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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.254

アイドル映画の常識決壊! BiS主演『アイドル・イズ・デッド ノンちゃんのプロパガンダ大戦争』

idleisdead02.jpg獄中にいたルイ(プー・ルイ)は危険な洗脳実験の被験者になることを志願。すべてはシャバに出て、アイドルになるため。

 だが、BiS不在の間に3人組アイドル“エレクトニック・キス”が圧倒的な人気を博するようになる。エレキスは放射能漏れ事故で問題視されているハピネス電力が原発のイメージアップのためにプロデュースしているアイドルユニットだ。巧みなプロパガンダ展開によって、今やエレキスは国民的アイドルに。さらにノンちゃんが驚愕する事態を迎える。エレキスに新メンバーとして加入したのは、何と獄中にいるはずのルイ! 無期懲役が確実だったルイは洗脳実験の被験者となることで釈放されたものの、洗脳されてBiSとしての記憶を失っていた。しかも、エレキスはアイドルとは異なる、恐ろしい裏の顔を持っていた。ハピネス電力の陰謀に気づいたノンちゃんは、獄中から脱走したユフ、そして新メンバー候補のミッチェル(ミチバヤシリオ)と共にエレキスが出演するアイドルフェスへ殴り込みを決行する。

 売れるために原発推進のプロパガンダにあえて利用されるエレキス、殺人&脱獄してまでステージに上がるBiS。どちらが正しいとか悪いといった勧善懲悪のストーリーではなく、どっちがアイドルとしててっぺんに立てるかという女同士の情念剥き出しの対バン勝負が見どころ。早見あかり在籍時のももクロが出演した『NINIFUNI』(12)や宮藤官九郎脚本&仲里依紗出演の『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』(10)も異色のアイドル映画だったが、原発問題を扱った映画に現役アイドルグループが嬉々として主演を張っていることには驚きを覚える。アイドルは政治問題には関わらないものというこちらの思い込みまで、BiSは木っ端みじんに砕いしてしまう。BiS、こいつらかなりヤバいよ!

 BiSよりルックス、歌唱力、ダンスパフォーマンスで上回るアイドルたちは数多くいるだろうし、演技力が突出しているわけでもない。しかし、アイドルの魅力は未完成さにあり、その未完成さを補完しようとファンは過剰に感情移入してしまう。それこそがアイドル映画の醍醐味なのだ。まず『──ノンちゃんのプロパガンダ大戦争』のオープニングでヤンキー女子高生たちを相手にしたルイの男気溢れる暴れっぷりに観客は魅了され、さらにはアイドルらしからぬノンちゃんがアイドルであることにこだわり続けることで次第にアイドル然として映ってくるからアラ不思議。ファンならずともBiSがどんなステージを見せてくれるのか気になって仕方なくなる。

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