日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『リーガルハイ』の宣戦布告
テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第36回

この国では、世間さまに嫌われたら有罪――『リーガルハイ』の宣戦布告

legalhigh1017.jpg『リーガルハイ』-フジテレビ

「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。

「やられてなくてもやり返す! だれかれ構わず八つ当たりだッ!」

 いきなり『半沢直樹』(TBS系)のラストショットと同じ表情で始まった『リーガルハイ』(フジテレビ系)の第2シリーズは、前作と同様に「お・も・て・な・し」をもじったり、ゲストの松平健の「無礼千万!」というセリフに『暴れん坊将軍』(テレビ朝日系)のBGMを乗せたりと、だれかれ構わずパロディの刃を振り回している。

 勝つためには手段を選ばない弁護士・古美門(堺雅人)と、“正義”を貫こうとして事あるごとに対立するパートナーの黛(新垣結衣)を描いた『リーガルハイ』は、2012年4月に第1シリーズが放送され、今年4月のスペシャル版を経て、10月に新シリーズとして復活した。

 「正義は少年ジャンプの中にしかないと思え!」などとエキセントリックな言動で古美門を演じるのは、半沢直樹役が記憶に新しい堺雅人。それまで静かで繊細な役が多かった堺から『半沢直樹』よりも先に、その過剰な演技を引き出したのは『リーガルハイ』だった。堺なら、どんなに過剰でエキセントリックに演じても、品が保たれることが、すでに前作で証明されていたのだ。

 古美門から「朝ドラのヒロインか!」と罵倒される黛。彼女は今作でも「今どき朝ドラの主人公でも、もっと成長するぞ。これほど変わらないのは、キミと磯野家ぐらいのものだ」と揶揄されるが、黛はもちろん古美門を含め、このドラマの主要人物は基本的に成長しない。思えば「ヒロインが成長しない」ということが特徴だった『あまちゃん』(NHK)をも先取りしていたのだ。

 これまで『リーガルハイ』では、離婚訴訟から日照権裁判、いじめ問題までさまざまな訴訟に対し、古美門は勝ち続けてきた。だが、今シリーズでは、いきなり敗戦を味わうことになる。

 それが、保険金目当てで次々と交際相手を殺した連続保険金殺人容疑の「毒婦」安藤貴和(小雪)裁判だ。証拠も揃っている上、圧倒的な世論で「死刑」回避は困難な状況で、古美門は証拠の信用性の低さを突き、彼女を無罪に導こうとする。形勢は逆転したかに見えたが、安藤が突然自供を始めてしまったため敗訴。古美門は上告して、この敗戦をチャラにしようと決意する。今作では、ほかのさまざまな訴訟と並行して、この事件の裁判が連続ものとして描かれていくようだ。

 安藤裁判の途中、古美門は「安藤貴和が犯した罪が仮にあるとするならば、ただひとつ」だと言い放った。

「それは世間に嫌われたことです。この国では世間さまに嫌われたら有罪なんです!」

 この対世間、対世論は、今作の大きなテーマのひとつなのかもしれない。第2話では若くして会社を創設し、一流会社を次々と買収、“時代が生んだ天才”と謳われもてはやされた果てに、インサイダー取引で実刑を受け出所した鮎川光(佐藤隆太)が、自分を誹謗中傷したマスコミらを訴えると息巻く。それを知った古美門は、珍しく自ら鮎川に売り込みに行く。

「この国の報道のあり方は問題です。表現の自由などという戯言を盾に言いっぱなしで責任をとらず、いいときは持ち上げ、落ちるときは一斉に叩く。有名人を叩けば庶民が喜ぶと思っているんです。有名人もまた、ひとりの庶民であるはずなのに。マスコミだけではありません。いまや誰もかれもが批評家気取り。一般人だから何を言っても許されると思っている」

12
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

水原解雇に間に合わなかった週刊誌スクープ

今週の注目記事・1「水原一平“賭博解雇”『疑...…
写真
イチオシ記事

さや香、今年の『M-1』への出場を示唆

 21日、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「賞レース2本目やっちまった芸人」の完結編が放送された。この企画は、『M-1グランプリ』(同)、『キ...…
写真