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【鼎談】大山顕・佐藤大・速水健朗

「団地のすごさはザクのすごさだ!」団地を愛する愉快な3人組『団地団』がゆく!

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 またぞろキネマ旬報社がおかしな本を書店に並べた。タイトルは『団地団』。何やら”団地団”なる3人が、団地について鼎談している本らしい。登場するのは、団地写真を15年撮り続けている団地マニアの大山顕と、そんな大山に共鳴した脚本家・佐藤大、編集ライター・速水健朗という、若々しくもアラフォーな面々。いったい何が始まるのです……?

 ところがこの鼎談、ひとたびページを繰ればめっぽう面白い。団地を起点に語られるのは映画論、インフラ論、大衆文化論から郊外論まで、その広がりは無限大。今回はそんな3人のクロストークを緊急掲載。3人が団地のベランダから望んだその景色を、ほんの少しだけ垣間見る。

佐藤大(以下、佐藤) この本、よく完成しましたね。まずはそこですよね。

速水健朗(以下、速水) これは僕らのおかげではないですから。スタッフのみなさんの頑張りで(笑)。

大山顕(以下、大山) 編集さんがよく会議を通したなと。

佐藤 まず、団地団結成の経緯を説明しますと、新宿のロフトプラスワンで、そもそも僕と大山さんは別々にイベントをやっていたんです。その会場が15周年を迎えた際に、記念で何かやってくださいというオファーがありまして。なぜか知らないけど「団地をテーマに話しませんか?」って狙い撃ちされていたんですよ(笑)。そのイベントのために初めて大山さんに会って話始めたら、その場ですごく盛り上がっちゃって。

大山 ロフトプラスワンのオーガナイザーの天野宇空さんが制止しましたからね。「その話はステージでお願いします!」って。

佐藤 その時に僕らは気づいてしまったんです。誰か仕切る人がいないと収拾がつかない……。

大山 そこでふたりの口を同時について出たのが、速水さん。

速水 それまでの僕の人生に、団地はあまり関係なかったんですけどね(笑)。

■団地=大量生産システムの快楽

大山 団地の面白さの本質は「大量生産」で、同じものがいっぱいあるからいいよねっていうことです。例えば、ダムみたいに「一点もの」がすごいっていう人は多いけれど、それは誤った職人的価値観。大量生産こそが偉いんです!

佐藤 ザクのすごさですよ。

大山 ついでにいえば、ダムは「一点もの」と言うけれど、そんなに単純な話じゃないんです。ダムは水道供給を支えるべくシステマティックに作られたインフラであり、発想としては「大量生産」を目指しているわけですから。ダムを「一点もの」だからすごいというのは、論点として稚拙であると僕は言いたい!

佐藤 ダム派への逆襲が始まった(笑)。ところでこの本は、基本的にはトークイベントの内容を書き起こしたものと共に、東京近郊の名団地へのロケで構成されています。イベントではスクリーンに作品を流しながら語りましたが、本書では各シーンを絵コンテのように描いているので、イベントに来ていない方にも雰囲気は伝わると思います。

大山 登場する映画は『団地妻 昼下りの情事』『しとやかな獣』、先日亡くなった森田芳光監督の『家族ゲーム』『踊る大捜査線 THE MOVIE』『ピカ★ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』『お早よう』『吠える犬は噛まない』など。

佐藤 アニメでは『デジモンアドベンチャー』『耳をすませば』『新世紀エヴァンゲリオン』『放浪息子』なんてのも。

速水 宮崎駿から小津安二郎まで、いろいろ論じていますよね。建築の領域にも踏み込んでいるので、ル・コルビュジェや菊竹清訓も出てくる。マンガでは、大友克洋の『童夢』とか、団地出身漫画家の安野モヨコ、あと『リバーズ・エッジ』の岡崎京子についても語っているし。

佐藤 『ヘルタースケルター』ですよ、いま旬の(笑)。

速水 作業面で難しかった点は2つありまして、1つは僕ら3人ともスケジュールを押さえるのが大変だったということ。佐藤さんは映画祭やなんやで海外行っちゃうし。

佐藤 海外でゲラを見たり、注釈を書いたりしました。

速水 もう1つは、こんなにおしゃべりな人たちの長時間の会話をテープに起こす苦労ですよ、間違いなく通常の座談会の3倍の労力がかかりますよ。

大山 編集さんは大変だったと思います。そして、それを誰がまとめるんだ? となった時、僕らの目が泳いだ(笑)。行き着いた先は当然のごとく速水さんでしたね。

速水 でも、職業が編集者である僕を誘っていただいた時点で、どう考えてもフラグが立っているわけですから(笑)。

佐藤 あと固有名詞が多すぎでしょ。3人とも分かっているから、説明しないで言っちゃうんですが。

大山 そんな調子だから、ページの3分の1が僕ら書き下ろしの注釈っていう。

佐藤 みんなしゃべりすぎ。

速水 あふれんばかりに注釈を盛り込んだのは、しゃべりすぎ感を演出するという意図でもあるんですけどね。

大山 例えば、ある注釈で『カルトQ』について速水さんが説明してますけど……。

佐藤 本編ではクイズの話をしているだけですから、『カルトQ』自体はぜんぜん関係ないんですよ。

大山 「中村江里子は現在パリ在住」って、この解説いらないでしょ(笑)。

■まさかの矢川北アパートが!

佐藤 各章の扉イラストは漫画家の今井哲也さんにお願いしました。阿佐ヶ谷住宅を物語の舞台にした『ぼくらのよあけ』という作品を「アフタヌーン」(講談社)で連載している方ですが、最初にこの作品を知ったのは大山さんですよね。

大山 誰かにTwitterで教えてもらって読んだら、すごくよくて。団地を単にノスタルジーの装置として利用するのではなく、きちんと主人公である子どもの目線で、団地がいかにパラダイスであるかを描いていて、これは今までのものと違うぞと。それでおふたりに薦めました。

佐藤 僕も感動したのでTwitterでつぶやいたら、ご本人がアカウントを持ってらして、「ありがとうございます」ってリプが飛んできたんです。それで巻き込んで、団地団にぜひイラストをって頼んだら、実に「分かってらっしゃる」イラストを描いてくれて。

大山 とりわけ僕が団地マニア的にグッときたのは、第3章の扉です。矢川北アパートを持ってくるかと。すげ~、負けていられないって。

佐藤 ははは! ここでも軽く勝負が行われていたとは。僕らはどの団地を描いてくれとは指定していませんから。

大山 第1章の高島平団地くらいだったら、「まあまあ、よく頑張ってるんじゃないの」くらいなんだけど、第3章で「ん~参りました! ごめんなさい」みたいな(笑)。

佐藤 あと注目は大岡寛典さんのブックデザインです。僕は普通に大岡さんがデザインした本のファンだったんですが、実は大山さんの著書『団地の見究』(東京書籍)も手掛けていたという。

速水 この本のデザインってすごく重要で、正直読む側も「団地団」っていわれても全然なんの本だか分からないですよ(笑)。なので、デザインでつなぎ止めてる部分はかなり大きいはずです。

佐藤 今井さんのイラストを帯でこういうふうに使うのも、大岡さんのアイデアでしたね。カバーをめくった表紙部分もすばらしい。『童夢』や『AKIRA』を語っている本である以上、こういうところにも凝っていないと寂しいですからね。

大山 表紙の写真は僕が撮ったんですけど、団地はもちろん、首都高、工場、マンション、あとできれば東京タワーもひとつの構図に収めたくて。でもそれは残念ながら僕の脳内データベースになかった。でも東京タワーじゃなくてスカイツリーだったら……あそこだ! というわけで、辰巳の都営住宅を選びました。

佐藤 すべての要素がいい具合に据わりましたよね。皆の暴走から始まったとは思えない仕上がりです。恥ずかしながら自分の小学生時代の写真まで出ている哀しさもあるわけですが……。

■団地団は最先端をいっている

速水 昔の映画評論って、古い映画を見ていることに価値があったんです。かつて映画は上映時期を逃すと、簡単には見られなかった。なので、細部の記憶は間違っても許された。でも、今はDVDでいつでも誰でも見られる。当然批評も変わります。そういう意味でいうと、団地団は批評の新しい地平です。なにせ、僕らは映画の全体を語らない。団地が出てくる映画をデータベース的に見て、団地についてだけ語る。小津映画を語っても、原節子についてはかけらも触れないんですから(笑)。

佐藤 しかも、ダラダラしゃべっているだけに見えて、予期せずいろいろなものが繋がっていく。きっとコンテクスト・フリークな3人だからでしょう。

大山 川島雄三→『デジモン』とか、『放浪息子』→横溝正史が繋がるとは思いませんからね。別々のフィールドでやってきた3人ですが、もし誰か1人でも知っていて、それをきっかけにでも読んでくれたら嬉しいですね。そこから確実に世界が広がることは保証します。

佐藤 『ぼくらのよあけ』の今井さんのファンの方ももちろん。

速水 書店で一緒に置いてもらいましょう! それと僕ら3人、書店さんにぜひご協力したいので、POPづくりやトークイベントなんかのお話も、ぜひ出版社さんにお寄せください。

佐藤 トークショーやりたーい!

速水 えー、まだしゃべり足りないんですか! これを起こす人も大変だなあ(笑)。
(構成=広岡歩)

●おおやま・けん
1972年生まれ。フォトグラファー、ライター。団地・工場・ジャンクションなどの撮影のほか、産業観光のコンサルテーションも行う。主な著書は『団地の見究』『工場萌え』(ともに東京書籍)『ジャンクション』(メディアファクトリー)『楽しいみんなの写真』(共著/ビー・エヌ・エヌ新社)など。<http://www.ohyamaken.com/

●さとう・だい
1969年生まれ。脚本家。主にアニメ・ゲームの企画開発・脚本執筆を手がける脚本家集団「ストーリーライダーズ」代表。主な脚本作品は『カウボーイビバップ』『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『交響詩編エウレカセブン』『鉄拳ブラッド・ベンジェンス』など。<http://www.storyriders.net/

●はやみず・けんろう
1973年生まれ。フリーランス編集者、ライター。主な分野は、メディア論、書評、ショッピングモール、都市論、ビジネス系取材もの。主な著書は『ケータイ小説的。――”再ヤンキー化”時代の少女たち』(原書房)『自分探しが止まらない』(ソフトバンククリエイティブ)『ラーメンと愛国』(講談社)など。<http://www.hayamiz.jp/

●団地団ブログ
http://www.kinejun.com/blog/shoseki_blog/tabid/172/Default.aspx

団地団 ~ベランダから見渡す映画論~

わかる人にはわかる。

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最終更新:2013/09/09 17:44

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