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週刊アニメ時評 第10回

「見たかったのはコレジャナイ!?」声優アイドルアニメ『夏色キセキ』に早くも黄色信号

 考えられる大きな理由としては、「スフィア声優演じる美少女キャラたちがほのぼのした日常を送る、予定調和を前提とした萌えアニメを期待してフタを開けてみたら、ことごとくがその逆をいく作品だった」ことが挙げられるだろう。

 第1話のあらすじは、小学校の頃から仲良しだった4人の女子中学生の関係が、少しずつギクシャクしていく……。という物語の導入としては、やや地味でシリアスなものとなっている。

 とくに、寿美菜子演じるメインヒロイン・逢沢夏海と高垣彩陽演じる水越紗季の間には、冒頭から不穏な空気が漂っており、物語後半では戸松遥演じる花木優香、豊崎愛生演じる環凛子も巻き込まれ、事態は泥沼化。さらに一生懸命明るい空気にしようとする優香の行動が滑りまくり、見る側としては「これ、どうしたらいいんだよ……」と絶望感すら感じてしまうほどの閉塞感が物語を覆う。

 ここから作品のイメージをポジティブな方向に持っていくには、それこそ奇跡が起きない限り無理だと誰もが思ったとき、「4人が同時に同じ願い事をすると叶う」という御石様の力で、いきなり4人は空を飛んでしまうのだ。

 なんという奇跡! この予想の斜め上をいく超展開で第1話の幕は下りるのだ。

 「萌えアニメ」というよりも、古き良きジュブナイル作品のような趣を感じさせるストーリーである。

 事実、本作をSF(すこしふしぎ)ドラマとして見れば、非常にオーソドックスな作りであり、手堅い作風に仕上がっていることに多くの視聴者は気付くはずだ。ただ不幸なことに、「視聴者がそういうものを求めていなかった」ために「微妙な評価」に落ち着いてしまったのではないだろうか。

 「スフィア演じるキャラが戯れている姿を見たい」という視聴者からしたら、見たかったのはコレジャナイというわけである。

 また、タイアップのせいで劇中で不自然に強調されるローソンや地元の名所も、ステマ臭を感じさせて視聴者を引かせてしまった部分もあるだろう。制作スタッフは王道な作劇を試みたものの、その周辺や視聴者側との微妙なズレが不幸な評価を生んでしまったといえる。

 しかし、それをもって本作を「失敗作」と断じてしまうのは早計である。むしろ「スフィア」「萌え」「ご当地アニメ」といったキャッチーなトピックが、『夏色キセキ』という作品の正当な評価を妨げていたとはいえないだろうか。

 ここはひとつ、ネット上での評価や過去のスキャンダルといったマイナス要因をとりあえず横に置いて、フラットな気持ちで改めて見てみれば、本作の面白さを感じることができるのではないだろうか。
(文=龍崎珠樹)

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