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バンダイ・エンタテインメントがソフト事業から撤退!

「”ヒドイ画質と翻訳”のほうが大人気」アメリカの日本アニメ市場に何が起きているのか?

bandaienta.jpg米国法人バンダイ・エンタテインメント
公式サイトより

 今月初め、バンダイナムコグループの米国法人「バンダイ・エンタテインメント」がソフト・マンガの販売事業から撤退することが明らかになり、アニメ業界で大きな話題となった。今後、同社はライセンス販売と管理を事業の柱としていく方針だという。アメリカで日本のアニメDVDの売り上げが芳しくないのは半ば常識だが、『攻殻機動隊』や『涼宮ハルヒ』シリーズなどのヒット作を抱える同社でもソフト販売事業から撤退しなければならないとは驚きだ。いったい、アメリカでは何が起こっているのか?

 アメリカのアニメ市場でまず特徴的なのは、ソフトに対するニーズである。日本では、テレビ放映されたアニメが1話、あるいは2話分収録された5,000~6,000円するDVDを”しようがなく”購入している面もあるが、アメリカは事情が違う。3話程度収録されたDVDは1本あたり3,000~4,000円程度。さらに、しばらく待てば同価格帯でシリーズ全話が収録されたボックスセットが発売される。日本貿易振興機構(ジェトロ)が2010年に行った調査でも、「1巻ずつ購入するよりも全巻まとめて安く買える」という理由でニーズが高いことは明らかになっている。

 さらに、アニメのユーザーのスタンスも大きな違いがある。日本でも顕著になりつつあることだが、「カネを出すから良質なもの」を求める層と「安く(あるいはタダで)見られるのならば質は問わない」という層が存在し、後者は徐々に拡大しつつある。その象徴ともいうべきものが、「クランチロール(Crunchyroll)」や「フールー(HULU)」に代表されるストリーミングサービス(いわば、著作権処理をクリアした合法的なファンサブ)の拡大だ。

 こうしたストリーミングサービスでは、日本で放映されたテレビアニメが、ほぼ時間差なく配信されるようになっている。もちろん、画質は荒いし、何よりも翻訳の質は最悪だ。だが、翻訳の質よりも、”早く見ることができる”ほうがニーズがあるのが現状。そして、ソフト化の際にも翻訳を改善することなどせず、そのまま流用している。それでも多くのユーザーのニーズを満たすことができているのだ。結果、まず干上がりかけているのはアニメの翻訳家たちだ。

 そうした現状を、翻訳家の兼光ダニエル真氏は語る。

「アメリカでも一流といわれる知人のアニメ翻訳のプロが、最近は翻訳よりもソフト化の際の字幕つけの仕事のほうが多くなってしまったと嘆いています。翻訳家が他人の、それも質の悪い翻訳の字幕をつけるなんて屈辱的ですが、それしか仕事がなくなっているんです」

 ストリーミングサービスの利点は配信が早いことに次いで、多くのサービスが無料で利用できることにある。多くのサービスでは有料会員に登録すれば高画質の動画を視聴できるが、”質”よりも”無料”であることが重きを置かれている印象を受ける。アニメがアメリカでブレークした2000年以降、多くのユーザーが質の悪い翻訳と画質を受容してしまっている現状はいかがなものだろうか。

■アニメの配信・流通の主導権を確保が課題に

 ストリーミングサービスはなぜ、ここまで急成長できたのか。その背景にはストリーミングサービスの戦略と、日本側のニーズの一致があった。かつては、「アメリカで行われている日本アニメの配信サイト=違法」というイメージがあったが、今ではかつてのファンサブから合法的なストリーミングサービスへの転換が行われている。その理由は簡単だ。日本のアニメ会社などの権利者は、違法なアップロードを行わせないために、クランチロールやフールーのような配信サービスと契約を結んでいるのだ。彼らがアメリカ国内の違法なアップロードなどに対しても対処してくれるので、日本側もありがたい。しかし当たり前だが、このシステムでは日本側の利益は減ってしまう。

「これから求められるのは、日本国内で海外に提供できる高品質な翻訳と画質のストリーミングサービスを行うことでしょう。配信の主導権を日本側が握って利益を確保することが求められています。また、そうしたサービスによって、現状のストリーミングサービスで満足しているユーザーを取り込むこともできると思います。もちろん、価格面も含めてローカライズ、あるいは現地法人との提携もありえますが、配信・流通の管理に至るまで日本側が主導権を得る方向に向かわなければならないでしょう」(前出・兼光氏)

 前出のジェトロの調査でも、アメリカのユーザーが質の悪いもので満足しているのではなく「インターネットで情報が入手できるので(ソフト化まで)待ちきれない」ことが、ストリーミングサービスのニーズを高めていることがうかがい知れる。

 まだ海外には開拓できる未知の市場がある。求められるのは、日本がアニメコンテンツの生産拠点となるのではなく、世界での流通経路まで含めて管理する主導権を握ること。「良質」のアニメコンテンツ製作で満足する時代はもう終わった。
(取材・文=昼間たかし)

もっとわかるアニメビジネス

もっと勉強しないとね。

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最終更新:2013/09/09 18:40
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