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SNSと宗教の密接なカンケイ【2】

上祐史浩×濱野智史×佐藤健寿──”大宗教時代”の終焉と教義のカタチ

──宗教団体「ひかりの輪」の上祐史浩代表は、新しい宗教団体の形を模索する中で、ブログやミクシィ、Facebook、そしてツイッターといったSNSにより情報を発信している。では、SNSは宗教団体にとって”福音”となり得るのだろうか? また、そこに盲点はないのだろうか? 

1110_jyouyu_n.jpg「ひかりの輪」代表・上祐史浩氏
(撮影/佃太平)

 日本を震撼させた地下鉄サリン事件から今年で16年──。オウム真理教の顔として連日メディアを賑わせた上祐史浩氏は、教祖である麻原彰晃(本名・松本智津夫)の死刑判決の翌年に「ひかりの輪」を設立。事件の被害者賠償をという責務を背負いながら団体を運営しているが、それにはSNSはかかせないようだ。ここでは、上祐氏、情報環境研究者・濱野智史氏、オカルトニュースサイト「X51・ORG」を主宰するフォトジャーナリスト佐藤健寿氏と共に、宗教的、社会学的、オカルト的な視点から見た”宗教とSNS”の関係を見ていこう。



──「ひかりの輪」では現在、上祐さんが中心となってミクシィ、Facebook、ツイッターなどを通して情報発信をされています。オウム真理教在籍時と比べて、SNSを使うことで団体としての活動に変化はありましたか?

上祐 当時と比較して、会員やシンパの人とのやりとりの頻度が、圧倒的に高くなりましたね。これまで、会員との接点といえば、月に一度の説法会で面談をしたり質問を受けたり……という程度でした。しかし、ミクシィなどを利用すると、毎日のように熱心にメッセージをくれる人もいて、接触密度が格段に上がりました。我々はオウム真理教の反省に基づいて、閉鎖的な教団ではなくて、徹底的に開かれた教団を展開するしかないという考えで活動しています。そうした理念と、SNSがマッチしたんだと思います。

濱野 ここ数年”ダダ漏れ”というキーワードがツイッター、USTREAMなどのソーシャルメディア界隈でよく使われています。しかし、ダダ漏れが作るある種のリアリティというものは、カリスマを志向するタイプの宗教には向かないのではないでしょうか?

上祐 教祖にどう見ても神的な要素があるならばともかく、神秘性を演出している場合には、向かないでしょう。(江戸時代以降に設立された)新興宗教であれ、(1970年代以降に設立された)新新宗教であれ、従来型の宗教の多くは、教団・教祖の隠蔽性・閉鎖性に特徴があり、「外の人にはわからなくて、中の人はわかる」という形でカリスマ性を高めてきました。例えば、某団体の教祖が頻繁に社会に触れると、人間臭いところが出てきてしまい、神秘性を演出するのが難しくなってくる。そういうタイプの宗教にとって、都合の悪いツールだといえます。

濱野 でも、逆にダダ漏れだからこそ伝わる魅力もあるわけですよね。上祐さんの名前を検索すると、「探偵ファイル」というニュースサイトがヒットします。上祐さんを応援するオフ会のレポート記事で、応援キーホルダーを渡されて苦笑している写真が載っているんですが、これを見ると上祐さんのイメージが変わるんです。素の上祐さんの姿に萌えちゃうんですよね(笑)。

上祐 最近は、黒田勇樹さんのトークショーにも出演して、何かわからないうちにアドリブ芝居に巻き込まれたりもしました(笑)。80年代末~90年代半ばにかけて起こったオウム真理教事件以降、宗教家にとっては厳しい時代になりましたが、「ひかりの輪」の場合、オウム事件があったため、各地に拠点を設けるなど、従来型の布教活動ができません。そういう事情から、必然的に流れ着いたのが、ネットの世界だったんです。

──「ネットを通して実際の宗教体験はできない」という話もあります。

上祐 それはそうだと思います。直接に接触したときに交換するものと、ネットを通じて交換するものには、違う部分が多い。しかし、少しずつですが、そのギャップも解消されてきていると思います。例えば、メールの時代は文字だけのやりとりだったけれど、USTREAMやYouTubeを使うことでだんだんと視聴覚情報が伝わるようになった。そうすると中継を見ている人にも、なんとなくフィーリングが伝わっていく。

 もともと宗教は、仏像や仏画を見たり真言を唱えたりと、象徴物によって神聖な意識を生じさせる一面があります。つまり、芸術やメディアを通して生きてきた部分があります。

佐藤 メディアの語源がそもそも霊媒を意味する”メディウム”ですよね。霊媒や宗教の起源が神や高次の意識とのテレコミュニケーションなのだとすると、現代のネットやテレビと霊媒的なものは実は直線的につながるものなのだと思います。

上祐 喩えとして良いかはわかりませんが、霊媒師がチャネリングをするために、「その人の写真をください」と言うでしょう。写真という限定的なメディアで十分ならば、ネット動画のような、よりクリアな視聴覚情報は十分優れた媒体になるとも考えられるのではないでしょうか。

佐藤 上祐さんが今言ったことは、英会話教室をはじめ、宗教に限らずさまざまなジャンルで起こっている話ですよね。地下鉄サリン事件が起きた95年は、Windows95が発売され、インターネットが本格的に広まった年でもあります。オカルトの世界でもひとつの節目になっていて、アメリカが「宇宙人解剖フィルム」を公開し、UFO事件がテレビを最後に賑わせたのもこの年です。そして、その解剖フィルムをもって、オカルトが終わったという言説もある。インターネットの普及を通じて、あらゆるものがオープンにならざるを得なくなったんです。

 例えば、あるカルト的な宗教があったとして、95年以前だったら本などを通して閉鎖的な環境で情報を与え、信者をマインドコントロールする古典的な方法が通じたと思うんです。しかし今は、多くの人が2ちゃんねるやツイッターで情報を収集するようになって、どんな思想であれ多面的な判断要素に晒されることになる。良し悪しの問題ではなく、あらゆるものがオープンな形でしか存在できない時代になったのだと思います。

■ツイッターがもたらすいわれなき誹謗中傷

1110_hikarinowa.jpg上祐氏が代表を務める「ひかりの輪」では、ブログや動画配信、
Facebookなど、さまざまなサービスを使っている。

濱野 おっしゃる通り、特に日本ではオウム事件の影響が非常に大きいと思います。オウム以降、(オ)カルト的なもの──クローズドであるからこその魅力──は一切許されない世の中になった。オープン化といえば企業のコンプライアンス遵守などもそうで、やたらと透明性が求められる世の中になったと誰もが思っている。インターネットが出てきて、何もかもがダダ漏れし、すぐ監視される状況では、原理的にクローズドなものは生き残ることができず、オープンな状況で人を引きつける魅力を出すしかなくなってしまっている。これは宗教に限らず、社会全般に通じることですね。

 一方、先月号のサイゾーに掲載されていた苫米地英人氏の対談記事で、「ツイッターは宗教というよりも、かつての魔女狩りに近い」という記述があって、うなずけました。皆が「こいつは×××だ」と言い出すと、3人くらいが勝手にリツイートして、それが既成事実になってしまう。オープンなコミュニケーションがそのままカルト的に機能してしまう危険性もまたあるのだ、というわけです。実際にはツイッターに自浄効果もあるので、何もかもが誤りではないのですが。

上祐 そもそも、苫米地さんのように元々評判の良い人は傷つくかもしれませんが、私などはこういう立場ですから、魔女狩りの対象になっても失うものはありません(笑)。そして、魔女狩りに参加しない人もいるわけだし、耐える気持ちがあればいいだけです。

濱野 ソーシャルメディア時代の悟りを感じさせるご発言です(笑)。

 さて、もともと宗教には、日常性と非日常性の境界を定め、日常性とは隔離された超越的な領域を作る、という原理的な機能があったと思います。しかし今、普通の人たちが使っているSNSは、”超スーパー日常生活”の延長線上でしかない。SNSを使って非日常性が表れることはほとんどなくて、基本的に友達と毎日、だらだらとコミュニケーションをするためのツールに過ぎない。上祐さんだったらシンパの人たちや信者の皆さんからの質問に淡々と答えたりするわけですが、そこではなかなか非日常的なことは起きませんよね。SNSは確かに便利だけど、原理的には宗教的なものとの相性は良くない気がするのですが。

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最終更新:2013/09/11 13:04
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