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【現地中国人記者の激白 第二弾】鉄道事故は第二の天安門事件に発展する!?

china_masukomi.jpg中国のすべてのメディアは今、6月から内陸部
で続いている大雨の記事をトップに報じてい
る。列車事故はなかったかのようである
(写真のサイトと記事中の記者とは直接関連
ありません)。

 中国高速鉄道事故の政府対応に不満を抱く民衆とメディアの怒りが飽和状態に達している中国で、いよいよ本格的な言論統制が開始されている。7月30日を境に大手全国紙は新華社通信の記事一色に塗り替わり、高速鉄道事故の情報は中国の紙面上からは完全に抹殺された状態だ。

 筆者は前回、ある共産党系メディアの担当者に電話インタビューを行い、「ここ数年の共産党指導部は以前のように露骨な言論統制はしにくくなっている。これは中国の変化だ」とのコメントを取っていた(記事参照)。今回の動きはその直後に起きた、いわば「変化の中の変化」と言えそうだ。今回は、政府に批判的な独自報道が多いある中国タブロイド紙の記者と接触し、報道規制がなされている社内の様子や現場の記者たちの声を聞いた。(聞き手=浮島さとし/フリーライター)

――強行な報道規制が始まったと日本では報じられています。

「もともと北京の宣伝部から鉄道事故についてはあまり報じないようにという『要請』は来てはいましたが、29日の終わりごろに急激に強化され、30日に紙面から完全に消えた状態です」

――「要請」は具体的にどういう形で現場に届くのですか。

「『要請』というのは事実上の『命令』なんですが、通常は政府の宣伝部の人間から社の上層部に文書や電話がきて、そこからデスクを通して現場の取材陣に降りてきます。また、記者が事故車両や遺体などの悲惨な写真を撮影して帰ってきても、政府から『この写真を使うように』と送られてくれば、それは『これ以外の写真は使うな』という規制を意味することになります」

――上層部やデスクからはどんな言い方をされるのですか。

「たとえば、紙面を組んでいる最中にデスクがやってきて、『今回はこの記事に差し替えよう』と、全然関係ない事件を持ってきたりします。そうなると、『あ、圧力がきたな』と察するわけです。先日、日本の地下鉄でエレベーターの事故(注:7月26日に東京メトロ平和台駅で起きた落下事故)がありましたよね? この間はその記事に差し替えられましたよ。日本のエレベーターの事故なんて今の中国になんの関係もないんですけどね」

――そのような諸々の規制を受けて、現場の記者たちはどういう反応なのでしょう。

「そりゃあ、冗談じゃないとみんな思っていますよ。なにしろ今回の事故の諸悪の根源は汚職にまみれた鉄道部とそれに起因する欠陥工事であることは明らかです。民衆の命もないがしろにされている。私は今回、鉄道部のAさん(仮名)という技術者から現地で話を聞くことができましたが、『安全面がおざなりのままに作られてしまい、非常に懸念していた』と、開発当事者がそう証言しているんですからね。それを現場で記者は聞いているわけですから」

――現場の記者たちの間には不満が鬱積している状況であると。

「記者だけでなく、デスクも含めて現場は怒りが充満しています。取材しても載せられないし、遺族の悲しみも現場で目の当たりにしている。その怒りの一部が、ネットの掲示板や微博(中国のTwitter)などへぶつけられるわけです」

――ネットへは一般民衆だけでなく、プロの記者たちも書き込んでいるのですか。

「そうです。現場の記者は詳しい情報を持っているのにどこにも出せず、怒りもたまっているわけですから。書き込まれている内容を見れば『これは記者だな』と分かります。それを読んだ民衆の怒りがさらに増幅しているという状況です」

――政府に対しての怒りはもちろんですが、社の上層部に対して不満はありますか。

「まぁ、彼ら自身も忸怩たる思いなんでしょうが、年齢が高くなって上層部になるほど保身に走るのは仕方ない。今クビになったら生活できませんから。それをするなら、フリーでやっていく覚悟を持つしかない」

――中国のフリー記者はどういう活動をしているのですか。

「ネットに書き込みを続けている人間もいますが、それだと経済的な担保がありませんので、香港へ移って向こうのメディアに書き続けるという人間もいます。それだともう、記者というよりは運動家に近いですね」

――事態の今度の見通しをどう捉えていますか?

「中国は今までも『飴とムチ』で国を運営してきましたが、今回も賠償金という飴で幕引きを図ることになるかもしれません。ただ、実際のところは誰もわかりません。民衆の怒りが収まるのか、爆発するのか、他の民族運動にまで波及するのか。政府も我々メディアも読めていません」

――民衆の怒りが収まらず、第二の天安門事件に進展する可能性も?

「それはありえるでしょう。というのも、高速鉄道は鉄道部の管轄ですが、交通網というのは軍事に密接に関連するため、実は鉄道部も軍部の影響下にある組織なのです。軍には強硬派と言われる人間も多いですし、実際に天安門事件のときに弾圧に携わった人間が今も役職についています。そういう勢力が無理やり抑えつければ同じことが起こる可能性は十分ある。ただ、共産党中枢の人間たちは懐柔策を使いながら乗り切ろうと考えている。中国政府も意見は一つではないですから、政府の中でも対応策は分かれています。それにより結果は変わってくるでしょう」

――先行きは本当に不透明ということでしょうか。

「正直、どうなるか本当に分かりません。ただ、取材現場で記者たちがよく話しているのは、仮に今回うまく幕引きを図ったとしても、近い将来に同じことが起こるだろうと。当然でしょう、事故原因が究明されていないのだから、安全面の問題は何も解決していない。中国の高速鉄道は大きな火種を抱えたまま、これからも走り続ける。問題が先送りにされるだけだということです」

天安門のパンドラ

日本も似たようなもんですけど。

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最終更新:2013/09/11 21:01
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