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TPの芸人礼賛

『R-1』ヤラセ疑惑も吹っ飛ばすファイナリスト芸人たちの固い絆

『R-1』ヤラセ疑惑も吹っ飛ばすファイナリスト芸人たちの固い絆の画像1
『R-1グランプリ』公式サイトより

――お笑い大好きプロデューサー・高橋雄作(TP)が見た、芸人たちの“実像”をつづる。今回は『R-1グランプリ2023』について。

 “ピン芸人日本一”を決める賞レース『R-1グランプリ2023』(カンテレ)の決勝が3月4日に行われ、田津原理音さんが3537人の頂点に立った。ファイナルステージでは、コットン・きょんさんを最終投票で3-2で上回り、僅差での優勝となった。

今年の『R-1』は残念ながら大会終了後、運営の不手際による本番中のハプニングによって「ヤラセ疑惑」が浮上し、かなりの盛り上がりを見せてしまったが、僕はすべてのネタでめちゃくちゃ笑ったし、ヤラセでもヤラセじゃなくても本当に素晴らしい大会だなと思った。絶対ヤラセじゃないけど。

 そこで今回は僕が特に「最高!」と思った2人のファイナリストをピックアップして紹介したい。

サツマカワRPG
 8人のファイナリストの中で唯一ピン芸人における「三種の神器」である音響・照明・小道具をどれも使わず「身ひとつ」で戦っていた姿が本当にカッコよかった。ラストイヤーということもあり、これまでさまざまなライブで披露してきたショートコントを1つのストーリーにおさめて「ベストアルバム」のような形で披露していたのもグッときたし、そのどれもが破壊力抜群で面白かった。

 今や誰も気にしていないが、『R-1』の「R」は本来「落語」のRで、2002年の第1回大会は座布団の上で漫談を披露しなければならないという縛りがあった。サツマカワさんが披露したネタはその当時のルールでも戦えるネタで、前述の三種の神器のいずれかを使うのが当たり前になっている今のピン芸へのアンチテーゼのようにも思えた。

 もちろん、音響・照明・小道具を駆使することによってピン芸の幅がとんでもなく広がってレベルアップにもなっているので、どちらが良い悪いの話ではない。ただ今回はサツマカワさんが“唯一”だったためとても目立っていた。結果は4位だったが、現時点で『R-1グランプリ』公式YouTubeにて公開されているどのファイナリストのネタよりも再生されている(2023年3月8日時点)。シンプルイズベスト、まさに原点“怪奇”の素晴らしいパフォーマンスだった。

↓サツマカワRPG【決勝ネタ】First Stage R-1グランプリ2023

宣伝カーを自ら作る“奇策”も投じた弁護士芸人

こたけ正義感
『第43回ABCお笑いグランプリ』(2022年)準優勝や「2022年ワタナベお笑いNo.1決定戦」準優勝など、さまざまな大会で結果を出していて実力が申し分ないことはもちろん知っていたし、自身が現役の弁護士であることを生かした“法律ネタ”の完成度はすさまじく、勝ち上がる実力は十分あった。ただ今年の敗者復活戦は、決勝経験者である森本サイダーさんや、知名度抜群の蛙亭・イワクラさん、『M-1』準決勝進出で勢いに乗るケビンス・山口コンボイさんなど、そうそうたるメンツの中で勝ち上がるのは至難の業に思えた。それをこたけさんは「奇策」を使いつつ勝ち上がってみせた。

 なんとこたけさんは「視聴者投票を呼びかける宣伝カー」を作り、東京の街を走らせたのだ。これがなかなかバズり、ネットニュースになったり、各芸人さんがツイートで紹介するなどの盛り上がりを見せた。

 そもそも『R-1』の敗者復活戦自体が、地上波放送のある『M-1』に比べ、TVerでの配信を見て投票しなければならないシステムだったため、かなりコアなお笑いファンしか投票に参加していないように思えた。また、1人何票でも投票OKというルールも追い風となり、本来こたけさんに票を投じるつもりのなかったお笑いファンが「あんなに宣伝頑張っていたからこたけさんにも投票しとこうかな」というような心理になったのではと想像する。

 法律を最大限解釈して立ち回る弁護士のように(というか弁護士なんだけど)、『R-1』のルールや特性を最大限理解した上での「作戦勝ち」だったのかもしれない。あっぱれ逆転裁判、こたけさんの復活に異議なし。もちろんネタも超面白かった、必見。

↓こたけ正義感【決勝ネタ】First Stage R-1グランプリ2023

 冒頭で述べた通り、今回の『R-1』の話題は「ヤラセかヤラセじゃないか」で持ちきりになってしまった。その“怪我の功名”と言っていいのかわからないが「アフタートーク」がかなり盛り上がっていた。

 3月8日に∞ホールで行われた『ひとり芸No.1決定戦アフタートーク in ヨシモト∞ホール』では、モニターに出ているトークテーマが替わるたびに「あれ? 今何か見えなかった?」という「サブリミナル田津原」ノリが発動していたし、ヤラセを散々いじり倒した後にサツマカワさんがカンテレのスタッフさんに向けて「俺らが笑いに変えてやっからマジで大丈夫」と言っていた。あのセリフは「そういうボケ」だとわかっててもかなりグッときたし、「失敗を許容する」というお笑いの素晴らしさを感じる瞬間だった。

 あとこれは全然関係ないけど、そのトークライブで「裁判とライブが同じ日だったらどうするの?」という質問にこたけさんが「法廷にフリップを持っていくこともあるし、フリップを持ってると検察側が『ものすごい証拠出してくるのでは?』とビビってくれる」という誰からも共感されない「弁護士芸人あるある」を話しててめちゃくちゃ面白かった。

 そんなこんなで決勝に進出した芸人同士の団結も、例年以上に強固なものになっていて微笑ましかった。『R-1』に夢があるかどうかはわからないけど、何があっても絶対に笑いにするという「思い」や「絆」は確実にあった。来年も楽しみ。

↓R-1グランプリ2023 やらせ問題について【田津原理音】

 

 

高橋雄作(TP、プロデューサー・作家・社長)

プロデューサー、作家、社長。2022年夏、テレビ朝日を退職し独立。音声配信アプリ「stand.fm」コンテンツアドバイザー、お笑いラジオアプリ「GERA」チーフプロデューサー。YouTubeチャンネル「金属バット無問題」などを手掛ける。

Twitter:@takahashigohan

たかはしゆうさく

最終更新:2023/03/10 19:00
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