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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.373

記憶は思い出となり、やがて物語へ昇華していく。園子温監督が本当に描きたかった『ひそひそ星』

sonoshiontoiuikimono01ドキュメンタリー映画『園子温という生きもの』より。『ひそひそ星』の撮影や個展の準備に取り組む園監督の多面的な素顔に迫っている。

『ひそひそ星』と同時公開されるドキュメンタリー映画『園子温という生きもの』も興味深い。園監督がリスペクトする大島渚監督の息子・大島新監督が『ひそひそ星』の撮影に取り組む園監督の素顔を追ったものだ。とりわけ『ひそひそ星』に主演し、また本名の園いづみとしてプロデューサーも務めた神楽坂恵へのインタビューが印象に残る。園監督の公私にわたるパートナーである神楽坂は『冷たい熱帯魚』に出演した後、『恋の罪』(11)に主演することになるが、この時期に交際を始めたことを打ち明ける。『冷たい熱帯魚』での園監督の彼女への演技のダメ出しも厳しかったが、『恋の罪』に主演するのも相当な覚悟が必要だった。映画が失敗したら、自分の女優生命だけでなく、交際している園監督の価値さえ暴落させることになる。当時の心情がフラッシュバックした神楽坂はカメラの前で言葉を詰まらせて、カメラフレームから逃れて涙を拭おうとする。鬼才と呼ばれるアウトロー監督との共同生活は想像以上に大変だった。

 園監督は今後の創作ビジョンについて、海外からのオファーは受けるが、国内での仕事はオリジナル作品を中心にやっていくつもりだと語っている。園監督の第2の処女作『ひそひそ星』を皮切りに、シオンプロダクションはこれから一体どんな作品を産み落としていくのだろうか。
(文=長野辰次)

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『ひそひそ星』
監督・脚本・プロデュース/園子温 プロデューサー/鈴木剛、園いづみ 出演/神楽坂恵、遠藤賢司、池田優斗、森康子、福島県浪江町・富岡町・南相馬市の人々 
配給/日活 5月14日(土)より新宿シネマカリテほかロードショー
(c)SION PRODUCTION
http://hisohisoboshi.jp

『園子温という生きもの』
監督/大島新 出演/園子温、染谷将太、二階堂ふみ、田野邊尚人、安岡卓治、エリイ(Chim↑Pom)、神楽坂恵 
配給/日活 5月14日(土)より新宿シネマカリテほかロードショー
(c)2016「園子温という生きもの」製作委員会
http://sonosion-ikimono.jp

※東京都神宮前のワタリウム美術館では現在、園子温監督の美術個展「園子温『ひそひそ星』」を開催中(~7月10日)。デビュー作『自転車吐息』(90)がベルリン映画祭に出品された後、帰国して描き上げた『ひそひそ星』の絵コンテ555枚や劇中に登場する影絵シーンを再現した「今際の際(いまわのきわ)の橋」のほか、園監督が主宰したストリートパフォーマンス集団「東京ガガガ」から生まれた「ハチ公プロジェクト」の新作などが展示されている。

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