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『80年代テレビバラエティ黄金伝説』が教えてくれる、“破綻”がテレビにもたらす福音

「芸人は、というか、テレビの作り手も含めて、多くの人に向けてなにかを表現したいという欲を持っている人間は誰しも、どこか破綻した部分を持っているものなんです。でも、その破綻した部分こそが魅力だったりするわけで。80年代という時代は、そのことを認めてくれる人が多かったような気がするんです」

 先日、とある中堅芸人さんを取材したときに「中学生くらいのときですね。その頃テレビに出てた芸人たちはホント滅茶苦茶なことをやっていて、それを見て楽しそうだなって。それで芸人を目指したんですよ」と遠い目で語っていたのを思い出した。この本の面白さは、ただ単に80年代を「あの頃は良かった」と懐古するところではなく、80年代のバラエティを通して今のテレビが抱える現実が見えてくるところにある。あの頃、作り手たちはお笑いの地位向上のために戦っていた。もちろん今も面白い番組作りのために戦っている。しかし現代の難儀なところは、テレビの戦うべき相手がハッキリしていないということではないだろうか。局のエライ人たちなのか、予算なのか、視聴者なのか、コンプライアンスという名の世間なのか。そうしてテレビが「破綻」を手放した結果、冒頭の悪ふざけのような「破綻もどき」を若者たちが自作自演しだしたにすぎないようにも思えてくる。

 暑苦しくてがむしゃらでデンジャラス、そしてちょっと切ない。80年代バラエティを季節にたとえれば、ちょうど今年のような猛暑の夏か。テレビを取り巻く環境がどんなに変わろうと、テレビにしかできないことがあるということを、この本はあらためて気づかせてくれるに違いない。
(文=西澤千央)

最終更新:2013/09/03 18:00
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