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ドコモ、iPhone販売拒む3重の壁…「今年確実」「絶対ない」業界内で割れる見方

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。

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ドコモ、iPhone販売拒む3重の壁…「今年確実」「絶対ない」業界内で割れる見方 – Business Journal(5月11日)

NTTドコモ代々木ビル
「Wikipedia」より/0607crp)

 携帯電話ユーザのドコモ離れが止まらない。

 NTTドコモが4月26日に発表した2013年3月期連結決算の営業利益は、前期比4%減の8371億円だった。この営業減益要因となったのが、顧客流出を食い止めるための販促費増加だった。

 13年3月期、流出食い止めのため代理店へ支払ったドコモ端末値引き販売補填費やキャンペーン費用などの販促費は、前期比6%増の1兆1617億円という巨額に上った。それでも、キャリア(携帯電話会社)を乗り換えられるMNP(番号持ち運び制度)の年間累計は140万9500件の転出超過(マイナス)と過去最悪。

 ちなみに、競合のKDDIは101万500件、ソフトバンクは41万1200件と、共に転入超過(プラス)で、ドコモの「一人負け」が露わになった。

【携帯電話のキャリア別累計契約数(12年度)】
ドコモ     6153万6000件  (46.7%)
KDDI      3770万9300件   (28.6%)
ソフトバンク  3247万9600件  (24.7%)

【携帯電話のキャリア別累計純増数(12年度)】
ドコモ      41万7400件   (26.3%)
KDDI      51万1900件   (32.2%)
ソフトバンク    66万700件   (41.5%)
「電気通信事業者協会HP」-「携帯電話・PHS契約数」-「事業者別契約数」より

 その結果、新規契約数から解約数を引いた純増数(12年度累計、電気通信事業者協会統計)ではソフトバンクが66万700件、KDDIが51万1900件、ドコモ41万7400件で、累計純増数でもドコモの負けっぷりが際立っている。

 今やドコモは、KDDIとソフトバンクの草刈り場の様相を呈していると言っても過言ではない。

●ドコモをさらに追い込むKDDI

 ドコモの惨憺たる状況について、業界関係者は、「市場で人気の高い米アップルのスマホ『iPhone』販売にKDDIもソフトバンクも参入しているのに、ドコモは参入しておらず、ユーザが寄り付かない。逃げるのは当然」と解説する。

 そんな弱り目のドコモを、さらに追い込むかのような動きを見せているのがKDDIだ。

 同社は現在、iPhoneを最新機種へ買い替える場合の旧機種下取りを行うために、古物商の許可申請を各都道府県で進めており、au販売代理店も同社の指示で同様の準備をしているといわれている。

 この下取りサービス開始を予定しているのが、今年夏の新機種「iPhone 5S」発売日ともいわれている。下取りの目的は言うまでもなく、ドコモ駆逐だ。「ドコモユーザが、KDDIのiPhoneを買いやすくするための誘導策だ」とKDDI関係者は明かす。

 KDDIがiPhone販売に参入したのは11年9月。それまでは、08年から国内でiPhoneの独占販売状態だったソフトバンクへのユーザ流出が続き、ドコモと共に「スマホの草刈り場」と化していた。だがiPhone販売開始でユーザ流出が止まり、今度はドコモユーザがKDDIに流入するようになった。

 その結果、契約純増数は11年10月から今年3月まで18カ月連続でトップを維持している。

 そんな「iPhone神通力」もあり、業界では「ドコモがいつiPhone販売に参入するのか」が目下の話題になっている。参入しないと「ドコモの一人負けが今後も続くのは明らか」(業界関係者)だからだ。

 ところが、この話を追ってゆくと、iPhoneに参入したくても参入できない、ドコモの立ち往生状態が見えてきた。

●iPhoneはドコモが一番乗りのはずだった?

「実は、iPhoneの国内独占販売権はドコモが手にするはずだった」と、NTT元役員は打ち明ける。

 アップルが08年にiPhoneを国内に投入する際、その販売代理契約で競ったのはドコモとソフトバンクだった。当時は技術的にも規模的にもソフトバンクを圧倒していたドコモ本命で交渉が円滑に進んだ。ところが、交渉が詰め段階に入ると、「アップルが突然、法外な要求を突き付けてきたのでドコモは交渉を打ち切り、ソフトバンクが漁夫の利を得る形になった」(同)という。

 その要求の内容とは「独占販売権を与える代わりに、NTTの研究所が保有する携帯電話のすべての特許技術を開示せよという、とうてい呑めない要求だった」(同)というのだ。これが本当だとすれば、ドコモが反発をしたのは当然といえよう。誰が考えても、商品供給と引き換えに、数十年にわたって蓄積してきた特許技術を社外に開示などできるわけがないからだ。

 それはさておき、KDDIがiPhone販売に参入した時点でも、ドコモが追随参入できない事情があった。それは同社の中期経営計画(中計)だった。

 KDDI参入直後の11年11月にドコモが発表した中計では「産業・サービスの融合による新たな価値創造」を掲げている。それに向け映像、電子書籍、クレジットカードなど携帯電話との親和性が高い8分野の事業領域に戦略投資を行い、15年度に11年度比約2.5倍の約1兆円の売上を目指すとしている。

 この壮大な計画は、同社が「ドコモスマホ」のOSに採用している米グーグルのアンドロイド上のアプリを前提にしたものだという。

 従って、携帯電話に搭載するアプリやサービスをきめ細かにアップルが指定するiPhone販売にドコモが参入すると、この中計で掲げている成長戦略が根底から崩れるわけだ。

●「土管化」への危機感

 さらに、同社には通信事業の「土管化」への危機感もある。

 昨年5月に開催された携帯電話・無線通信関連の展示会「ワイヤレスジャパン」で、基調講演の演台に立った山田隆持社長(当時)は「さまざまな機能をネットワークに埋め込んでゆきたい。それによりお客様から見た場合に、あたかも端末単体で処理が完了しているような形にしたい」と、同社の経営ビジョンを語っている。

 サービスの提供主体をネットワーク側に置くことは、ドコモにとってのメリットが大きい。ドコモが手頃な価格でさまざまな高機能サービスを提供することでネットワークの価値が高まり、ネットワーク自体が収益源になるからだ。

 ところが、iPhoneのように、アプリ・サービス開発がアップル主体で行われ、コンテンツ開発、提供などのプラットホーム事業もアップル主体となると、キャリアは単に通信インフラだけを提供する「土管」と化してしまう。

 このため「社内には土管化を促進するアップルに頼らないビジネスモデルをつくるべきだとの意見が強い。その意見を反映したのが中計であり、土管化を防ぐビジョンを説明したのがワイヤレスジャパンでの山田社長(当時)の発言だった」(ドコモ関係者)という。

 こうした参入できない事情を抱えながらも、ドコモは「iPhone参入を断念したわけではない」(同)というから、話は複雑だ。

●秋波は送れど決断できないドコモ

 ドコモは、iPhone対策の販促費急増で営業利益が減少、背に腹を代えられない状況になっている。

 このため、加藤薫社長は今年2月、メディアの取材に対して「iPhoneは魅力的な端末だ。総販売台数の2〜3割なら販売も検討したい」と、にわかにアップルへ秋波を送るような発言をした。

 これに激高したのが「旧電電ファミリー」と呼ばれる国内の携帯電話機メーカー。iPhone販売にドコモが参入するようになれば、アップルと比較し事業規模で劣る国内携帯電話機メーカー勢はたちまち苦境に追い込まれるからだ。

「我々と皆さんは一心同体。これからも共存共栄でと言っていたのは二枚舌だったのか」と、あるメーカー役員は憤慨している。これまで、旧電電公社時代から技術提供などにより携帯電話機メーカーを育ててきた施策が、iPhone参入阻害要因になっているのだ。

 ここまで来ると、もう完全に立ち往生だ。参入しなければユーザのドコモ離れは止まらず、参入しようとすれば、中計、土管化への恐れ、国内携帯電話機メーカーの反発と3重の壁が立ち塞がる。

 同社が今後iPhoneへ参入するかについては、目下のところ業界内の見方は分かれている。

 参入説を取る業界関係者の一人は、「昨年暮れからの加藤社長の発言の端々から見ても、加藤社長が参入の腹を決めたのは明らか。加藤社長の側近が今年に入ってしばしば渡米、アップル幹部と極秘に交渉している節も見られる」と話し、「今年の夏のiPhone 5S発売を機に参入するのはほぼ確実」と推測している。

 参入否定説を取る業界関係者の一人は「ドコモは単なるキャリアではなく国策会社。自分が参入した場合に、自分の育ててきた国内携帯電話機メーカーがどんな悪影響を受けるかを配慮しなければならない立場。だから参入は絶対あり得ない」と断言する。

 いずれにせよ、加藤社長はアップルに「秋波は送れど決断せず」の中途半端な態度で、参入諾否の決定に時間がかかるのは間違いないようだ。その間にも、ユーザの流出はとめどなく続いてゆく。
(文=福井晋/フリーライター)

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最終更新:2013/05/12 07:00
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