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"噂の女"神林広恵のナイショの一説

「紙がない!」製紙工場被災と広告激減で出版界大倒産時代が来る!?

toyokeizaishinsaigo.jpg「東洋経済」3月26日号

伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ギョーカイの内部情報を拾い上げ、磨きをかけた秘話&提言。

 東北・関東大震災は出版界にも大きな爪あとを残した。

 まずは相次ぐイベントの中止だ。マガジンハウスは「ターザン」の創刊25周年パーティを、光文社での「日本ミステリー文学大賞」贈呈式をそれぞれ中止し、「ダ・ヴィンチ電子書籍アワード」受賞式も延期されるなど、自粛ムード一色だ。

 だが、それ以上に出版業界の実情は深刻だ。最初に問題となったのが流通だった。震災直後の輸送燃料の不足や道路状況の悪化などのため、3月16日発売の「週刊文春」(文藝春秋)、「週刊新潮」(新潮社)などが17日発売にずれ込んだ。雑誌はすでに刷られていたという。その後の19日まで、取次は1日1回行ってきた配送を隔日にした。またアマゾンジャパンでは、東北地方からの注文受け付けを中止し、他地域での配送も大幅に遅れている模様だ。

 さらに深刻なのが紙不足だ。出版業界の印刷用紙の約4割を供給していた宮城県の日本製紙石巻工場と青森県の三菱製紙八戸工場が被災してしまったからだ。

「このため震災後、各社紙の確保には必死のようです。『週刊朝日』(朝日新聞出版)はしばらく変則発売日になり、また震災に関係のない書籍の発売を半年以上も遅らせたり、別冊企画は延期するなどの処置を取る出版社も出ています」(前出関係者)

 日本雑誌協会によれば計191誌もの雑誌が発行休止、または発行を延期するという。

「今回の震災の影響で最も不足しているのは女性誌などに使われている、光沢のあるコート紙です。女性誌の中には紙の質を変えるといった対策をとっていますが、海外高級ブランドは自社宣伝にこのコート紙を使用することに拘る所も多い。そのため発売を順延するなどの対策に必死です」(出版事情に詳しい関係者)

 震災がなくとも出版業界には不況の嵐が吹き荒れていたが、今回の震災はさらに深刻な事態を招くのではと囁かれているのだ。

「問題は半年後でしょう。現在は印刷所や他製紙会社からのストックをかき集めていますが、それが確保できるのも今後半年と見られています。そうなれば中小を中心に出版社の倒産が相次ぐのではないか」(中堅出版関係者)

 それだけではない。今回の震災で経済全体の打撃から、企業広告の激減さえ容易に予測される。何重にも折り重なる苦難が待ち受けているといえるのだ。

 こうした状況は、原発事故でさらに拍車をかけている。それが相次ぐ作家や漫画家の東京脱出だ。

「彼らは東京にいなくてもしばらくは仕事ができますからね。現在のところ一時的避難でしょうが、これが長期化すると出版社も文芸や漫画部門などの機能を地方に移すことも検討しなくてはならない。小学館などは『松本零士先生と高橋留美子先生が移住すれば、その場所に本社を移す(苦笑)』なんて笑い話まで出ている」(小学館関係者)

 今回の震災を機に、電子書籍化の波が早まるのでは、との声も聞かれる。だが、こんな時だからこそ、テレビでは映さない紙媒体での秘話や写真を渇望する読者も多いのだ。

 出版界でも週刊誌を中心に記者たちの必死の取材は続いている。彼らの活躍の場を死守すべく、出版界も正念場を迎えている。
(文=神林広恵)

週刊 東洋経済 2011年 3/26号

各誌、震災特集に取り組む。

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最終更新:2013/09/24 15:53
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