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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.384

共産党バッシングが『ローマの休日』を生んだ? プロの技で不寛容な時代と闘った男『トランボ』

trumbo-movie01海外ドラマ『ブレイキング・バッド』の化学教師役でおなじみ、ブライアン・クランストン主演作『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』。

 新人時代のオードリー・ヘップバーンが可憐な王女に扮した『ローマの休日』(53)は不滅のロマンチックコメディとして、今なお多くの人たちに愛され続けている。だが、もうひとつ別の映画を観ることで『ローマの休日』のイメージはがらりと変わってしまう。ハリウッドにおいて黒歴史となっている“赤狩り”の真っ最中に、息苦しいハリウッドから逃れるようにウィリアム・ワイラー監督たちがイタリアロケを敢行して生まれたのが『ローマの休日』だった。世俗の垢と借金にまみれた新聞記者が、アン王女というイノセントな存在に触れることで自分の魂まで売ってしまうことを辛うじて踏み止まるというベタすぎるほどベタな自己再生のドラマだったことに気づく。そして、そのことに気づかせてくれる映画が『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』である。

 ダルトン・トランボはハリウッド黄金時代に活躍した人気脚本家で、『ローマの休日』に続き『黒い牡牛』(56)でもアカデミー賞原案賞に輝いている。他にもローマ帝国時代の剣闘士を主人公にした歴史大作『スパルタカス』(60)、ホロコーストを題材にした実録映画『栄光への脱出』(60)、スティーブ・マックイーン主演の脱獄ものの『パピヨン』(73)など数多くのヒット作、話題作を放っている。多彩なジャンルを手掛けた売れっ子シナリオライターだった。その一方、自身の原作小説をみずから監督した『ジョニーは戦場へ行った』(71)は戦争残酷映画の金字塔になっている。職人的気質と作家性を併せ持った脚本家だったことがフィルモグラフィーからうかがえる。

 戦前のインテリ層の多くがそうだったように、トランボ(ブライアン・クランストン)もまた共産党に名前を連ねていた。社会革命を望んでいたわけではなく、映画業界で働く裏方たちの労働条件の向上を願ってのものだった。ところが、戦後になって米国とソ連の関係が悪化。共産党員はソ連の手先と見なされ、迫害されることになる。これが赤狩りと呼ばれるものだ。ジョン・ウェインや後に政治家に転向するロナルド・レーガンらが赤狩りの急先鋒を務めた。共産党員のみならず共産党員と親しくしているだけで、糾弾され、仕事も失ってしまう。左寄りの映画人たちは仕方なく転向することになるが、この風潮を良しとせず、最後まで抵抗したのがトランボをはじめとする映画人たち“ハリウッド・テン”だった。


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