がる”“阪急電車にお辞儀をする”といったエピソードを1度は聞いたことがあるでしょう。そういったルールも、宝塚の規律や上下関係の厳しさを表すものとして、これまで面白おかしく取り上げてきたのに、それを今となって“理不尽なルール”と咎(とが)めるのは卑怯です」(同上)

 こういった構図は、昨年大騒ぎになったジャニーズ問題と全く同じ。その上から目線がメディア不信を招いていることに“中の人”が気付く日は来るのだろうか。

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2024/04/06 09:00
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