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宇多田ヒカルのパパが、沢木耕太郎の「藤圭子」本に激怒しているワケ

 しかも、沢木は長らく封印していた『流星~』を緊急出版した理由について、ヒカルと照實が発表したコメントによって「精神を病み、永年奇矯な行動を繰り返したあげくの投身自殺、という説明で落着」してしまったことが「あまりにも簡単に理解されていくのを見るのは忍びなかった」と書き、ヒカルに「輝くような精神の持ち主」だった藤の姿を知ってほしいと願う気持ちから今、出版したのだと説明している。これではまるで“精神を病んだ人”というイメージを植え付けた照實から、藤を救済する目的で出版したとも受け取れる。

「こうした沢木の記述に、照實がカチンと来た可能性は高いでしょうね」(同)

 もっとも、照實の感情とは別に、沢木の『流星~』については、出版業界からも「きれいごとで片付けすぎではないか」という指摘もある。というのも『流星~』には、沢木と藤の関係性がきちんと描かれていないからだ。

 例えば、そのひとつがあとがきの問題。沢木によれば、『流星~』の原稿を渡した後、藤から手紙が送られてきて、その手紙の最後には「追伸『流星ひとつ』のあとがき、大好きです」とあったという。ところが、沢木はそう書きながら、肝心のあとがきについてはなぜか“残っていない”として、執筆ノートに記されていたという“あとがきの断片”を公開しているだけなのだ。

「本当のあとがきには、“沢木から藤へのラブレター”が書かれていたはず。沢木さんはわざと残ってないとして隠したんじゃないでしょうか。それ以外にも、『流星~』は肝心な部分をことごとく避けて通ってる気がしてならない。そもそも2人の恋愛関係は、沢木さんが途中で逃げ出して終わった可能性が高い。別れの時にもいろいろあったはず。それをああいう“美しい物語”仕立てにしてお茶を濁すというのは、どうなんでしょう」(大手出版社のベテラン編集者)

 自分と取材対象の関係性を丁寧に描く手法で“ニュージャーナリズムの旗手”として高い評価を得てきた沢木だが、今回はそこまで踏み込めなかったようだ。いや、それとも元夫を刺激して怒らせているのだから、やはり2人の関係性は作品からにじみ出ていると考えるべきなのだろうか?

最終更新:2013/11/07 08:00
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