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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.274

二階堂ふみは撮影現場で「鬼畜……」と呟いた! 常識に縛られない男女の危険な物語『私の男』

watashinootoko01.jpg二階堂ふみが「私の勝負作」と呼ぶ、映画『私の男』。中学生から25歳までの10年間を演じ切ってみせた。濃厚な濡れ場があることでも話題だ。

 男のロマンというと、すでに死語になって久しい言葉だろう。いい年齢してUMA(未確認生物)を追い掛けてしまうような人たちが夢見る世界のことを指す。大阪芸術大学の卒業制作『鬼畜大宴会』(97)でデビューを飾った熊切和嘉監督も、男のロマンを追い掛けている一人だと思う。「こんな映画を企画すればヒットする」みたいなマーケット戦略は考えず、「まだ誰も見たことのない、とんでもない映画を作りたい」という想いが頭の中を占めている。『鬼畜大宴会』は破壊衝動のみで撮り上げられた怪作だったが、その後は商業映画の世界でマイペースにキャリアを積み重ね、ひとつの街を丸ごと描いた『海炭市叙景』(10)などの佳作をものにしてきた。徐々にだが、頭の中で思い描いているスケール感と映画監督としての技量が噛み合ってきた感がある。桜庭一樹の直木賞受賞作『私の男』は、そんな熊切監督でなければ映画化できなかった作品だと言っていい。予算も製作日数も限られている日本映画の枠組みの中で、メインキャストを本物の流氷の上に立たせて対決シーンを撮ろうなんて考える監督はそうそういない。そしてまた、男のロマンに共感した二階堂ふみという女優の存在がなければ完成しなかった作品でもある。

 『私の男』は“父”と“娘”との禁断の関係が描かれる。1993年に起きた奥尻島地震で家族を失った幼い少女・花が、海上保安庁に勤める遠縁の男・淳悟に養女として引き取られ、美しく成長していく物語だ。花役の二階堂ふみは丸々としたほっぺの中学生時代から、メガネ女子高生を経て、OL、そして結婚式前夜の25歳までの10年間を見事に演じ分けている。淳悟役の浅野忠信との濃厚な濡れ場にも挑んだ。フルヌードにこそなっていないものの、下着姿で絡み合い、ディープキスを交わし、お互いの指をベロベロとしゃぶり合う。初めての濡れ場ながらフルスイングだ。役に徹底的にのめり込む二階堂らしい。

 二階堂の妖艶さとその魅力に淫らに墜ちていく浅野のダメ男ぶりに目が奪われる『私の男』だが、叙事詩的な荘厳さがそこには漂う。死者202名、行方不明者28名に及んだ奥尻島地震から、北海道拓殖銀行の破綻、さらには自殺者、大量の処分者が出た北海道警の裏金問題といった北海道の現代史が物語の背景となっている。震災で家族を失った花と、身寄りのない淳悟は、流氷の町・紋別で2人ぼっちの世界を築いていく。町の大地主で、花のことを気に掛ける大塩のおやじ(藤竜也)は「家族を知らん人間が家族を作れるのか」と厳しく淳悟を問い詰める。多分、大塩のおやじの言っていることは正しい。父親を早くに失い、母親から異常なほど厳しく育てられた淳悟は、温かい家庭を知らない。でも、知らないからこそ、欲しくて欲しくて堪らない。花は淳悟の善き理解者として、娘であり、妻であり、恋人であり、愛人であり、そして母親でもあろうとする。埋めがたいコドクを抱える淳悟にとって、花はすべてだった。俺の女だった。


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