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家族の絆を再認識する原発事故を背景としたホームドラマ

山本太郎が出てるけど……原発反対映画じゃなかった!『朝日のあたる家』

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 家族が遭遇する出来事は、いずれも福島第一原発事故によって避難を余儀なくされた人々への取材や資料収集を元にした、現実の出来事である。派手さはないが淡々としているがゆえに、かえってリアルである。話題となった山本太郎演じるのは、沖縄に移住してお好み焼き屋をやっている、おじさん(父親の妹の夫)だ。物語中盤、行政は「これから除染を行うので、帰宅してもよい」と許可する。元通りの日常を取り戻したい父親は帰宅し、自分で除染を始める。しかし、放射能の影響を恐れる母親と姉妹は帰宅を拒む。そんな一家がバラバラになりそうな状況を見た、山本演じるおじさんは、一家に沖縄への移住を勧める。しかし、父親は頑として受け付けない。ずっと暮らしてきた故郷を捨てることなど、できないから……。

 このように本作は、原発事故を通してあらためて家族と故郷を持つ意味を浮かび上がらせている。東京での公開初日、取材に応じた監督の太田隆文氏は「説教映画ではありませんし“原発をやめろ”と主張するものではありません。前作では書道をテーマにしたのですが、それが原発に変わっただけなんです」と、筆者に語った。

 しかし、そうした本質を捉えることなく「原発」が出てくることだけで、多くの映画館が上映に難色を示したのも事実だ。

「“原発だからダメ”という映画館はありませんが、スケジュールとか、ほかの理由で断られましたね。逆にミニシアター系では、原発を扱った作品は儲からないからダメと言われましたよ」(同)

 それでも太田監督が映画を通じて伝えたかったものは、徐々にではあるが理解されつつある。すでにロサンゼルスの映画祭で上映され、アメリカ人の観客は、この映画を見て911を思い出す人が多かったという。911の時、ブッシュ政権は「対テロ戦争」を掲げてアフガニスタン侵略へと邁進したが、一方で「テロ」への被害者のケアは、まったく行われなかった。そうした被害者を最後に支えたのは、やはり家族の絆だったのである。「最後は家族」。本作は、その一点を追求しているがために、国家の枠を超えて共感できるのだ。

 正直なところ、高度に社会的・政治的な問題である原発事故というものに「家族の絆」などという、あまりにもベタなものを持ち出すことには疑問を感じる人もいるだろう。「現実の問題に感情論で語っても不毛である」と、したり顔で語る人もいるだろう。今後、そうした人々が、この映画を批判してくることは容易に想像ができる。中には、映画を見ないで批判する人もいるだろう。でも、これは「映画」である。新聞やテレビではない。太田監督は語る。

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