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元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第122回

サムスンの躍進を止められるか!? 落日パナソニックに迫られる刷新の時

motoki0123.jpg「週刊文春」1月26日号より

第2位
「衝撃スクープ 金正男 独占告白!『金正恩、わが宿命の弟よ』」(「週刊文春」1月26日号)

第2位
「落日パナソニック」(「週刊東洋経済」1月28日号)

第3位
「M8M9大地震 そのとき最悪の場所にいても『生き延びる』方法を教えます」(「週刊現代」2月4日号)

 この原稿を書く朝は、その日発売される週刊誌の新聞広告のタイトルを、ワイドの一本一本まですべて見て、あらかじめこれはと思う記事を絞っておく。

 だが実際に読んでみると、羊頭狗肉の記事だったりすることもある。また、予期しなかった記事が面白くて読み耽ってしまうことがある。

 今週でいえば、「東洋経済」は「暴力団対策と企業」という特集が読みたくて買ったのだが、パナソニックの記事が面白くて全20ページを一気に読み通した。

 これについてはあとで触れるが、まずは「現代」の地震の記事から。

 今朝(1月23日)の読売新聞1面にこんな記事が載った。

「マグニチュード(M)7級の首都直下地震が今後4年以内に約70%の確率で発生するという試算を、東京大学地震研究所の研究チームがまとめた。(中略)昨年3月11日の東日本大震災をきっかけに、首都圏では地震活動が活発化。気象庁の観測によると12月までにM3~6の地震が平均で1日当たり1.48回発生しており、震災前の約5倍に上っている。同研究所の平田直(なおし)教授らは、この地震活動に着目。マグニチュードが1上がるごとに、地震の発生頻度が10分の1になるという地震学の経験則を活用し、今後起こりうるM7の発生確率を計算した」

 先日、政府の地震調査研究推進本部が発表した「首都直下を含む南関東の地震の発生確率は30年以内に70%程度」と比べて、はるかに早く大地震が起こると予測している。

 このところ「現代」ばかりでなく、サンデー毎日「覚悟すべき巨大地震と本当の備え」、週刊文春「『M8M9大地震予知』を一挙公開」、プレイボーイ「四連巨大地震急接近中!」と、各誌取り上げだした。

 いつかは必ず来る首都圏直下型大地震。もはや悠長に構えている場合ではないのかもしれない。

 「現代」はモノクログラビアで、日本列島が「地震の巣」と化していると図解している。気象庁は、この1年間に発生した震度1以上の地震は9,723回で、前年の7.4倍にもなっていると発表した。

 京都大学防災研究所・地震予知研究センターの遠田晋次准教授はこう語っている。

「3.11以降、地震に対しもっとも注意すべき地域は、首都圏だと思っています」

 M9という日本史上最大級の地震により、大陸間プレートや断層が押し合う力に変化が生まれ、以前よりも地殻のストレスが増してしまった場所がある。

 首都直下は1855年の「安政江戸地震」以来およそ150年起きていないが、3.11の地震の影響で再発時期が早まっている可能性があるというのである。危険度は震災前に比べて2~3倍に増したという。

 大地震の激しい揺れをどこで迎えるのかは生死にかかわるが、そればっかりは選べない。地下鉄、高層ビルで被災したらどうすればいいのかを、特集で解説している。

 まずは地下鉄。3.11のときは東京メトロ飯田橋駅につながる地下道に水が流れ出した。0メートル地帯や河川のそばにある地下鉄出口は危険性が高い。

 和田隆昌災害危機管理アドバイザーによれば、水かさが増す前に線路に降りて、とにかく高いところへ逃げることだという。トンネル内にはエリアによってかなりの高低差があるから、低い駅から高い駅に1駅移動するだけで被害を免れる可能性がある。

 地下鉄内には「非常口」がないから、駅を目指すしかないのだ。

 東京スカイツリーの展望台で地震に遭遇したら、ゆっくりとした大きな揺れが長く続く長周期地震の影響を受ける可能性もあるので、窓辺から離れ、なるべく建物の中心に近い場所にある手すりなどを掴んで揺れに対処する。

 高層ビルのエレベーターに閉じこめられたら、床に座り扉を叩いて救助を呼ぶ。そのとき役に立つのがレジ袋だそうだ。閉じこめられている間の排泄物入れに使える。

 同じように比較的安全だといわれるトイレに閉じこめられたら、水を流さず、タンクの水をいざというときの飲料水としてとっておくのがいいそうだ。

 その他に、手術前は、手術中だったら、動物園で猛獣の前にいたらと、懇切丁寧に教えてくれているが、このようなことが役に立たないように祈るしかない。

 「東洋経済」の大特集「暴力団対策と企業」は、暴力団の実態や暴力団排除条例とはどういうものかというQ&A、主要企業・業界団体へ「暴排条例」アンケートなど充実した内容で、企業の総務担当者は必読だろう。

 これを読もうと買ったのだが、パナソニックの記事を読み始めたら止まらなくなってしまった。

 SONYやパナソニックのような大企業が韓国のサムスン電子などに押されていることは知っているが、ここまでひどいのかとため息をつかざるをえない。

 クルマでも韓国の現代自動車が躍進していて、トヨタも日産も安穏としてはいられないそうである。

 たしかに韓国の企業の躍進ぶりは目覚ましいが、パナソニック落日の要因は、歴代経営者たちの判断ミスが大きいようだ。

 これまでのような周期で社長交代があるとすれば、今年2月下旬に交代が発表されるのではないかといわれている。3人の有力候補がいるそうだが、中でも「この男ならば」と社員やOBたちにいわれているのが津賀一宏(55歳)だそうだ。

 技術畑で出身で04年に最年少で役員に就任。彼は上に対しても直言することで有名で、パナソニックの主力であるプラズマテレビのパネルをつくるために2,100億を投じた尼崎第3工場を、すぐ閉めるべきだと主張したことがある。

 その工場は1年半前に稼働させたばかりの最新鋭工場だったが、津賀の発言から3カ月後に停止された。また40型のプラズマテレビなどの不採算部門から撤退し、テレビ部門の55歳超の社員を2011年内に全員退職させたのも彼だった。

 彼の「執行力」に経営者としての資質ありとみているようだ。ただネックは55歳という若さだという。

 今の株価は611円(1月17日)。サムスン電子の時価総額はパナソニックの1.5兆円に対して10兆円。勝負あり。

 こうしたパナソニックの凋落の原因を「経営の失敗」だと断じる。中村邦夫という存在が大きすぎて世代交代を遅らせてしまったこと、組織風土が旧態依然の思考様式から脱却できないことだと手厳しい。

 中村院政の下、今の大坪文雄社長は「工場長型であって経営者ではなかった」という批判が社内にある。

 柱であるテレビ事業の躓きは、中村がぶちあげた「プラズマテレビに社運をかける」というプラズマ拡大路線だったが、液晶との戦いはパナソニック側の無惨な敗北となってしまった。

 中の2ページコラム「中村邦夫という聖域」で、中村がビジョンに優れたリーダーだったら院政を敷いてもよかったが、彼にはそれがなかったため、軌道修正ができず、誤った方向へパナソニックを走らせてしまったとしている。

 パナソニックが世界で勝てる商品は「僅少」だ。カーナビ、冷蔵庫、家庭用エアコン程度しかない。次世代テレビといわれる有機ELテレビでもサムスンに大きく水をあけられ、パナソニックは「不戦敗」。

 ブランド力が低下し、グローバル展開もままならず、高齢化(平均年齢44.6歳)に悩むかつての巨人の姿は、トヨタの将来を暗示しているようでもある。

 次世代のクルマといわれる電気自動車においても苦境に立っている。なぜならパナソニックの生産しているのはニッケル水素電池で、車載用電池はリチウムイオン電池が主流なのだ。まさに四面楚歌。

 特集の最後をこう結んでいる。

「車搭載用リチウムイオン電池の開発は、世界で始まったばかりである。パナソニックにも等しく与えられたチャンスを生かせるかは、ひとえに、首脳陣の決断にかかっている」

 「東洋経済」という経済専門誌がこうした特集を組んだことに拍手したい。今でもパナソニックは、国内最大級のシェアを誇る広告出稿企業である。一般週刊誌でこれだけの厳しい批評力をもって特集が組めるだろうか。

 編集者はみんな、この特集を読むべきだと思う。

 「文春」が「金正男 独占告白!『金正恩、わが宿命の弟よ』」をやっている。これは”世界的スクープ”だが、残念ながら東京新聞編集委員の五味洋治が文藝春秋から出す『父・金正日と私』(1月20日発売)のパブ記事であるために、東洋経済と同じ第2位とした。

 五味は金正男(40)に過去2回、延べ7時間のインタビューをし、約150通のメールのやりとりをしたそうである。

 正男は金正日総書記に溺愛され9歳の頃からスイスに留学したが、その後、正日が再婚して子どもができたためそちらへ愛情が移り、外国に置かれたまま放任されているうちに、本人曰く「完全な資本主義青年」になったそうである。

 そのためか父・正日にも直言することができ、核実験やミサイル発射実験したときには、国際社会が憂慮していると言ったという。

 彼が1月3日に送ってきたメールにはこうあった。

「この世界で、正常な思考を持っている人間なら、三代世襲を容認はできません」

 正男は正恩とは一度も会ったことがないそうだが、正恩のことをこう心配している。

「祖父(金日成主席)に容貌だけ似ている弟の正恩が、どれだけ北朝鮮の人々を満足させられるか、心配です」

 さらにこう注文をつける。

「(後継者として)何をやるかが問題でしょう。北朝鮮の住民が潤沢に、豊かに暮らしていけるようにしてほしいと願います。兄としてです。この言葉を受ける度量があると信じています」

 金正恩体制のこれからについては、彼を象徴として存続させ、既存のパワーグループが引き継いでいくと見ている。

 五味によれば、正男という男ただの放蕩息子ではなく、忠臣蔵の大石内蔵助のように、わざと遊び人のふりをしているのだそうだ。

 一つ間違えば弟から粛正されかねない孤独な兄。正男がこれからどのように動くのかが、北朝鮮を見る上で重要になることは間違いないようである。

***

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(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

江戸東京 味の散歩道―歩き味わう歴史ガイド

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最終更新:2013/09/09 18:28
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