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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第5回

ラジオキング伊集院光が磨き上げた「空気を形にする力」

ijuuinhikarunobangumi.jpg『伊集院光のばんぐみのでぃーぶい
でぃー vol.1』/ポニーキャニオン

 伊集院光のファンは、自分が伊集院好きであることをあまり大っぴらに言いたがらない傾向がある。もちろん個人差はあるが、他の芸人のファンと比べても、伊集院ファンは目立つことを嫌い、あくまで控えめに行動している印象がある。

 なぜ彼らは自分が伊集院ファンであることを堂々と公言しようとしないのだろうか? その理由はいくつか考えられるが、私が真っ先に思いついたのは、「伊集院光の面白さを一から他人に説明するのは難しいから」というものだ。普段テレビでしか彼を見ていないような人に対して、ラジオDJとしての伊集院の活躍ぶりをわかりやすく説明するのはかなり骨の折れる作業だ。

 とにかく面白いことに対して貪欲で、一つのエピソードを話している間にもすさまじい勢いで際限なくボケを重ねていく。ルール無用の毒舌で嫌いな有名人やタレントは名指しで批判する。ラジオで暴走するそんな伊集院のどす黒い一面を指して「黒伊集院」という言葉も生まれたほどだ。

 だが、「過激で怖いもの知らずの無法者」というイメージだけでは、伊集院光という芸人の底知れぬ魅力は説明しきれないのではないか、とも思う。彼の芸の本質は、オチまでたっぷりある長い話をじっくり聞かせる構成力や、偏った興味・関心に基づく珍発想を具体的な形にしてしまう唯一無二の企画力にあるのではないか。

 10月15日に発売されたDVD『伊集院光のばんぐみのでぃーぶいでぃー』は、そんな芸人・伊集院光の知られざる才能が垣間見える作品だ。これはもともと、BS11で放送されていたテレビ番組をDVD化したもの。伊集院自らが企画を手がけている。

 彼の一押し企画「真剣ジャンケン(DVD vol.1収録)」は、売れない若手芸人7名を集めて「負けたら1カ月番組出演禁止」というペナルティを賭けて真剣にジャンケン勝負をさせる、というもの。「全員同じ手のあいこなら全員セーフ」というルールのせいで、若手芸人たちは互いに相手の考えを探り合いながら、疑心暗鬼の泥沼にはまっていく。人間の醜い一面を覗き見るということだけに焦点を絞ったディープな企画である。

 そのほかにも、自分が「ブス」と言われることを完全には認められないブサイクな女性若手芸人たちの微妙な心理に斬り込んだ「ブスプルサーマル計画」など、伊集院色の濃い企画の数々が収録されている。

 人間のどうしようもなく情けない姿を見せられて、痛々しさを感じながらもついつい笑ってしまう。そこがいちばん面白いところなんだ、と伊集院は感じているに違いない。笑えるか笑えないかぎりぎりのところを狙い続ける、伊集院のお笑いチキンレースは一度ハマるとくせになるのだ。
(お笑い評論家/ラリー遠田)

伊集院光のばんぐみのでぃーぶいでぃー vol.1

売れてます。

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最終更新:2013/02/07 13:05
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