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『まんしゅう家の憂鬱』発売記念インタビュー

漫画家・まんしゅうきつこ「やっと“憂鬱な家族”を笑い話に変えることができた」

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■機材代に200万円つぎ込んだ、宅録娘時代

――……話がそれましたが、一度は筆が止まった『まんしゅう家の憂鬱』をまた描こうと思ったのはなぜでしょうか?

まんしゅう 正直、もうやめようと思っていたんですよ。ブログもなかったことにしていただいて、今までの生活に戻ろうと。普通の主婦の生活にね。ただ、私は今までいろいろなことからすぐ逃げてきたので、さすがに35歳も過ぎてここでやめたら「またやめるんかい!」ってツッコむ自分もいたんです。だから、漫画だけはもうちょっと頑張ろうと。

――今まで、どんなものから逃げてきたのですか?

まんしゅう 22歳くらいから宅録をしていたんです。自分でドラム叩いて、ギター弾いて、ピアノ弾いて、作詞作曲して……みたいな。デモテープ作って送って、レコード会社から連絡もらったこともありました。それも、漫画の持ち込みと同じく、ダメ出しをされるわけですよ。そうなると「やっぱりいいや」って心が折れちゃって、そこでやめちゃった。結局、最後まで頑張れなくてやめちゃう。

――レコード会社から連絡来るなんてすごい!

まんしゅう かなり本格的にやってたんですよ。だって、機材代に200万円くらいかけてますから。バニーガールとキャバクラのバイトでためたお金を全部つぎ込んで。親は「あいつ大学留年したのに、何やってんだ!?」って思っていたでしょうね。

――そんな宅録娘が今度は漫画家として、しかも『まんしゅう家の憂鬱』という家族の本を描くとは……。

まんしゅう 本当ですよ。ただ父と母は、まだ読んでいなくて。特に父は、読んだらなんて言うか……。この本に、父が松葉杖ついてるシーンがあるじゃないですか。あれ、事実なんですけど、ブログにアップしたときに父から「ウソ描くな!」って怒られたんです「俺はやられてない。逆に俺がボコボコにしてやったんだ」と。プライドがあるみたいで(註:本書に出てくる、弟の友達とケンカするシーンでのこと)。怖いです。母には「父を本屋に近づけないで」と、お願いしてるんですけど。

――そんな危ない橋を渡ってまで(笑)、家族の話を描くのはなぜですか?

まんしゅう 家族ものを描いてくれっていうオファーが、すごく多いだけ。家族の話にすると、どんなにぶっ飛んだ内容でも、結局、普遍的なところに落ち着くじゃないですか。でも、正直言えば家族のことは描きたくないです。

――それはなぜですか?

まんしゅう 私は今でも父が怖くて、父のイラストを描いているときは動悸がしてきちゃうくらい。昔ね、父がでっかい置時計を持って私を追いかけてきて、母が「逃げてぇぇぇ!!」って絶叫したことがあったんです。私、裸足のまま家から飛び出して、そのまま車の中で夜を明かしたんですよ。だから、父を描いていると、どうしても人殺しの目になっちゃう。

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