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中国“ヤバい”漫画家・孫向文の「チャイナめった斬り」

「敵にトドメを刺さないのはなぜ?」中国人が違和感を覚える、日本アニメのヒーロー像

■『ドラゴンボール』と『西遊記』に見る、日中の思想の違い

 僕は今回の件を機に『桃太郎』や『一寸法師』など日本の昔話をインターネットで調べてみたのですが、物語の主人公たちは悪者である鬼を「殺した」のではなく、「こらしめた」という表現にとどまっていること、鬼たちが改心し、悪事をやめたという脚色が施されている場合もあることを知りました。

 対して中国の昔話『西遊記』では、悪事を行った妖怪たちを必ず孫悟空たちが殺害しようとするのですが、そのたびに三蔵法師が阻止します。三蔵法師の慈悲深い行為は日本人なら共感する方が多いでしょうが、多くの中国人にとっては納得がいかない、後味が悪い場面なのです。さらに、現代の中国作品でも、悪役は抹殺される例がほとんどです。『ドラゴンボール』は『西遊記』をモチーフにした作品ですが、両作品の主人公の行動が、日中の思想の違いを明確に表していると思います。

 敵にトドメを刺さない日本のヒーローたちは、日本人の「優しさ」を象徴しているのかもしれません。憲法の影響もあるとはいえ、近隣諸国からどれだけ挑発行為を受けても決して報復活動を行わない日本側の態度は「むやみに人を殺してはならない」という精神の賜物でしょう。しかし、敵を見逃すことが認められるのは、あくまでも「フィクション」の世界だけです。

 仮に有事が発生した場合、日本側が侵略勢力に対し無抵抗を貫いたら、一方的に国土を侵略されます。また逆に、敗北し、逃走する敵兵に同情し追撃を行わなかったら、彼らは再び武装し日本を攻撃するでしょう。仏教用語に「一殺多生」(一人を殺すことで多数を生かす)という言葉があります。現実世界では防衛行為を実行すれば、相手側には犠牲者が発生します。

 『ドラゴンボール』の作中、「武士の情け」をかけた悟空は、結局フリーザに裏切られました。僕は日本のみなさんには、フィクションと現実の「正義」は違うものであることを認識してほしいと思います。

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●そん・こうぶん
中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)がある。
<https://twitter.com/sun_koubun>
 

最終更新:2016/05/17 14:00
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