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『生きてるものはいないのか』公開記念インタビュー

注目の若手俳優・染谷将太が語る「19才の映画論」

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 『ヒミズ』(園子温監督)での名演が絶賛され、第68回ベネチア国際映画祭で、二階堂ふみと共に日本人初のマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)を受賞した染谷将太。日本でも公開と同時に大ヒットで迎えられ、一躍時の人となった。そして、2月18日に公開を迎えるのが、『生きてるものはいないのか』。演劇界の若きホープ前田司郎と、『狂い咲きサンダーロード』『逆噴射家族』などの名作で知られる石井岳龍(聰亙から改名)監督が手を組んだ話題作で主演を務めた彼に、日刊サイゾーが突撃取材! そこで見えてきたのは19歳とは思えないクールな佇まいと、純真な映画青年の横顔だった。

――新人賞の受賞おめでとうございます! 賞を獲ったことによって生活は変わりましたか?

染谷将太(以下、染谷) いや、なんにも変わっていないですよ(笑)。考え方も振る舞いも全然変わっていません。

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――染谷さんは7歳から子役として活躍されていますが、デビューのきっかけはなんだったんでしょうか?

染谷 友達が子役をやっていたので、それで僕も興味を持つようになりました。ただ、僕自身はあまり出演する側として考えていたわけではなく、映像作り全般に興味があったんです。けれども、出演してみたら演じることの面白さに目覚めてしまった。映画作りの中にもいろいろな役割がありますが、僕には役者が一番合うのかなと思うようになっていきました。

――ブログを拝見すると流行の映画だけでなく、名画座に足しげく通いマニアックな監督の作品までチェックするほどの映画好きな側面がうかがえます。小さいころから映画は好きだったんですか?

染谷 もともとはわかりやすい映画が好きで、ジャッキー・チェンから入りました。映画に入門するには一番健全な道ですよね(笑)。幅広いジャンルの映画を見るようになったのは中学生のころ。そのころから映画を作る、ということに対する姿勢が変化してきましたね。子どものころは『映画製作の現場ってゴミもいっぱい出すし、電気もガソリンもたくさん使うので、資源の無駄遣いなんじゃないか』と思っていたんです。でも、意識的に映画を見ていくにつれて、映画が100年にわたって必要とされていることはすごいことなんだと思うようになってきましたね。だから、今では映画は「世の中にとって必要なもの」だと自信を持っています。

――中学生のころの転機を経て、『ヒミズ』の園子温監督をはじめ、冨永昌敬監督や、青山真治監督、瀬田なつき監督など、日本映画に欠かすことのできない監督陣からのラブコールを受けていますが、これまででいちばんやりやすかったのはどの監督の現場ですか?

染谷 それぞれの監督が本当に個性的で、まったく違うやり方なので、やりやすい、やりづらいといった感じはないです。僕自身も、自分のやりやすさを優先するというよりも、監督のやり方に合わせていくタイプですね。

――今回公開される『生きてるものはいないのか』での石井監督の演出はいかがでしたか?

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染谷 石井監督も、これまで一緒にやらせてもらっていた監督たちとは全然やり方が違いました。演技は自由にやらせてもらえるんですが、監督から「そこはそうやって演技をするの?」と問いかけられるんです。演技の細部まで問いかけられるので、自分自身が役者として試されているような感じがしましたね。どうしようかとかなり悩みました。

――劇作家の前田司郎さんが書かれたセリフも、独特の味を持っていますね。

染谷 言葉自体は日常的な言葉なのですが、その切り込み方が面白いんです。「なんで?」「なんで?」「なんでそれをするの?」みたいに、疑問形で迫いつめていく。やりにくさはなかったんですが、妙な感覚でしたね。


■「監督が作りたい世界を実現することが僕の仕事」

――染谷さんはどういったスタンスで「役者」という仕事と向き合っているのでしょうか?

染谷 うーん……僕自身は自覚的ではないですね。アーティストみたいな存在だとも思っていなくて、単純に「役者」だと思っています。役者として何かを表現するというよりも、監督が作りたい世界を実現することが仕事です。

――では、役者をやっていて面白いと感じるのはどのようなときでしょう?

染谷 映画の撮影をしているときって、変なことをしているわけじゃないですか? わかりやすく例えるならば、キスシーンであったり、濡れ場であったり、映画の撮影じゃないとできないことですよね。それは本当に恥ずかしいことだけれど、だからこそ役者は面白いと思うんです。

――『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(2010年、瀬田なつき監督)のDVDでは、スピンオフ作品の監督も務められていますね。今後は監督業も積極的に行っていくのでしょうか?

染谷 いえ、あくまでも自分の本業は役者だと思っています。『嘘つきみーくん〜』のスピンオフ作品は、僕が自主映画を創作した経験があって、それを知ったプロデューサーに「撮ってみる?」と声をかけてもらったんです。まさか実現するとは思わなかったんですが……。監督をやってみると、その大変さが身に染みてわかりましたね。

――具体的にはどのようなことですか?

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染谷 とにかく時間に追われる、ということですかね。役者とは大変さの質がぜんぜん違います。以前だと現場でスタッフの人がガムを噛んでいる気持ちがわからなかったんですが、監督をやるとよくわかります。限られた撮影時間に焦らされて、僕もずっとガムを噛んでいましたね(笑)。

――幅広い映画をご覧になっている”映画マニア”の染谷さんから見て、現在の日本の映画界はどのように見えますか?

染谷 僕はまだ10年くらいしか日本の映画界を知らないんですが、この10年間だけでも、とても大きく変わっていると感じます。僕自身にかかわってくる問題でもありますが、やっぱり景気は悪くなっている。予算がつかず、いい企画なのにポシャってしまうのをたくさん目撃してきました。「出たい」というより先に、映画ファンとして「見たい」っていうものばかりなんです。それはとても残念ですね。

――一方、日本映画界のいいところはどこだと思いますか?

染谷 以前、『パンドラの匣』(2009年、冨永昌敬監督)という映画に出演させてもらったんですが、それは冨永監督が僕の出演した自主映画を見に来てくれたことがきっかけです。いくらでも有名な人をキャスティングできるはずなのに、窪塚洋介さんや仲里依紗さんなど名のある人を脇に固めて、僕を主役に抜擢していただいたんです。主演のキャスティングという、映画の中でもかなり大きな部分を占める要素でも、まだチャレンジする余地は残されているんです。

――染谷さんは今年20歳を迎えますが、10年後、自分はどうなっていると思いますか?

染谷 30歳か……、まったく想像つかないですね。ただ、海外の作品を一度くらいは経験してみたいと思います。ぜんぜん勝手が違うので大変でしょうけど。

――どんな監督の作品に出演したいですか?

染谷 そうだな……、ガス・ヴァン・サントか、ジム・ジャームッシュの現場が理想です。共演はニコラス・ケイジで(笑)。
(取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]/撮影=オカザキタカオ)

●そめたに・しょうた
1992年9月3日生まれ、東京都出身。2001年に大槻ケンヂ原作の映画化『STACY』でデビュー。09年に『パンドラの匣』で長編映画初主演を果たし、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(10)『アントキノイノチ』『東京公園』(ともに11)などの映画や、NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国」などに出演。『ヒミズ』での演技が高く評価され、第68回ベネチア国際映画祭で二階堂ふみとともに日本人初のマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)、第66回毎日映画コンクールでスポニチグランプリ新人賞を受賞した。

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●『生きてるものはいないのか』
監督:石井岳龍/原作・脚本:前田司郎/出演:染谷将太、高梨臨、白石廿日、飯田あさと、村上淳ほか/製作:ドラゴンマウンテン/配給:ファントム・フィルム/宣伝協力:ミラクルヴォイス
2012年2月18日 ユーロスペース他でロードショー
http://ikiteru.jp

ノラ [DVD]

こちらは3月23日リリース。

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最終更新:2013/09/09 15:52
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