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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.176

“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』

 ローラが元気を取り戻した頃、“見知らぬ男”サイモンが再びウィルの前に姿を現わす。強姦魔の件の代償として、今度はウィルが殺人を引き受けなくてはならないと説明する。交換殺人は組織単位で巧妙に行なわれており、彼らは「空腹なウサギは?」「ジャンプする」という暗号を交わしていた。次のターゲットはすでに選定されており、記事を捏造して人心を惑わす悪徳ジャーナリストを事故に見せかけて消すようウィルは命じられる。ウィルは頑なに代理殺人を拒み続けるが、想像以上に秘密組織の規模は大きく、ウィルは逃げ場を失っていく。「空腹なウサギは?」と問われたウィルは、やむえず「ジャンプする」と答えざるを得なくなる。

hungryrabbit2.jpg強姦魔に襲われ、病院に運ばれた妻ローラ
(ジャニュアリー・ジョーンズ)。ウィルは自分
が何もできないことが恨めしい。

 ハリケーン・カトリーナによって堤防が決壊し、ニューオリンズの八割が水没した。行政の対応が遅れ、移動手段を持たない低所得者、高齢者、障害者たちが犠牲となった。さらに、ブッシュ政権の災害に対する認識が甘かったために救援体制が整わず、食料や医療品をめぐる略奪行為が相次いだ。自分たちの安全は自分たちで守らなくてはいけない。『ハングリー・ラビット』では災害をきっかけに防災・自衛の意識が強まった被災都市で、秘密裡に自警団が結成される。あくまでもフィクションだが、60年代の南部を舞台にした実録映画『ミシシッピー・バーニング』(88)に登場するKKKのような不気味さがある。また、災害の起きた地域では情報が錯綜し、デマや噂が飛び交いやすい。災害がもたらす以上の恐怖が人々を襲う。街が復興した後も、様々な都市伝説が生まれる。本作の善良なる主人公ウィルも、妻の暴行事件や交換殺人の依頼にパニック状態となり、冷静な判断ができなくなってしまう。『キック・アス』(10)では自警団の無茶ぶりをコメディとして演じたニコラス・ケイジが、本作では正義の名のもとに暴力を振るうことの是非を問い掛けてくる。

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