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アジア・ポップカルチャーNOW!【vol.8】

メイド・イン・ジャパンに憧れて…… 香港の文学系コミック作家・智海

chihoi01.jpg「Sea」(2006) ©Chihoi

 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』……子どもの頃、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。

第8回
コミック・アーティスト

智海(チーホイ)

 智海(チーホイ)は、香港随一の「文学系コミック作家」だ。実際の文学作品をモチーフにすることも多く、その静謐なタッチはフランスやイタリアで受け入れられ、今では台湾、中国本土にも人気が広がっている。哲学者のカントと誕生日が同じなのが自慢(?)のチーホイだが、子どもの頃は、思いっきり「メイド・イン・ジャパン」に囲まれて過ごしたのだという。

yata.jpg『ヤッターマン 1』(松竹)

「うちでは、扇風機やオーブン、掃除機まで、みんな『National』。母親は、昔から”家電といえばNationalよ!”って。日本製は、質が良くて、長持ちだって、みんなが信じてた。日本のモノって、そんな感じで、ずっと僕たちの身近にあったんです」

 身近なのは、家電だけではなかった。1980年代、他の香港の子どもたち同様、幼いチーホイは、毎日テレビのアニメ番組を見て過ごした。

「まずは『ヤッターマン (広東語のタイトル:小雙俠)』『ドラえもん』『六神合体ゴッドマーズ (六神合體)』『ユニクロン (宇宙大帝)』『1000年女王 (千年女王)』。そうそう『魔法の天使クリィミーマミ (我係小忌廉)』に、あとそれから……」

 と、日本アニメ三昧の日々。

fafa099wps.jpg「Fa Fa World」
(2009) ©Chihoi
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「全部日本製だと気づいたのは大人になってから。でも、子どもは、どこ製のアニメか、なんて気にしないでしょう」

「いい時代でした。今でもすごく懐かしい。あの頃は、いつも、宮崎駿の『未来少年コナン』の主人公になれたら、と、夢想してました」

 そんな時代に対する思いが、『花花世界(ファーファーの世界)』という、最近の作品にも現れている。花花(ファーファー)という小さな女の子が主人公の、チーホイの作風には珍しい、ほのぼの系四コママンガだ。08年に新聞で連載されるや、これまでチーホイの作品を知らなかった人たちも含め、たくさんの読者から反響があったという。花花は、今、香港で最も愛されているキャラクターだ。

 チーホイの「日本観」はもう少し続く。

「日本人は、みんなが熱心に働いている、というイメージ。すごく集中力があるから、他のことに気を取られない。集中力を保つためには、心を静めることも必要だし、時間もかけなくては。日本の芸術は、そうした、静謐さ、正確さ、注意深さ、繊細さに対するクオリティやメンタリティを表したものだと思う。そこにとても憧れます」

 チーホイが敬愛するアーティストは、「竹久夢二、棟方志功、橫尾忠則、橫山裕一(今一番欲しいのが、横山さんのTシャツ!)、辻直之。あとそれから……」

train_sample2s.jpg stilllife_papas.jpg左:「The Train」(2007)/右:「Papa(爸爸) from Still Life」 (2003) ©Chihoi
<クリックすると拡大されます>

 最近、ドイツのおもちゃ工場の依頼で、花花をキャラクターにしたヴィンテージ・トイ(スライド・ビューTV)を作った。代表作『Still Life(黙示録)』の改訂版や、『花花世界』の簡体字版の発行が決まっているし、友人のライターの本の挿絵も頼まれている。2011年の1月に、フランスのアングレーム国際コミック・フェスティバルで「香港展」が開かれるのに併せ、同年末まで開催される、グループ展へも招待された。

「全てがハイスピードで進む香港で活動していると、集中するということがとても難しい。いろんな情報が入って来て、つい散漫になる。今、自分を集中モードに持っていく必要を感じています。日本スタイルを倣ってね」
(取材・文=中西多香[ASHU])

Chihoi_portrait.jpg
チーホイ(智海/CHIHOI)
1977年、哲学者イマヌエル・カントと同じ日に香港に生まれ、長じてはフランツ・カフカをこよなく愛する(いわく「彼は人間の創造性の究極の源だ」)。文学的とも評される作風により、香港のインディペンデント・シーンにとどまらずアジア各国からヨーロッパへと人気が広がっている。主な作品集に、地元香港で出版された『黙示録(Still Life)』(03)、愛らしい四コママンガ集『花花世界』(09)『花花世界2』(10)、台湾で出版された鴻鴻との共著『灰掐(The Train)』(07)、そのイタリア語
『Il Treno』(08)、スイスで出版されたフランス語の『A L’Horizon』(08)などがある。
<http://www.chihoi.net/>
『花花世界(ファーファーの世界)』(2009年 Joint Publishing刊)
<http://www.ashu-nk.com/ASHU/shop2_Joint.html>

なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>

ヤッターマン 1

ポチッとな。

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最終更新:2012/04/08 23:20

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