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TPの芸人礼賛

金属バットが不戦勝でもトレンド入り『THE SECOND』ノックアウトステージ全貌

金属バットが不戦勝でもトレンド入り『THE SECOND』ノックアウトステージ全貌の画像1
『THE SECOND ~漫才トーナメント~』公式サイトより

――お笑い大好きプロデューサー・高橋雄作(TP)が見た、芸人たちの“実像”をつづる。今回は『THE SECOND』「開幕戦ノックアウトステージ32→16」によせて。

 結成16年以上のコンビによるお笑い賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント~』にエントリーした133組の中で勝ち残った32組による「開幕戦ノックアウトステージ32→16」が、3月27日・28日に行われた。有料生配信は実施されたもののアーカイブはなし、僕はこの連載を言い訳に「仕事」として全組の漫才を視聴した。文字通り”笑いあり涙あり”の素晴らしいバトルだったので、駆け足になるが全組を振り返りたい。勝ち進んだ組のネタバレはないのでご安心を。

[Aブロック]

【×】スーパーマラドーナ vs 2丁拳銃【◯】

 この対決が開幕カードということで、場の空気感など探り探りな部分がありながらのスタート。ウケ量は互角だった気がするが、スーパーマラドーナはタイムオーバーが客審査に響いたのかもしれない。「Mおじ」改め「セカおじ」の武智さんのことだから、トップバッターじゃなければきっとそのへんも対策してたんだろうなぁと思った。

【×】Dr.ハインリッヒ vs スピードワゴン【◯】

 Dr.ハインリッヒのバッチバチに仕上がりきったネタが圧巻だったが、惜しくも敗退。小柄なハインリッヒのお二人を見た井戸田さんの「身長的に安達祐実を思い出して懐かしい」でスタジオ大爆笑、ネタ後のトークはとっても和やか。勝ちが決まった直後に小沢さんが涙したのは、『M-1グランプリ』で決勝進出を果たせずにこの大会に挑んできたDr.ハインリッヒの思いを汲んでの葛藤があったんだと思う。

[Bブロック]

【◯】流れ星☆ vs プラス・マイナス【×】

 正統派漫才師同士の激しい応酬。プラス・マイナスはラストイヤーだった2018年の『M-1』敗者復活で惜しくも2位だった野球ネタを持ってきていたがここでも敗退、優勝候補がベスト32で敗れる波乱。もしや事実上の決勝戦だったかも? 勝ち進んで不仲が解消されることを流れ星☆に願う。

【×】タモンズ vs 三四郎【◯】

 熟練されたテクニックを持ちつつまだまだ新しい切り口でネタを作り続けるタモンズ、めちゃくちゃ面白かった! 大宮セブンの地肩は計り知れない、劇場で観たい。三四郎小宮さんは体調不良の中ステロイドを打っての強行出場、ネタ中は何も気にならなかったのにトークになったら声がカスカスだった、すさまじい芸人魂。

[Cブロック]

【×】なすなかにし vs COWCOW【◯】

 このトーナメント唯一の同点決着。大会規定により客審査の「3点(=とても面白かった)」をより多くもらったCOWCOWの勝利。対決後すぐ「本番前に挨拶できなかったから」と頭を下げる2組、人柄が出ていてとてもよかった。どうやら対戦相手と事前に会わないようにして馴れ合いになるのを防いでいる模様。

【◯】超新塾 vs ジャルジャル【×】

『キングオブコント』王者ジャルジャルがまさかの敗退、これが一発勝負のトーナメントの恐ろしいところ。超新塾はこの大会唯一の5人組、数で圧倒するパワー系漫才が台風の目となりそう。

[D]ブロック]

【×】モダンタイムス vs ラフ次元【◯】

 ネタ後に暴れ倒していたモダンタイムスが最高だった。「6分で飽きんなバカ」「お前オンバトの客だろ」という悪態もらしさ全開。客審査の「1点(=面白くない)」が10人で最多だったことは、彼らにとってはもはや勲章かもしれない。

【×】Hi-Hi vs ギャロップ【◯】

 注目のハゲ対決。Hi-Hiはハゲいじりほぼなしの正統派漫才に対して、ギャロップはツカミから本ネタまですべてがハゲを軸にしたネタが光っていた。

大荒れ必至だったインポッシブルvsランジャタイの結末

[Eブロック]

【×】ツーナッカン vs 三日月マンハッタン【◯】

「激シブ対決」と揶揄されていたがかなりの名勝負だった。ツーナッカン中本さんが敗退後に「明日もバイト頑張ります」とツイートしていたのも哀愁があってよかった。

【×】フルーツポンチ vs テンダラー【◯】

『千原ジュニアの座王』(関西テレビ)でもおなじみの「チープものまね」を詰め込むだけ詰め込んだフルーツポンチをテンダラーが横綱相撲で圧倒。テンダラーは直近のWBCをネタに組み込んでおり、どこか余裕すら感じる勝利だった。

[Fブロック]

【×】ガクテンソク vs マシンガンズ【◯】

 ガクテンソクの漫才がとにかく美しかった、台本を見たくなるほど構成がきれい。対するマシンガンズは終始アドリブと自虐を入れつつ会場を笑いの渦に。「技」を「力」でねじ伏せた好カードだった。

【×】インポッシブル vs ランジャタイ【◯】

 荒れること間違いなしと目されていたこの対決は案の定カオスに。何を言ってるかわからないかもしれないが「腸」と「タモンズ」が交換されてゲームセットとなった。

[Gブロック]

【◯】かもめんたる vs モンスターエンジン【×】

 モンスターエンジン西森さんが盛大にネタを飛ばしたとのこと。観ている側はまったく気づかなかったが、ベテランでも賞レースのプレッシャーがあることを痛感。

【×】シャンプーハット vs 囲碁将棋【◯】

 現時点で今大会のベストマッチは間違いなくこの対決だった。完璧な2組の漫才はもちろん、ネタ後にシャンプーハット恋さんに「負けたのは悔しいけど勝ち上がったのが吉本の後輩でよかった」と言われた囲碁将棋の根建さんが「兄さんたちのために絶対優勝する」と宣言。「ずっと憧れでした」と泣きじゃくる文田さんも本当によかった。お祭りムードの中、1組だけ本気なことを隠さない囲碁将棋は”そういうスタンスをとるボケ“かもしれないが、異彩を放っていて応援したくなる。

[Hブロック]

【×】スリムクラブ vs タイムマシーン3号【◯】

 テンポが違いすぎるコンビ同士の戦いは、勝敗をつけるのが本当に難しいと思った。「間」をたっぷり使ったスリムクラブの漫才は、6分でも短く感じるんだから不思議。

【×】東京ダイナマイト vs 金属バット【◯】

 東京ダイナマイトはハチミツ二郎さんの体調不良により出場辞退、金属バットの不戦勝となった。「東京ダイナマイトリスペクト」の漫才を披露して、不戦勝のはずなのに大会を盛り上げてトレンド入りまで果たした金属バットはさすがの一言。どこかでこの2組の再戦を期待したい。

 以上、とっても濃度の高い32組の対決をざっと振り返ってみた。トーナメント制のタイマン一発勝負というのは、さながら甲子園のようでドラマチックだ。勝敗決定後に泣いてしまう芸人が多いのは、涙腺が緩くなっているおじさん芸人が出場しているこの大会ならではだと思う。今回勝ち上がった16組は、4月下旬に開催予定の「ノックアウトステージ16→8」に挑む。5月に行われる「グランプリファイナル」まで目が離せない。
(編集/斎藤岬)

高橋雄作(TP、プロデューサー・作家・社長)

プロデューサー、作家、社長。2022年夏、テレビ朝日を退職し独立。音声配信アプリ「stand.fm」コンテンツアドバイザー、お笑いラジオアプリ「GERA」チーフプロデューサー。YouTubeチャンネル「金属バット無問題」などを手掛ける。

Twitter:@takahashigohan

たかはしゆうさく

最終更新:2023/04/06 12:00
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