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日刊サイゾー トップ > その他 > サイゾーpremium  > 二大動画アプリ「AbemaTV」と「LINE LIVE」の制作舞台裏――ネット炎上芸人だけが生き残る!? 番組制作者座談会

二大動画アプリ「AbemaTV」と「LINE LIVE」の制作舞台裏――ネット炎上芸人だけが生き残る!? 番組制作者座談会

――「AbemaTV」も「LINE LIVE」も作っているのは、実はテレビでも活躍しているスタッフたち。いまだ実情がわからない、配信型動画番組の裏側と今後の可能性について、現場の生の声を聞いた。

1610_zadankai1_230.jpg渡辺直美のように、テレビでもネットでも絶大な支持を得ているタレントが、今後のキーマンになってくるかもしれない。

[座談会参加者]
A…テレビ制作会社社員
B…テレビ制作会社社員
C…放送作家

A 今はやりの配信型動画番組だと、「AbemaTV」と「LINELIVE」が話題になってるけど、それがどんなものかまだまだ知らない人も多い。そこで今回、現場で働くスタッフが集まって、裏側からその可能性について見ていくわけだけど……普段テレビを制作している人たちが現場を動かしているというのも、あまり知られていないかもね。

B 動画配信サイトでも「YouTube」とか「ニコニコ動画」は素人の配信が中心だけど、それとは制作の方法が全然違うからね。LINE LIVEは8月から一般開放もして素人制作の動画がアップされ始めているので、そっちに寄っていってる部分もあるけど……。AbemaTVもLINE LIVEも基本的にはタレントを使って、作家が構成を立てて、ちゃんとテレビのような番組として成立してる。テレビ放送とネット配信の中間みたいな位置にあるって思ってもらえばいいかな。

C 特にAbemaTVはサイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資した会社で、制作にもテレ朝から出向してきたプロのスタッフが入っていることもあって、かなりテレビに近いですよね。我々作家もプロデューサーやディレクターから、どんどん企画を求められるし、地上波と関連させた番組ができないかって話もよく出ますし。

A じゃあ中身は、テレビやほかの動画配信サイトとどう違うのかってところだけど、やっぱり一番はリアルタイムの生配信でライブ感を意識した番組を、多く放送してるってことだよね。

B 例えばLINE LIVEが、「東京ガールズコレクション」を生配信して話題になったように、イベントをまるごと放送することも多いけど、投稿された視聴者のコメントを番組内で拾ったり、実際に街に出て素人さんと交流して、何が起こるかわからないハプニング性を楽しんだり、距離感としては“見えるラジオ”って感じかな。

C ただ、逆に言えば結局テレビと見え方が変わらない番組もありますけどね。普通にスタジオでのトークや企画をやったところで、質が悪い『笑っていいとも!』みたいな……。そういう意味でもテレビとの線引きは今のところ曖昧。テレビの劣化版にならないように、ライブ感と同時に、もっとリアルタイムでのSNSとの連動や、スマホで見ることに特化したやり方を考えていかないといけないですね。

B スマホで見るのは10代から20代前半が多いから、ターゲットはやっぱり若者。結局テレビ視聴の中心層である年配世代はわかりやすい番組を求めるから、テロップも出ないような番組は見ないし、ながら見が多いから、生配信のような、展開がコロコロ変わる番組だとついていけない。

A 『24時間テレビ』だって、ワイドショーだって、テレビだと生放送を謳っているけど、ほとんどはVTR中心の番組構成だしね。でも若者は生で見てドキドキしたり、今現在起こってることでワクワクできたら、ちゃんと見てくれる。

C 例えばLINE LIVEで、リアルタイムで街中を逃げ回るキングコングの西野(亮廣)を捕まえたら賞金20万円という企画をやってましたけど、ツイッターなんかでけっこう話題になりましたよね。そういう新鮮さは作ってて楽しい部分ですよね。

B ある程度、番組のオチは制作側で用意していても、テレビほどカッチリは作っていない。視聴者だけじゃなくて、タレントも裏方もドキドキできるかがポイントかな。

A AbemaTVは、親会社・サイバーエージェントの藤田晋社長の意向が強いよね。

 気に入った企画にはお金もどかんと出すし。一番負けた人がその場で髪を坊主にされてしまう「坊主麻雀」は、2回とも賞金500万円出てるからね。

C 昔はテレビでも賞金企画はたくさんありましたけど、今や100万円の賞金さえもなかなか出せないからすごいですよね~。まあ、第1回は藤田社長本人が優勝しちゃったんですけど(苦笑)。ただ、演者が賞金をもらうのは、今の時代、ネットではそんなにウケないから、どうせなら視聴者に還元したほうがいいとは思いますけどね。

B でも高額賞金はもちろんネットでニュースになったし、負けたワッキーとホリエモンが坊主になったのも話題になった。坊主って放送後も彼らがその姿で出歩くので、いい番組の宣伝になってくれるしね。ほかの番組で急に坊主になってるのを知ったら、みんな理由が気になるでしょう。

A 麻雀で負けたら坊主、勝ったら大金獲得って企画も、シンプルで見やすいしね。サイバーエージェントは、そういう話題作りがうまいよね。

B 番組の内容をニュースにするネットの媒体「Abema TIMES」も、自社で運営しているね。番組のトピックを切り出して見出しにするのが、うまい。そのやり方を見るとやっぱりネット的だよね。

ネット配信で生きる芸能人

A 出演するタレントもちょっとテレビとは違うよね。西野はネットでも固定ファンを持っているし、藤田ニコルみたいにSNSで支持されているような人はやっぱり起用されやすい。

C ネットにかぎらず生放送だと、彼らみたいに番組を仕切れる人がいないと、ダラダラな番組になっちゃいますからね。そこもテレビとネットの中間ってところで、コアにも刺さるし、ただ、あくまでも番組だからある程度多くの人にも受けないといけない。

B YouTuberは若い人からネットで人気があるけど、どれも「やってみた系」の番組ばかり。ちゃんとしたバラエティ番組となったら、まったく現場をさばけないですからね。はじめしゃちょーが生配信番組のMCをやるなんてまったく想像できない(笑)。

A 生配信番組を仕切れる人って、もしかしたらテレビよりもハードルが高いかもしれない。視聴者との距離感が近いので、それをうまくコントロールできる人じゃないと番組が成立しない。コメントやらツイッターでバンバン実況されますし、ヘタすると煽られたりディスられたりする。田村淳とか渡辺直美は、ネットでも支持されていて、ユーザーからのディスりなんかにもうまく対応できるから重宝されている印象だね。

B でもネットの生配信番組だと、放送禁止用語や解禁前情報をポロリしちゃったりといった、コンプライアンス的な面で芸能事務所も出演を渋るから、キャスティングが難しいことも多いけどね。生配信なので、発言が切り取られてネットでニュースになっちゃうこともあるだろうし。

C 確かに生配信番組が話題になるにつれて、変な視聴者も出てくるでしょうし、生配信でロケだと撮影現場に現れて絡んできたりするので、演者に課されるリスクはより高くなりますよね。

B その点、例えば田村淳は、LINE LIVEの生配信中に酔っ払いとケンカしたけど、上手にいなしてたな。スタッフもギリギリまで止めなかったし、視聴者はヒヤヒヤさせられるものを見られた。

A これまでのネット番組と違って、タレントに求められるのは、マス向けな実力と、それに加えてネットユーザーへの対応能力。そこが難しいところ。「ニコ生」ならば、マニアックな層に語りかけるようなものが多かったから、必然的に客層も決まってきていた。

B そう考えると、ラジオで番組を持っている人なんかは、生放送にも慣れてるし、トークもできるからいいんだけど。

A さだまさしなんて意外と面白いかもしれない。生のしゃべりは本当に面白いですからね。

C 逆に言えば、若手タレントにとってはチャンスになるから、ありがたい場所ではありますよ。テレビは大御所たちが引退しないので、若手の出られる番組がないからね。ここで力をつけておけば、テレビがさらに衰退して行った時にスターになってるかもしれないですし。放送作家も、若手が参加してることが多いですしね。

A 今のところ視聴者数ではテレビとは比べものにならないけど、どういう形であれ今後は間違いなくネット番組が成長していくからね。現時点でAbemaTVのアプリが700万ダウンロードだから、アプリとしても優秀な数字だよ。LINE LIVEは数字を公開してないようだけど。

B そういう意味では将来テレビ局としては、テレビ朝日だけが生き残るかもしれない。ただ、日本テレビは「Hulu」と連携して、ビジネスを模索しているし、TBSとフジテレビがLINE LIVEと手を組もうとしてるって噂も、つとに聞かれる。各局ネット配信に食い込もうと動いているよ。

C ただ、LINE LIVEは、一般開放も始めたから、そっちに特化していくようならテレビ局が組む相手としては、AbemaTVのほうが将来性はありそうですよね。

A あと実は、ライブ中継が簡単にできちゃうのも魅力だよ。Wi-Fiを使えば、スマートフォンひとつでキレイな映像を飛ばせちゃうからね。両サイトとも、複数のWi-Fiをカバンに入れて、一番通信がしやすいラインをその都度、自動的に選んで放送を飛ばしているから、配信映像が滞ることがほとんど無いらしい。あれは大人数の技術スタッフとカメラを使用しているテレビ側から見ると、すごいシステムだと思ったね。視聴者の側にもWi-Fi環境がもっと広く開放されていけば、例えば2020年の東京五輪などスポーツ中継などでも活躍しそうだ。

B オリンピックの場合は権利の問題があるけど、確かに生配信番組はスポーツやニュース番組での可能性を、秘めてるよね。五輪ならば、今回のカヌーみたいなニッチだけど、メダルを狙えるような競技なんかが狙い目だったり。ただ視聴者的には、データ通信量が大きいのが課題だよ。

C Wi-Fiを使わずに見ていたら、あっという間に通信量制限がかかっちゃいますからね。自分のルーターを使っていたら、Wi-Fiでも使用制限は出てきますし。技術的なユーザビリティも高めていってほしいですね。

無料放送では結局かせげない

1610_zadankai4_230.jpgDeNAが運営する「showroom」。ライブ動画配信サービスとしてLINE LIVE、AbemaTVと同じく注目を集めたが、現在は少し遅れを取っている雰囲気。

A あとはビジネス的にどう広がっていくかだね。現状だと、制作費は1時間番組で大体70~150万円くらい。テレビとは一桁金額が違う。でもタレントのギャラはテレビと比較しても3割減くらいだね。その分、僕ら制作者の予算が削られてるけど(笑)。

C 一方で、ネット番組は企画が通りやすいからいいですけどね。テレビはチャンネルも限られてるし、マス向けに作らないといけないから、かなりハードルが高い。

B ネット配信はいくらでもチャンネルが増やせることもあって、LINEやサイバーエージェントの担当者に面白いと思ってもらえさえすれば、どんどん企画は通るね。制作費が少なくても、それこそライブ感に特化した企画は派手なセットなんていらないし。

A AbemaTVは自分たちでスタジオやカメラマンを押さえているから、技術代も節約できる。

C ただチャンネルが増えすぎると、分散されて、どの番組を見たらいいかがわからなくなるっていうのもありますよね。

B 確かに30チャンネルもあるとね~。テレビみたいなわかりやすい番組表もないからね。視聴者が番組にたどり着きやすくするというのも、今後の課題じゃないかな。

A あとは、無料放送っていうのも両サービスの特徴。「NOTTV」とか「BeeTV」(現在はdTV)は月額制だったし、今だとテレビ番組と連動した番組を配信する「Hulu」だったり、オリジナルドラマを配信する「Netflix」、「Amazonプライム」もそう。AbemaTVとLINE LIVEは無料な分、手軽に視聴できるけど、今後、儲けるにはどうするかだね。

B 結局、さほどうまくはマネタイズできていないのが現状みたい。LINE LIVEは視聴者が「ギフトアイテム」っていうのを買って、配信者を応援できるようになったけど、大規模な収益にはつながってないらしいよ。

C そもそも番組自体は無料で見られちゃうから、視聴者側にお金を払うメリットがもう少しないと難しいでしょうね。

B AbemaTVも月額960円でアーカイブ映像が見られるけど、稼ぎにはなってないからね。生配信番組は基本、ライブで見ないと価値が薄いから。どちらも結局はCMを増やしていくことになるのかな。番組視聴中に枠外にバナー広告が現れるようなものが出てくるかもね。

A 実際AbemaTVは、一社提供のスポンサー番組も出てきてるよね。ネットの場合、電通や博報堂などの広告代理店を通さないでいいっていうのは、我々の業界も徐々にわかってきてるから実入りも大きくなってくる。サイバーエージェントなんかはネット広告の営業もうまいし、企業がネット番組に流れてくる可能性もある。

C お金がうまく回るようになって、タレントも裏方も、もっとネットに対応して面白い企画が増えていけば、今後さらに広がりを見せていくでしょうね。

(取材・文/黒崎さとし)

最終更新:2016/09/25 20:00
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