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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.192

“お蔵入り映画”が人命救助を果たした!? 実話をベースにした大冒険ロマン『アルゴ』

argo_1.jpgカナダ人と偽ってイランに入国したトニー(ベン・アフレック)は、
大使館職員たちに台本を渡し、映画スタッフを演じさせる。

 日本では年間400本前後の映画が劇場公開され、米国ではそれを上回る500~600本もの公開本数を数える。しかし、当然ながら無事に劇場公開まで辿り着けた作品は極わずか。お蔵入りして現像所の倉庫で眠り続ける大量のフィルムに加え、映画会社の片隅で山積みされたまま忘れさられた脚本や企画書の数は天文学的数字に昇る。それら映画になりそびれた夢の断片は、日の目をまったく見ることなく一生を終える。映画スタジオは夢工房であるのと同時に、形にならなかった夢の残骸の墓場でもあるのだ。SFアドベンチャー『ARGO』も、そんな埋もれてしまった企画の1本にすぎなかった。CIAが目を付けるまでは。ベン・アフレック主演&監督による『アルゴ』は、1本の“お蔵入り企画”が人命救助を果たしたという奇想天外な実話をベースにした社会派サスペンスだ。

 物語は1979年11月、イラン革命の波が押し寄せる在イラン米国大使館から始まる。悪名高いパーレビ政権を米国政府は支援していた上に、亡命したパーレビ元国王の米国入国を認めたため、イラン国民は「パーレビを引き渡せ」と怒りまくっている。米国大使館は過激派に取り囲まれ、風前のともしびだ。大使館職員とその家族52人がイラン側の人質となるが、6人の職員たちは裏口から逃げ出してカナダ大使の自宅に匿われた。だが、運が良かったのはここまで。街角には革命軍の目が光り、空港は封鎖状態。この6人はテヘラン市内で完全に孤立した形となってしまった。国務省やCIAは6人を救出するため、自転車で国境まで砂漠を走り抜けるなどの作戦を検討するが、現実性があまりにもない。ちなみにイラン側の人質となった52名の大使館職員たちを救出するために翌年デルタフォースが投入されることになるが、この作戦は大失敗に終わっている。そんな中で極秘裏に採用されたのが、CIAで人質奪回を専門とするトニー(ベン・アフレック)が発案した“ハリウッド作戦”だった。

 ハリウッド作戦とは何か? 6人もの大使館職員を同時に国外へ脱出させるのは至難の技だ。そこでウソの映画をでっちあげて、映画のロケハンのふりをしてイランに入国。現地で合流した6人を映画クルーに仕立てて、何食わぬ顔でそのまま空港から帰国してしまおうというもの。だいたい、映画の撮影隊にはよく分からない職種の輩がやたらといる。大使館職員たちにカメラとか機材を持たせとけば、バレやしないだろう。恐ろしく大胆にして、すげーアバウト。これ、実際にCIAが採用したミッションなんですよ。

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