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『笑撃!これが小人プロレスだ』著者インタビュー

「誰が小人を殺したか?」小人プロレスから見るこの国のかたち(前編)

kobitopro001.jpgそのスピードとテクニック、そして”笑い”に観客は酔いしれた。

 今から7年前の2002年、東京の片隅で1人のレスラーが誰にも看取られることなく息を引き取った。リトル・フランキー、身長はわずか112cm。彼の死によって、日本から小人プロレスは完全に消滅した。彼こそが、最後の「小人プロレスラー」だったのだ。

 今の20代には、「小人プロレス」を観戦したことがある人はほとんどいないだろう。そんな、失われたエンターテインメントを追ったノンフィクション『笑撃!これが小人プロレスだ』(現代書館)が先日上梓され、各方面で話題となっている。果たして、小人プロレスとは何だったのか、そしてなぜ小人プロレスは消滅してしまったのか、著者であるルポライターの高部雨市さんに話を聞いた。

──まずは、小人プロレスと高部さんの出会いを教えてください。

「60年代はじめ、子供のころにテレビでアメリカの小人プロレスを見た記憶があります」

──では、その小人プロレスをルポルタージュのテーマとして取り上げようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

「以前、大道や路地で働いている人を取材していたんですが、その時にいつか小人プロレスをやってみたいと思ったんです。私が上野生まれということもあるんですが、小さい頃にはチンドン屋や紙芝居、猿回しとかいろいろな人が歩いていたし、街には必ず珍妙で不可思議なスターがいました。そういう人に自分が惹かれてしまうんですね」

kobitopro002.jpgド派手な空中殺法も小人プロレスの
醍醐味だった

──小人プロレスは、全日本女子プロレスの興行と共に行なわれていたそうなのですが、小人プロレスとは、女子プロの余興のようなものだったのでしょうか。

「いえ、はじめは小人プロレスがメインだったんです。女子プロもかつては今のような体育館興行ではなく、キャバレーやストリップの幕間で行なわれていました。そこには女子レスラーと小人レスラーのミックスタッグがあったりね。けど、マッハ文朱が出てきて、ビューティ・ペアやクラッシュ・ギャルズが登場し、徐々にメインは女子プロに移っていきました」

──実際に高部さんが観戦されていて、当時のお客さんの反応はどのようなものだったのでしょうか?

「初期の頃は小人レスラーの人数も多く、ものすごい盛り上がりがありましたね。『ドーン』という笑いが起きるんです。けれどだんだんレスラーの数が減ってきて、1対1の形になっていき……。80年代に女子プロがアイドル的な人気を博すようになると、ファンもティーンの女の子が圧倒的だったので、小人の試合になるとトイレなどに立ってしまうようになってしまいました。そうすると小人レスラーのテンションも下がってしまいますよね」

──『笑撃!これが小人プロレスだ』の付録DVDを見ていて、こんなに笑い声が起きていることにビックリしました。もし今、小人プロレスをやったらこんなに笑いが起きるでしょうか。

「やってみないと分からない部分はありますが、笑いそのものの質が変わってきていますし。ただ、当時は子供たちが素直に笑ってましたね。大人になって意識が芽生えてしまうと、なかなか笑えないですよね。『笑っちゃいけないんじゃないか』とかそういう感情が入ってきてしまいますから」

 エンターテイメントとして、少なくないファンを獲得していた小人プロレス。しかし、笑いだけが小人プロレスの魅力だったわけではない。

──女子プロレスラーの長与千種さんが「小人プロレスは技として美しい」と話していましたが、その技術も小人プロレスの魅力のひとつだったんでしょうか?

「とりわけリトル・タイガーという選手は圧倒的なすごさでしたね。ポーンと飛んだ時の高さが違うんです。そしてそのまま技を決める。そういう意味で言えば、女子プロの選手たちもリトル・タイガーの動きに憧れていたっていうのはあるんじゃないでしょうか」

──小人プロレスでは猛練習はもちろん、普通のレスラーとは違った動きというのも求められますよね。

●高部雨市
たかべ・ういち。1950年、東京生まれ。ルポライター。社会の表層から、置き去りにされた人々のルポタージュを描く。著書に『私風俗』『風俗夢譚』『走る生活』など。現在は「日本人とマラソン」をテーマに取材中。

「小人プロレスラーが集まるミーティングの席では、男子プロレスと同じ技を出すと怒られるんですよ。『どうして男子プロレスと同じ技を使うんだ』って。小人にしかできない技をやることが彼らのプライドなんです。自分たちにしかできないプロレスを常に考えていましたね。そして、フェイントをかけて笑いを取るということも含めて彼らの技だったんですね」

──現在では、普通のプロレスでもレフェリーと絡んだりする場面を目にしますが、そのようなコミカルな動きをプロレスに取り入れたのは小人プロレスが最初だったそうですね。今では逆に、プロレスが小人プロレス化しているようにも思えます。

「先日、ターザン山本さんと吉田豪さんとのトークショーイベントにゲストで呼ばれたんですが、ターザンさんもやはり客いじりやレフェリーと絡んだりなど、現代プロレスの小人プロレス化を話していました」

──高部さん自身、小人プロレスの試合の中で一番印象に残っているシーンはどのようなものでしょうか?

「レスラーが相手をロープに投げ出す場面がありますよね。普通、ロープにあたってポーンと跳ね返ってくると誰もが思います。けど、リトル・フランキーは違って、ロープの間にくるりと身体を回転させて戻ってきちゃうんですね。その時はすごい驚きがありました。誰もが思っている『当たり前』をひっくり返した時の感嘆、それはもうゾクゾクと来ますよね」

──まさにエンターテインメントですね。

「そうです。天草海坊主というレスラーがいたんですが、彼は『自分の技に笑って笑って1人くらい死ぬ人がいれば本望』と言っていたんですね」

──プロレスラーというよりも芸人さんの言葉のような(笑)。

「けど、彼らの試合結果はスポーツ紙には決して出ていないんです」
後編へ続く/取材・文=萩原雄太[かもめマシーン])

笑撃! これが小人プロレスだ
小人プロレスの歴史を紐解きながら、小人に対する理不尽な差別や、その差別を生み出す社会のあり方までをも記した一冊。付録のDVDには客席から笑い声が沸き立つ試合の模様も収録している。
発行/現代書館 価格/2,600円(税抜)
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最終更新:2009/04/22 10:05
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