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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.373

記憶は思い出となり、やがて物語へ昇華していく。園子温監督が本当に描きたかった『ひそひそ星』

hisohisoboshi0125年に及ぶ構想期間を経て完成した園子温監督の自主制作によるSF映画『ひそひそ星』。主演の神楽坂恵はアンドロイド役だ。

 園子温監督って、人気なんでしょ? トレンドワードをチェックする感覚で『リアル鬼ごっこ』や『映画 みんな!エスパーだよ!』を劇場まで観に行った人はア然ボー然としたことだろう。会員制のバーに間違って入ってしまったような居心地の悪さを覚えたに違いない。綾野剛、山田孝之らが出演した『新宿スワン』は興行的に成功したが、原作つきで脚本も書いてないこともあり、園監督的には自分の作品という意識はないらしい。『ラブ&ピース』も含めて4本もの新作が2015年には劇場公開されたが、初めて園作品に触れる“一見さん”をドーンと突き放すような内容のものが続いた。『愛のむきだし』(09)や『冷たい熱帯魚』(11)でブレイクしてから、不遇時代に溜め込んでいたエネルギーを爆発させるかのように作品を量産し、さらにバンド演奏、小説執筆、芸人宣言と様々な分野での露出が続いた園監督の分裂症的な時期は収束に向かい、新しいステージでの活動が始まる。園監督の新しいスタートを飾るのが、シオンプロダクション第1回作品『ひそひそ星』である。

『ひそひそ星』はとてもシンプルで静謐なモノクロ作品だ。日本映画界で売れっ子となった状況をすでに見切った園監督のセカンドヴァージン、第2の処女作と呼んでいいだろう。宇宙船が広い銀河を旅している。この宇宙船は昭和風のレトロなアパートを模した外見&内装となっている。自主映画を撮っていた若き日の園監督が暮らしていた高円寺の安アパートをイメージしたものか。ロケットには女性型アンドロイド・鈴木洋子(神楽坂恵)が乗っており、遠く離れた星々に散り散りとなって暮らす人類に宅配便を届けるミッションを負っている。アンドロイドゆえに感情もなく記憶も持たない鈴木洋子は、部屋の掃除やお茶を淹れたりと日常生活を過ごしながら、ロケットが目的地に到着するのを静かに待っている。彼女が届けるものは、貴重な天然資源でも最新の医療薬でもなく、人々の何でもない“思い出”である。他人から見ればまるで価値のないガラクタだが、送った人と受け取る人は同じ思い出を共有することで繋がりが生じる。使い古されて陳腐な言葉となったが、人間がかつて“絆”と呼んだものを届けるために、鈴木洋子は宇宙をはるばると旅している。


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