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メリー喜多川氏の美学「タレントを守るためには悪人になる」の犠牲になった中森明菜と研音の不遇

中森明菜『難破船』

 数多くの男性アイドルやグループを輩出した芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」の“女帝“と呼ばれた名誉会長・藤島メリー泰子(メリー喜多川)さん。そのメリーさんが死去していたことが17日、明らかになった。享年93。

 メリーさんの訃報に、各方面から彼女の偉大さを称える声が寄せられているが、なかでも所属タレントを代表して東山紀之が発表したコメントの中にあった、“メリーさんとの思い出の中で、忘れられない言葉”は、多くの芸能関係者が首肯したことだろう。

 それは、「私はタレントを守るためなら、いくらでも悪人になります」という言葉だ。

 東山はそれをメリーさんの“美学”と表現していたが、ただ、死者に鞭打つつもりはないが、そのために人生を狂わされた者がいることも、決して忘れてはならない。

 その筆頭格といえば、メリーさんが溺愛した近藤真彦を守るため、奈落の底に突き落とされた“昭和の歌姫“中森明菜だ。今も体調不良で6年以上、活動休止状態が続いている明菜だが、某元音楽プロデューサーは、「これまでも、明菜は精神状態が不安定で無期限の活動休止をしたことがあったが、やはり、約30年前の件が未だに尾を引きずっているように思える。メリーさんの嘘がなければ、明菜の人生を狂わすことはなかったでしょうに……」と語る。

 明菜は、オーディション番組『スター誕生』(日本テレビ系)で芸能プロ「研音」にスカウトされ、1982年にシングル『スローモーション』でデビューすると、85年、86年と2年連続で日本レコード大賞を受賞。これは女性歌手としては初めての偉業だった。

 スター街道を駆け上がる一方、プライベートでは、“マッチ”こと近藤真彦と極秘交際をスタート。メジャーマスコミはジャニーズの力を恐れ、取り上げることはなかったが、唯一、隔週女性週刊誌「微笑」(現在は休刊)だけが、明菜のマンションで2人がお忍びデートをする現場を押さえた。

 だが、順調な交際も長くは続かなかった。

 「2人は、会うたびに喧嘩ばかりするようになり、結果、明菜が自殺未遂を繰り返し、テレビ番組をキャンセルしたり、地方のコンサートをドタキャンしたりするようになったんです。事務所は、莫大な違約金に頭を痛めていましたが、それでも明菜の気持ちを尊重して、マッチと別れさせるようなことはしませんでした」(当時の2人の関係を知る芸能関係者)

 ところが1989年、近藤は、明菜と極秘交際を続けながら、当時、全米進出のためニューヨークに滞在していた松田聖子と現地のホテルで密会。それを写真週刊誌「フライデー」に報じられた。

 明菜の最大のライバルと言われていた聖子との密会に、明菜はかなりのショックを受けたという。同年7月、近藤の自宅で自殺を図り、病院に緊急搬送された。

 筆者は、“明菜の育ての親“と言われた、日本テレビ元プロデュサーで研音の社長だった故・花見あきら氏と親しくしていたが、花見氏は、このときのことについて、「“明菜が自殺未遂した”という知らせはありましたが、いつもことだと病室に向かうと、すでにメリーさんが見舞いに来ていたんです」と語っていたことがある。

 当時、所属していたレコード会社関係者が、悔しそうに振り返る。

 「自殺未遂の原因はいつもの痴話喧嘩だったのですが、メリーさんは、事実を隠蔽するため、“あなたは事務所に搾取されている“と明菜に嘘を吹き込んだんです。結果、自殺未遂は、“事務所への不信感が原因”となってしまったんです」

 その後、明菜は研音を退社するのだが、この背景にあったのも、メリーさんの嘘だという。

「明菜は当時、近藤の趣味だったカーレースにかなり貢ぐ一方、自分のストレス発散のための衝動買いを繰り返していました。浪費家だったんです。そこで事務所は、家族が生活に困らないよう、明菜に内緒で生活費を渡していたんです。ところが、メリーさんは、それを“あなたは搾取されている”と吹き込んだ。メリーさんの言葉を信じた明菜は、研音を退社。事務所に残ったのは、痴話喧嘩によるコンサートキャンセルの莫大な違約金と、5億円以上の明菜へのバンス(前渡し金)だけでした」(前出のレコード会社関係者)

 それでも花見氏は、「娘が、イヤになって家を飛び出したのだから仕方ありません」と明菜を責めることはなかった。

 その後、明菜は同年の大晦日に、都内のホテルで記者会見に臨んだ。会場に金屏風が立てられていたことから、マスコミは近藤との婚約会見だと沸き立った。ところが、開けてみれば、明菜の復帰・謝罪会見だった。

 「明菜自身も、初めは婚約会見だと思ったそうです。ところが、事前に復帰会見だと聞かされ、納得がいかないまま、会見に臨んだそうです」(芸能ライター)

 その後、明菜は、新事務所コレクションの設立を発表。事務所の役員には、近藤のレコデーングディレクターを務めていた小杉理宇造氏が就任し、その後、しばらく明菜と近藤は同棲したものの、すぐに別れたという。

 「その後、小杉氏も事務所を離れました。ハシゴを外され、事務所は空中分解。メリーさんは、初めから“ほとぼりが冷めるまでもてばいい”と考えていたんじゃないでしょうか」(前出の芸能ライター)

 近藤とメリーさんに裏切られ、人間不信に陥ったという明菜。精神状態も不安定だったというが、その後も、“明菜利権“に、有象無象の輩が群がり、明菜は転落の一途を辿った。約10年前には、Kという恋人のマネジャーの出現で立ち直ったかにみえたが、14年から再び活動休止状態が続いている。

 近藤を守るためとはいえ、明菜を追い詰めたメリーさんの責任は重い。それでも“ジャニーズ帝国“を築いたメリーさんの功績も否定はできない。改めて、合掌ーー。

本多圭(ジャーナリスト)

芸能取材歴40年以上、タブー知らずのベテランジャーナリスト。主な著書に『 スキャンダルにまみれた芸能界のトンデモない奴ら』など。

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最終更新:2021/08/28 00:25
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