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今度のジョニデは新種のヴァンパイア!『ダーク・シャドウ』

dsdphotomain.jpg(c)2012 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

 今週紹介する新作映画2本は見た目こそずいぶん異なるが、いずれも「家族」が重要なテーマ。それぞれの作風で観客を楽しませつつ、「家族」が最も身近なようで意外と難しい人間関係であることを気づかせてくれる作品たちだ。

 5月19日に封切られる『ダーク・シャドウ』は、40年ほど前の米テレビドラマを基に、主演ジョニー・デップ、監督ティム・バートンというおなじみのタッグで映画化したホラーコメディー。18世紀後半、英国から米国の港町に移住し水産業で成功したコリンズ家の御曹司バーナバスは、使用人のアンジェリークを魔女とは知らずにもてあそんで恨みを買い、不死のバンパイアにされ地中深く埋められてしまう。200年後の1972年、土木工事で掘り起こされたバーナバスは、荒れ果てた屋敷で各自問題や秘密を抱えて暮らす末裔や同居人たちと共に、没落したコリンズ家の再興に乗り出す。そこに立ちはだかったのは、いまや実業家として町を支配するアンジェリークだった。

 出世作の『シザーハンズ』(1990)以降、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(2008)、『アリス・イン・ワンダーランド』(10)など、バートン作品で白塗りの奇人がすっかり板についたデップが、今回は白塗りキャラの元祖ともいえる吸血鬼役に挑戦。ホラー、ロマンス、アクションの各シーンを巧みに演じ分けているが、中でも、200年の文明的ギャップを活かした「ボケ」が秀逸。当時流行した音楽やヒッピーカルチャーなどに馴染みがあれば、おかしさ倍増だ。女優陣も女当主役のミシェル・ファイファーから、魔女役のエバ・グリーン、やはりバートン作品で常連のヘレナ・ボナム・カーター、そして『キック・アス』(10)以降引く手あまたのクロエ・モレッツまで、各世代の個性的な美女たちが豪華競演。バーナバスをめぐる愛憎と呪われし家族の物語がファンタジックに描かれた、大人もしっかり楽しめるユニークな娯楽作だ。

 一方、5月18日公開の『ファミリー・ツリー』は、ジョージ・クルーニー主演で家族の不和と葛藤、再生を丁寧に描いたドラマ。ハワイで弁護士の仕事に明け暮れていたマットは、祖先から受け継いだ広大な土地の売却で悩んでいたところに、妻がボート事故で昏睡状態になったことが重なり、人生の転機を迎える。良き夫、良き父親になると決意したものの、2人の娘との接し方がわからない。そして、長女から告げられた「妻の浮気」という衝撃の事実。マットは娘たちを連れて、妻の不倫相手に会いに行くが……。

 メガホンを取ったのは、『サイドウェイ』(04)、『アバウト・シュミット』(02)など、満たされぬ中年男が人生を見つめ直すドラマを得意とする、アレクサンダー・ペイン監督。アカデミー脚色賞を『サイドウェイ』に続き本作でも受賞した。普段はダンディーな印象の強いクルーニーが、妻に浮気され娘たちの言動にうろたえるダメ夫、ダメ親父ぶりを好演。長女役のシャイリーン・ウッドリーは映画初出演ながら、複雑な感情を繊細に表現し、ナチュラルな魅力が今後の活躍を期待させる。ハワイの雄大な景観をバックに、親から子へと引き継がれるもの、家族の絆を、ユーモアも交えながら優しくうたいあげる感動作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『ダーク・シャドウ』作品情報
<http://eiga.com/movie/54540/>

『ファミリー・ツリー』作品情報
<http://eiga.com/movie/57144/>

最終更新:2012/05/18 12:00
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