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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.179

親友=お金を貸してくれる、女友達=SEXさせてくれる!? 品性お下劣男の青春『苦役列車』

 『苦役列車』の舞台は、日本がバブル期へと突入した1980年代後半の東京。でも、北町貫多(森山未來)はバブルとはまったく無関係の最下層の住人。小学生のとき、夜のワイドショー『ウィークエンダー』で父親が性犯罪を起こしたことが放映され、一家は夜逃げ&離散。中学を卒業した貫多は日雇い労働で汗を流し、稼いだバイト代は酒と風俗に消えていた。将来の夢も恋人もいない、味気ない毎日だ。そんな貫多に初めて親友と呼べる存在ができた。専門学校に通う日下部(高良健吾)とバイト先で仲良くなり、仕事帰りに一緒に飲みに行くようになる。気のいい日下部は、貫多が憧れている古本屋に勤めるバイト学生・康子(前田敦子)との仲介役を引き受け、口ベタな貫多は康子と“友達”になることに成功。灰色の日々を送っていた貫多の生活が、いっきにカラフルに色づき始める。

kueki_ressha2.jpg友達のいなかった貫多だったが、バイト先で
同い年の専門学校生・日下部(高良健吾)と
仲良くなる。日下部はスポーツマンタイプ
のいいヤツ。

 貫多は自分の欲望にとことん忠実な男だ。最初の頃はそんな貫多のことを「気取りのない、真っ正直なヤツ」と好意的に感じていた日下部だが、家賃を滞納しまくった貫多が借金を申し込むあたりから次第にうんざりしてくる。康子とせっかく友達になれたにもかかわらず、貫多の頭の中には「女友達=セックスさせてくれる」という図式しか入っていない。性欲がみなぎった野獣のような貫多の表情に康子は怯える。自分に正直なのが貫多の数少ない長所なのだが、あまりに正直すぎるために貫多は社会生活において度々問題を引き起こす。貫多の青春は、まるでできそこないの線香花火のようにあっけなく終わる。

 前田敦子演じる康子は映画版でのオリジナルキャラクターだが、マキタスポーツ演じるバイト先の同僚・高橋も原作では端役だったのが映画版ではかなり膨らんだキャラクターとなっている。人気ミュージシャンの思想模写で知られるマキタスポーツは40歳すぎてから売れ始めた、いわば“苦役列車芸人”。マキタスポーツの“所帯を持ち、芸人をしながらミュージシャン活動もする”というプロフィールがバイトしながら歌手を目指している高橋役にぴったりだったことから、オーディションなしで本作のキーパーソン役に抜擢された。

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