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TPの芸人礼賛

『THE SECOND』で期待がかかる「オンバト戦士」の活躍

『THE SECOND』で期待がかかる「オンバト戦士」たちの活躍の画像1
『THE SECOND ~漫才トーナメント~』公式サイトより

――お笑い大好きプロデューサー・高橋雄作(TP)が見た、芸人たちの“実像”をつづる。今回は予選開催中の『THE SECOND』によせて。

 今年新たにスタートした、結成16年以上のコンビによるお笑い賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント~』。5月にグランプリファイナルを開催し優勝者を決定する同大会は、先日1回戦を終えて133組が32組に絞られた。3月27日と28日にはその32組の中から16組が勝ち上がる「開幕戦ノックアウトステージ32→16」が行われる。32組の中にはキングオブコント王者のジャルジャルを始め、超豪華メンツが顔を揃えている。

 もちろん僕の個人的な感情としては、お仕事でご一緒させてもらっていたり、仲のいい芸人さんたちが多数出場しているのでそちらの面々を絶対的に応援したいのだが、いわゆる「オンバト戦士」の活躍も密かに楽しみにしている。

 僕には「お笑いファンになった日」というのが明確に存在する。「ノストラダムスの大予言」で地球滅亡が騒がれた1999年7月の翌月、小学6年生の僕は少年野球チームの夏合宿に参加していた。その日、家では観ることを禁じられていた「深夜番組」を、“合宿のノリ”で初めて観ることになり、そこで観た番組こそが『爆笑オンエアバトル 第1回チャンピオン大会』(NHK)だったのだ。

『爆笑オンエアバトル』とは、通称『オンバト』と呼ばれ、1999年から2010年まで放送されていた伝説のお笑い“ネタ”番組だ。観覧審査員の投票によってオンエアされる芸人が決まり、今をときめくスター芸人たちが若手時代に軒並み出演していた。

 僕はその日たまたま目にした『オンバト』で初めて“ネタ”という概念を知り、その魅力に脳天を撃ち抜かれたのだ。DonDokoDonがマイクの前でおしゃべりをしているだけで爆笑をかっさらって優勝したのを観て初めて「漫才」というものを認識したし、テツandトモが音楽に合わせてたくさんの顔芸をしていて腹がちぎれるほど笑った。当時「これは何というジャンルなんだろう」と思っていたが、後にも先にもテツandトモしかやらない完全に彼らのオリジナル芸だった。あれは一体なんだったんだ。でも本当に面白かったし、誇張なしに人生でいちばん笑ったと思う。

 合宿から帰った僕は「『オンバト』を毎週観よう」と決意し、親に録画を頼んでいわゆる通常回を初めて観たのだが、初めて観た通常回でまたしても衝撃的な出会いを果たす。

 ラーメンズのネタを観たのだ。「ボケとツッコミ」という役割分担が曖昧で、だけどなぜか笑っている……これは一体どんな感情? と少し怖くなりつつ「お笑いってめちゃくちゃ奥深い」と思ったのを覚えている。

スピードワゴン小沢に憧れまくった少年時代

 そこから僕は『オンバト』を見漁った。YouTubeもネタ番組もほぼなくて、『M-1グランプリ』が始まるちょっと前のあの頃、若手芸人のネタに触れる機会は『オンバト』しかなかった。VHSテープに録画しては擦り切れるほど観た。あの頃の芸人のネタはかなりの数を暗記していると思う。今は気になる芸人がいればほぼ必ずYouTubeでネタを観ることができるので本当にいい時代だ。余談だけど、『M-1グランプリ2002』で笑い飯が超鮮烈な全国デビューを果たしたときも、彼らが大阪芸人なこともあり、翌年の『M-1』までもう一度ネタを観ることが叶わなかった。

 僕がその後のオンバトで衝撃を受けたネタは劇団ひとり「用務のおじさん」、インパルス「キセル」、バナナマン「合コン」などだ。偶然なのか必然なのかみんな今も第一線で活躍している人たちばかり。

 そして「オンバト戦士」の中でとりわけ僕を虜にしたのがスピードワゴンだった。あの頃の小沢さんは、ほかの芸人さんたちに比べて本当にスタイリッシュだった。芸人特有のガツガツした雰囲気を出さず、ハスキー声も相まってなんだか妖艶で、もちろんネタも面白く、それでいてオンエアを勝ち取ったら号泣しちゃうときもある人間味あふれる小沢さんが大好きだった。ちなみに僕は初恋の相手が『家なき子』時代の安達祐実さんだったのでその後井戸田さんは嫌いになった。

 さておき、僕がどれくらい小沢さんのことを好きだったかというと、髪型をマネしていたのはもちろん、「白Yシャツにハンチング」という格好までマネしていた。小沢さんのように格好よくなりたかったけど、頭が大きいのでハンチングがちっとも似合わなかった、考えが甘~い。

『THE SECOND』で期待がかかる「オンバト戦士」たちの活躍の画像2
DVD『爆笑オンエアバトル スピードワゴン』

 小沢さんはそれから10年以上たってから「世界の小沢(=セカオザ)」として大イジリを喰らうことになるのだが、僕は一周まわらずに小沢さんに心酔していたし、小沢さんの名言を正面から「いい言葉」として受け止めていたので、小沢さんがイジられていることにムカついていた。今もずっと大好きで、この仕事を始めて何回かお会いできそうな機会があったのだけど、恥ずかしくて無理だった。誰かわかってくれる人いないかなぁ、あの頃の小沢さんめちゃくちゃカッコよかったんだよ。

『オンバト』がなかったら、ここまでお笑いを好きになることはなかっただろうし、この仕事もしていなかったと思う。『オンバト』が終わって10年以上経っている今も、新しい笑いを作るみなさんに頭が上がらない。そんなこんなでどうしても『THE SECOND』はエモい気持ちで観てしまいそう、なんでもかんでもエモく捉えてしまうのも小沢さん譲りかもしれない。スピードワゴン、COWCOW、タイムマシーン3号、流れ星☆、テンダラー、超新塾、2丁拳銃……『THE SECOND』に参戦中のオンバト戦士たちに幸あれ。

 

 

高橋雄作(TP、プロデューサー・作家・社長)

プロデューサー、作家、社長。2022年夏、テレビ朝日を退職し独立。音声配信アプリ「stand.fm」コンテンツアドバイザー、お笑いラジオアプリ「GERA」チーフプロデューサー。YouTubeチャンネル「金属バット無問題」などを手掛ける。

Twitter:@takahashigohan

たかはしゆうさく

最終更新:2023/03/31 21:05
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