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昼間たかしの100人にしかわからない本千冊 9冊目

ホントに一生恨んでいるのか? 『吾妻ひでおに花束を』

005azuma.jpg現在から振り返ると当時の漫画評論のタイトルのつけかたも、
かなり独特である。
006azuma.jpgDTPだと画一的になってしまうページ構成も手書きだとこんな感じに。
ぜひ、現代の人々にも学んでほしい部分だ。
007azuma.jpgここばかりは、壁村編集長も死んでしまったのですべて歴史の闇だね
(『誰も知らない人気アニメマンガの謎』コアマガジン、2010年11月より)。

 さて、本書には飯田耕一郎の「ギャグに色彩られたSF」をはじめ、評論も充実しているが、まず、注目したいのは再録された吾妻のデビュー作「リングサイドクレージー」だ(初出は秋田書店刊『まんが王』1969年10月号)。我々がよく知っている吾妻の絵柄とは、まったく違う。ここから、一時代を築いた美少女絵まで、どのような労苦があったのか、少しはうかがい知れるのではなかろうか。

 本書は、同人誌としてはかなりの部数が出たようだ。筆者が所有しているのは第三版だが、後書きでは「限定五百で出した初版に対する反響にこたえて」と記している。おそらく反響があったのは、評論の「濃さ」も含んでのことだろう。「不条理解析」と題された評論は「不条理日記」で扱っているパロディの元ネタである、バラードやオールディズの作品群を挙げながら分析を行っている。「吾妻ひでお三流劇画家と酒を飲む」と題されたコラムでは「板坂剛VS流山児祥という状況が生まれる以前のことではあったが~」といった一文が。ここで笑うには、かなり当時の文化事象に関わる知識が要求されるハズだ。
そういった意味で、本書は現在では当時のオタクにとって必要だった知識が、どんなものだったかを知る手がかりにもなっているといえるだろう。

 一般には、かなり入手難な本だと思うのだが、明治大学の米澤嘉博記念図書館には、なぜか4冊も所蔵されている。ネット以前の時代には、見つけたことすら奇跡だったのに、なんということだろう。「オタクの歴史」のようなものを語りたいなら、とりあえず読んでおくべき一冊である。
(文=昼間 たかし 文中敬称略)

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