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今、ボカロやアイドルをどう語るべきか 音楽ジャーナリスト3人が2013年のシーンを振り返る

【リアルサウンドより】

 リアルサウンドでもおなじみのライター・物語評論家のさやわか氏が12月6日、五反田の「ゲンロンカフェ」にてトークイベント『さやわか式☆現代文化論 第2回』を開催した。音楽ジャーナリストの宇野維正氏、柴 那典氏を招いて行われたこのイベントでは、「音楽ジャンル再総括!―2013年末から振り返る、90年代 J-POPからきゃりーぱみゅぱみゅ、初音ミクまで」をテーマに、音楽ジャーナリズムの一線で活躍する彼らが、2013年の音楽シーンについて濃密な意見を交わした。前編では、芸能と音楽の関係性についての考察から、ボカロシーンの是非、さらにはJPOPシーン全体の傾向の変化についてまで話が及んだ。

柴:考えてみたらみんな、リアルサウンドの「チャート一刀両断!」を書いているメンツですね。

さやわか:でも最近思うんですけど、オリコンチャートがなんらかの時代性を担保している訳ではないのに「オリコンチャートに出ることは重要」みたいな風潮だけが残っていますよね。

宇野:そうだね、オリコンとかってもはや音楽業界の人しか気にしてないんじゃないかっていう気もする。リアルサウンドではオリコンのアルバムチャートとシングルチャートを一週おきに分析しているんだけど、きっと一番興味を持って読んでるのは音楽業界の人なんじゃないかな。オリコン自体が、もはや完全に業界紙ですからね。音楽の世界で仕事している上で、チャートを分析することにまったく意義を感じていない訳ではないんですけど。ただ、チャートを軸に音楽と芸能を一緒に語ることに、僕はすごく違和感がある。

さやわか:それは、本当にそうですね。

宇野:僕自身、芸能も大好きなので、それを下に見ているわけではないんだけど、音楽と芸能ってやっぱり別物で。言ってしまえばAKB48は芸能ですから、音楽の文脈でAKB48を語ることに違和感というか……やっぱり音楽としてのクオリティが歴然と違うからさ。作り手も、そういう聴き方を想定してないだろうし。だから、自分にとっては批評の対象外なんですよね。ボカロに関しても、現象としての面白さっていう、ジャーナリスティックな関心はありつつも、一音楽愛好家として愛聴しているものはない。それは乱暴に言ってしまえば、音楽の歴史性に関わってくるんですけど。ボカロといわれるもの……もちろん中には例外的なものもありますが、その大部分のものに関して感じる”根っこのなさ”がどうしてもネックになってしまう。

さやわか:根っこのなさとは?

宇野:小説で例えると、純文学とラノベがあったとして、別に純文学の方が偉いわけじゃないけど、ボカロはラノベなんじゃないかとか。映画で例えると、映画史への参照点がない作品は、基本的に映画として成り立たないんですよね。松本人志の映画がいい例だけど。それと同じようなものを、大部分のボカロに感じずにはいられない。柴君は最近ボカロの本を準備していて、来年出版するんだよね?

柴:来年2月予定です。で、これはまさに20世紀のポピュラー音楽の歴史と初音ミクなどのボーカロイドの歴史を繋げようと思って書いた内容です。なぜこれを書こうと思ったかと言うと、宇野さんが指摘されている“根っこのなさ”って、僕は作り手ではなく批評する側の責任だと思っていて。端的に言うと、音楽ジャーナリズムがそれを無視してきたということの失敗だと思っているんです。初音ミクに歴史性がなかったのは、音楽批評側の人間がそれを繋げる作業をちゃんとやらなかったからなのではないかという。

さやわか:柴さんは、批評をする立場から、ミクと歴史を繋げなければいけないと考えている?

柴:『やらなきゃ』っていう謎の使命感に駆り立てられているんですよね。

さやわか:僕の場合も、なにか違う領域同士を繋げなきゃっていう意識はあります。それは多分、柴さんがおっしゃった『謎の使命感』と同じだと思うんだけど。たとえば僕はアイドルの仕事をよくやっているんだけど、ファン目線みたいな立場から仕事をしているわけではないんです。だけど、音楽について語る言葉に更新をかけるとしたら、ここ(アイドルシーン)をやらなくちゃだめだなって思っている。

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