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「デジタルライフ推進協会」発足レポート

アナログ停波期限まであと1年半! 「放置状態」の地デジ問題にどう切り込む!?

digilife0202.jpg左から細野氏(アイ・オー社長)、牧氏(メルコ社長)、田浦氏(デジオン社長)。
牧氏と細野氏が並び立つのは過去25年で初めてのことで、
業界的には「馬場と猪木がタッグを組んだようなもの」(専門誌記者)とのこと。

 2011年7月24日の地上デジタル放送完全移行が近づくにつれ、これを問題視する声が強くなってきている。いくら”地デジカ”がかわいかったとしても、それで全国の共同住宅すべてがアナログ停波に備えられるわけではない。

 もし地デジ対応工事が間に合わず、対応テレビやHDDレコーダー、チューナーを購入できないままにアナログ停波期限を迎えた場合、何も映らなくなったアナログテレビを捨てる「テレビ棄民」が日本中に溢れ返るかもしれない。

 無料であるはずの地上デジタル放送を見るのにB-CASカードが必要な件についても、独占禁止法に抵触するとの指摘もあった。B-CASカードのユーザー登録制度が今年3月に廃止されることが決まったが、これは仕様変更への布石とみられ、今後はチップかソフトウェアといった目に見えにくい形に姿を変えることで批判を避けつつ、中間利益を得る(?)業務形態に移行するのではないかとの批判も上がっている。

 いくつもの問題を抱えたまま、なしくずし的に地デジへと移行していく日本の放送事業。この状態を看過できないと、アナログ停波期限をおよそ1年半後に控えた2月1日、PC周辺機器関連の3社(株式会社メルコホールディングス、株式会社アイ・オー・データ機器、株式会社デジオン)が一般社団法人「デジタルライフ推進協会」を設立、東京・大手町で会見を行った。

 事業目的は、たとえばホームサーバ、地デジチューナー、メディアプレーヤー、ネットワークオーディオなど、近年新しく登場したデジタル機器を活用する生活様式をデジタルライフと名づけ、普及、啓発することにある。消費者の利便性を守るべく、業界内にさまざまな提言を行っていく趣旨のようだ。

 地デジへの移行をスムースに促すことだけが事業目的ではないが、同協会が想定する「デジタルライフ」を実現するには、地デジにまつわる問題への提言も欠かせないものになる。

 同協会初代会長に就任したメルコの牧誠社長は設立発表会見に登壇し、「著作権者の保護は当然のことながら、ユーザーが(デジタル機器を)使いやすい社会を作るために、我々の要望を出していきたい」と目標を掲げた。

 これに対して、メルコとは永遠のライバルであるアイ・オーの細野昭雄社長(同協会初代理事)は「現行のデジタルチューナーは、私たち(PC関連企業)から見ると、どう作っていいか分からないところがある」と、家電メーカーが主導した仕組みの閉鎖性を指摘した。デジタルチューナーや地デジ対応テレビを核にした視聴生活を送るなら、ホームネットワークを構成するための拡張性が欲しいところだが、クローズドなシステムになっている現行のデジタルチューナーは、そうしたネットワークに組み込みにくい、というのである。

 デジオンの田浦寿敏社長(同協会初代理事)は、日本の家電メーカーがこのままクローズドな独自規格を推し進めていくと、世界市場から浮き上がる可能性があることに言及する。

「いままでワールドワイドなマーケットがあったのはアメリカと日本。これから中国も出てくるが、そのなかでプレーヤーに関しては日本が強く、独自のOSやミドルウェア、UIを作ってきた。しかしほかの国はもっとオープンなものを作っている。いま、日本のメーカーがそこに踏み込みにくいという意味で、ガラパゴス化するかもしれない」

 地デジの問題点を問われた牧会長は、「基本的に規格がネットワークを重要視していない。メディアに焼いて機器に持っていくことがコンセプトになっている。サーバに蓄えてネットワークで配信するとか、再生スピードや画像の解像度を変えてPCやiPodで観られるようにしていくときに障害がある」と答えた。さらにキャプチャーボードを例に挙げ「アナログ時代と比べて制約が多い」と、PC周辺機器メーカーが、手足を縛られた現状にあることを報告。アナログ時代に自由にできていたことがデジタル時代に入ってもできないといけない、日本だけが出遅れるという危機感がある、と訴えた。

「画質は世界最先端にありながら環境に縛られている。今後は海外でもハイビジョンの放送が始まり、キャッチアップしてくる。日本がダメになるという不安、不満が基本にある」(牧会長)

 売れ行き自体は好調の地デジ対応テレビも、PC接続率は10%未満。ユーザーに与えられている情報が少ないために、ホームネットワークにつなげることができないのだと、細野理事は言う。

「あまりにも決まっていないことが多いうえに放置状態。いままでの各団体では、ユーザーの感覚を取り入れた話をあまり聞かない」(細野理事)

 しかし、敵対、対立するのではなく、だからこそ既存の団体とより密に連携しないといけないのだと付け加えることも、細野理事は忘れなかった。いままでPC周辺機器各社が個別に行なっていた提言は、地デジを推進する既存団体には取り合ってもらえなかったという。だが今回、社団法人としてまとまったことで発言力が増し、提言が届くのではないかという期待がある。

 最終的には、いままでの「アナログライフ」でできていた録画、録音、移動、複製、視聴が、地デジ移行時に「デジタルライフ」でも同様にできるようにすることが目標だ。

 いわば「デジタルの現場」から上がった声が、地デジ移行政策の軟着陸に影響を与えることができるのか。今後1年半の活動が見ものである。
(取材・文・写真=後藤勝)

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最終更新:2010/02/03 18:00
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