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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.545

“羅生門”視点で撮った新感覚の官能映画が登場! 『やりたいふたり』ほか新作ピンク15本を上映

文=長野辰次

妻、夫、愛人、それぞれの視点からドラマが展開する『やりたいふたり』。ヤリマン女(横山夏希)の純情ぶりに、思わずホロリとさせられる。

 最新ピンク映画の話題作&人気作をセレクトした「OP PICTURES+フェス2019」がテアトル新宿で開催される。R18からR15へとレイティングを下げ、よりドラマ性重視で制作された新作ピンク映画を2週間にわたって特集上映する夏の恒例イベントだ。人気女優や監督たちも舞台あいさつに来場し、ふだん成人映画館に足を運ぶ機会のない人たちに気軽に楽しんでもらおうという企画となっている。

 5年目を迎えた今年の「OP+フェス」のイチオシ作品は、第2回新人監督発掘プロジェクトで優秀賞に選ばれた谷口恒平監督の『やりたいふたり』。川瀬陽太主演作『おっさんのケーフェイ』(19)で長編デビューしたばかりの新鋭・谷口監督が、世間一般とは異なる価値観を持つカップルのユニークな愛の形を描き出している。

 漫画家の卵の小崎愛(霧島さくら)は、念願の雑誌デビューを編集者から持ち掛けられる。胸がはち切れんばかりに喜ぶ愛だが、そのデビュー作とは実話系のエロ漫画。“寝とられ妻”をテーマにしろというオーダーだった。処女の愛には難儀な課題で、実在の元カップルを取材することになる。AV業界でカメラマンとして働くタモツ(関幸治)と、ヤリマンだった元妻・カオリ(横山夏希)をそれぞれ個別にインタビューする愛。妻はヤリマンということを知った上での結婚生活はそれなりに幸せだったものの、2人が別れることになった決定的な原因は両者の間で大きく食い違っていた。

 タモツとカオリは言い分が異なるが、いったいどちらが正しいのか。愛が悩んでいるところに、第3の人物が現われる。ギャル系のAV女優・ミキ(永瀬愛菜)はタモツとカオリの双方を知っており、彼女の言い分もまた違うものだった。タモツとカオリの関係性は、3者の間でそれぞれ異なる。まるで黒澤明監督の名作ミステリー『羅生門』(50)のようだ。性体験のない漫画家・愛は、取材すればするほど愛という名の迷宮の中に迷い込んでゆく。

 谷口監督が脚本も兼任した『やりたいふたり』のユニークさは、ヤリマン妻のカオリとその夫・タモツは本気で愛し合っているものの、セックスができないという特殊な関係性を描いている点にある。愛するカオリがほかの男に抱かれているのを見てタモツは興奮するが、肝心のカオリを前にするとタモツの男性器は沈黙してしまう。大して好きじゃない相手とは気軽にSEXできるのに、いちばん好きな相手とはSEXができない。何という不条理な世界だろうか。

 SEXできない夫婦という設定は、2017年に衝撃的なタイトルでベストセラーとなった私小説『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)とかぶるものがあるが、『夫のちんぽ』の場合は男性器・女性器がサイズ違いだったために起きた悲劇だったのに対し、『やりたいふたり』は心理的なものが障壁となっている。妻はヤリマン、夫は変態というアブノーマルさを夫婦が共にきちんと受け入れていれば問題はなかったはずだが、SEXにおいてイクこと、イカせることが重要だという世間的な価値観が愛し合う夫婦を引き裂いてしまう。快楽を伴う性生活と社会性を帯びる結婚生活は、必ずしも一致するとは限らないことが浮かび上がってくる。

 上野オークラ劇場では『悶絶劇場 あえぎの群れ』のタイトルで上映されたR18版と「OP+フェス」で上映されるR15版『やりたいふたり』はエンディングが異なっているが、夫婦愛の深遠さをより感じさせる今回RR15版をおススメしたい。1988年生まれ、平成世代の谷口監督の新しい男女観は、ピンク映画界に新しい波を起こすかもしれない。

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