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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.391

これはエマ・ワトソン主演版“愛のむきだし”だ!! 実在したカルト教団からの脱出劇『コロニア』

colonia03コロニア内に君臨したナチス残党のパウル・シェーファー(ミカエル・ニクヴェスト)。多くの子どもたちが性的虐待の犠牲となった。

 本作を企画したのはドイツ人監督のフロリアン・ガレンベルガー。チリを度々訪ね、コロニアで実際に暮らしていた元住人たちから当時の状況を微細に聞き出すことで、本作をリアリティーのある作品に仕立てている。ドイツのインディペンデント映画にイギリスの人気女優エマ・ワトソンが出演してくれるか不安混じりでのオファーだったそうだが、アイドル系女優からの脱皮を目指していたエマ・ワトソンは、本作のテーマ性とヒロインが恋人のために体を張るというストーリーの面白さから出演を快諾。ハーマイオニーのイメージとはガラリと変わる“大人の女”レナを熱演してみせた。『ラッシュ/プライドと友情』(13)のダニエル・ブリュールとの序盤のラブシーンも丁寧に演じ、中盤以降の恋人奪回劇を説得力のあるものにしている。園子温監督が実在するカルト教団をモデルにして描いた『愛のむきだし』(08)で満島ひかりが大ブレイクを果たしたように、エマ・ワトソンにとっても本作は大きな転機作となりそうだ。

 それにしてもカルト教団の組織運営の巧みさには驚かせられる。信者たちには修業の一環として過酷な労働を強い、考える気力も逆らう体力も根こそぎ奪ってしまう。教団内にしかお前の居場所はないのだと洗脳する。教祖への絶対忠誠を誓う信者は幹部へと出世し、逆に教祖や組織への疑問を少しでも匂わせた人間は速攻でリンチ処分となる。密告される恐れがあるので、誰も本音を口にできない。さらに政界やメディアにすり寄って、外部にはクリーンなイメージを広める。これって、今あるブラック企業とまったく同じではないか。日本にはびこるブラック企業の多くも、カルト教団と同じような組織運営を行なっているわけだ。レナたちが味わった恐怖は他人事ではない。カルト社会はとても身近なところに存在する!
(文=長野辰次)

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『コロニア』
監督/フロリアン・ガレンベルガー 出演/エマ・ワトソン、ダニエル・ブリュール、ミカエル・ニクヴェスト、リチェンダ・ケアリー、ヴィッキー・クリープス、ジャンヌ・ウェルナー 
配給/REGENTS、日活 9月17日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ新宿ほか全国ロードショー公開
(C)2015 MAJESTIC FILMPRODUKTION GMBH/IRIS PRODUCTIONS S.A./RAT PACK FILMPRODUKTION GMBH/REZO PRODUCTIONS S.A.R.L./FRED FILMS COLONIA LTD.
http://colonia.jp

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