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“ポストジブリ”細田守監督が放つ珠玉のアニメーション『サマーウォーズ』

sw01.jpg(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

 この夏イチ押しの、老若男女が楽しめるアニメーション映画『サマーウォーズ』が8月1日から公開される。

 監督は、2006年に公開された前作『時をかける少女』が、わずか13館の公開から口コミでロングランヒットを記録し、国内外で数々の映画賞を受賞した細田守。あの『ハウルの動く城』を当初進めていた監督で、諸事情で細田版『ハウル』は頓挫してしまい、宮崎監督の作品として再度製作が進められたという経緯がある。そうしたことからも、”ポストジブリ”あるいは”ポスト宮崎駿”として期待されているのが、細田守という人。もし、まだその作品を見たことがない人は、ぜひともこの機会に鑑賞のほどを。

 主人公は、天才的な数学の才能を持ちながらも、内気で人付き合いが苦手な高校2年生の健二(声:神木隆之助)。いまどきの草食系男子の健二は、学校のアイドル的存在で憧れの先輩、篠原夏希(声:桜庭ななみ)に頼まれて、長野県上田市にある彼女の田舎で4日間、彼女のフィアンセの代役を務めることになる。しかし、夏希の実家の陣内(じんのうち)家を訪れた健二を待っていたのは、90歳の曾祖母、栄おばあちゃん(声:富司純子)を筆頭にした、個性豊かな30人近いご親戚の面々。両親は仕事で留守がちで、家族団らんをあまり経験したことがない現代っ子の健二は、にぎやかな陣内家に圧倒されつつも、次第に打ち解けていく。しかし、そんな時、世界中に普及したネット上の仮想空間「OZ(オズ)」のシステムトラブルが発生、その波紋が現実社会を直撃する。ふとしたことから事態に巻き込まれてしまった健二は、陣内家の面々とともに、その事件に立ち向かっていく。

sw02.jpgすでに試写を見た関係者やマスコミから、
前作に劣らぬ高い評価を受けている。
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

 これからの時期、お盆などで田舎の実家へ帰省する人も多いだろうが、この映画では、そんな日本の夏の風物詩ともいえる家族・親戚が一堂に会する姿を描いている。ここまで大人数は珍しいかもしれないが、例えばおせっかいな親戚のおじさんや台所に集まっておしゃべりに花を咲かせるおばさんたち、家中を走り回る小さな甥っ子、姪っ子など、多かれ少なかれ「こういうのうちにもある」と思って見てしまう部分が多いはず。

 そして、そこに加わるのがネット上の仮想空間で起こった事件。パソコンや携帯電話などから誰もがアクセスできる「OZ」の中では、各キャラクターが自身の分身である「アバター」を使って自由に動き回り、格闘ゲームを利用したアクションシーンも展開。家族ドラマに加えて、アクション映画としての側面も発揮する。現実世界で人間がありえないアクションをするよりも、ネット上で行われているというところが、これまた逆に現実的で、いまやどの家庭にも当たり前に存在するネットやゲームという存在をうまく取り込んでいる。ネットを否定するのではなく、ネットを介して家族がひとつにまとまっていく姿が、爽快に描かれていく。

 キャラクターデザインは大ヒット中の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』で知られる貞本義行が担当。線の細いシンプルな貞本のキャラ造形に、あえて凝った影などをつけないことで、アニメアニメした艶を消し、ジブリ作品などで知られる美術監督・武重洋二が手がける緻密で美しい背景美術が加わることで、アニメ初心者でも違和感なく見られる工夫もされている。

 夏希に手を握られた健二が顔を真っ赤にしたり、鼻血を出したりという古典的な演出も笑いを誘う。『ヱヴァンゲリヲン』のヒットや、30周年で盛り上がる『機動戦士ガンダム』など、アニメが一部のファンだけのものではなくなっているとはいえ、それでもまだ「アニメはオタクの見るもの」あるいは「ジブリだったら見るけど、それ以外は興味ない」という認識を持った人も少なくないと思うが、そうした人にこそ見てほしい一作だ。
eiga.com編集部・浅香義明)

『サマーウォーズ』
『サマーウォーズ』細田守監督、神木隆之介&桜庭ななみ インタビュー
『サマーウォーズ』映画評

ハウルの動く城

細田版、切望です。

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最終更新:2009/07/31 08:00
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