「スギちゃんに始まりスギちゃんに終わった」2012年のお笑い界をお笑い評論家・ラリー遠田が振り返る!!

　ある意味ではスギちゃんも、この「一発屋ブーム」の中で輝いた存在だといえるだろう。スギちゃんは、いかにも「一発屋」になってしまいそうな、完成されたキャラクターで我々の前に姿を現した。そして、一発屋になるのではないかという視線にさらされながら、ときには本人もその不安を口にしながら、そのこと自体をネタにして、したたかに生き延びてきた。スギちゃんを一発屋にしてしまいたいという悪意と、一発屋になってしまうのはかわいそうだという同情心。「世間」という魔物は、スギちゃんにその両方の思いを力の限りぶつけてくる。スギちゃんは、それに翻弄されながらも、一心不乱にここまで突き進んできた。

　いぶし銀芸人のブレイクと、一発屋芸人の復活現象。これら2つの潮流を語る上で外せない芸人はスギちゃんということになる。お笑い界の2012年はやっぱり、スギちゃんに始まりスギちゃんに終わった1年だったのだ。
（文＝お笑い評論家・ラリー遠田）